TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 第75回MACY'Sサンクスギビング・パレード

 米国では11月第4木曜日はサンクスギビング。毎年この日に行われるメイシーズ主催のパレードは、NYのみならず全国的に有名です。特に今年はWTCテロ事件で大打撃を受けたNY市にとって、このビッグイベントが不催行とならなかったのは、大変大きな意味がありました。セレブもいっぱい登場する華やかなパレード、今年一番の人気者は誰かな?
 サンクスギビングとは、アメリカ大陸に上陸した清教徒がネイティブアメリカンの助けで厳しい時季を乗り越え、その年の秋に初めての収穫を得て感謝の宴を行ったことがはじまりだという。多民族多宗教で構成されるアメリカでは、サンクスギビングは宗教人種を問わずほとんどの人々が休日をとる数少ないナショナルホリデー。日本の盆暮れのように、帰省して家族と食卓を囲んでターキーの丸焼きを食べるのが定番だ。
 今年で75周年を迎えたメイシーズ・サンクスギビングパレード。昨年の0℃という寒さに較べると暖かい気温の中で朝9時、77丁目のセントラルパーク・ウェストからスタートしたパレードは、コロンバス・サークルを通ってブロードウェイに入り、34丁目メイシーズの前ヘラルド広場へ向かう。2.5マイルにわたる沿道は、毎年250万以上の人々で賑わい4000人以上のボランティアが参加。ホリデーシーズンの幕を開ける一大行事となっている。
 1924年、初のパレードが行われたのはローリング20'Sの真っ只中。ハーレム・ルネッサンスの全盛時代でジャズやチャールストンでパレードは盛り上がり、セントラル・パーク動物園からはホンモノの動物たちがパレードに駆り出されたというから、さぞや楽しかったに違いない。ちなみに当初はサンクスギビングではなくクリスマス・パレードだった。
 現在はホンモノの動物はパレードに参加しない代わりに、人気キャラクターのバルーンが参加する。今年は初登場のピカチュウ、ひとまねこざるキュリアス・ジョージを加えてラグラッツ・ファミリー、スヌーピー、ビッグバード、バーニー、ジミー・ニュートロン他全15個のバルーンが登場。

 1927年にお目見えした初のバルーンはフェリックス・ザ・キャット。世界のアイドル、ミッキーマウスは1934年にサンクスギビングパレードに初参加となった。
 パレードを盛り上げるのはバルーンの他、米国各地から大集合するマーチングバンドとセレブリティ。毎年ショービズ界からセレブたちがフロートになった舞台で、TVやアニメのキャラクターにまじってパフォーマンスを行う。

 久しぶりに観るボーイズIIメン、オフブロードウェイがヒット中のティム・カリーやジョーイ・マッキンタイア、若手ではLMNT、O-タウン、15歳ですでに貫録たっぷりのシャーロット・チャーチ、その他ケニーG、アシャー、トニー・ベネットetcが今年の顔ぶれとなった。
 毎年パレードを締めくくるのは豪華なフロートに乗ったサンタクロース。子供達の永遠の人気者だったサンタも、今年はピカチュウ・バルーンの登場でその地位を失ったようだ。でも今回のパレードでピカチュウよりも盛大な歓声を受けたのは、実はジュリアーニ市長だ。

 この日も毎年同様朝からAIDS患者のためのスープキッチンでボランティア、夜は休日返上で作業をするグランドゼロのスタッフの慰労に現場を訪れたジュリアーニ市長。その合い間をぬってパレードに参加し、相変わらずの笑顔を振りまいた。
 9月11日以来、アイドル度120%の市長は今年で任期を終えるが、その後の身の振り方として芸能界デビューが頭をよぎることもあったりして。
 家族とともにあることを感謝するという意味も持つサンクスギビング。今年は食卓に揃わなかった顔も多い。残された人々は深い悲しみの中でもこの日感謝を祈り、パレードが無事に終わったことに満足したことだろう。


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