TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 9月11日から半年、テロ事件がテーマのビッグスター共演舞台が終了

 WTCテロ事件から半年後の3月11日、バッテリー・パークに遺族が集まり追悼式が行われた。その夜グラウンド・ゼロ(事件跡)から空に2本の光が照らし出され、イルミネーションでツインタワーを再現。目まぐるしく変化する世界情勢だが、NYの人々にとっては半年たった今もあの事件を忘れることは出来ない。そんな中、シガニー・ウィーバー、ビル・マーレイ、スーザン・サランドンら出演のテロ事件についての劇「The Guys」が終演した。
 オフ・オフ・ブロードウェイのひっそりとした劇場でビッグスターたちによって上演されていた「The Guys」。この脚本はWTCテロ事件で仲間を失った消防士の話に基づき、ジャーナリストのアン・ネルソンによって書かれた。ジャーナリストとしてはベテランのネルソンだが、脚本を手がけるのは今回が初めて。ネルソンがジャーナリズム専攻の学生のために行ったワークショップが「The Guys」を書くきっかけとなった。

 このワークショップは、事件に遭遇した心にトラウマを持つ人々に不快感を与えず如何にインタビューするかというもの。ネルソンは、どうしようもない不安を抱えた多くのニューヨーカーたちが、何らかの手助けを必要としていることを切実に感じたという。ライターとして人々の力になれるのはどうすればいいいのかと模索する中、彼女はひとりの消防士ニックと出会う。テロ事件で同僚たちを失った彼は、仲間を称えるスピーチをメモリアルデーに用意するためにライターの助けを必要としていた。その役を買って出たネルソンは、ニックとの共同作業の中でジャーナリズムとは違う表現の可能性を感じ取る。
「The Guys」上演ポスター
 このワークショップは、事件に遭遇した心にトラウマを持つ人々に不快感を与えず如何にインタビューするかというもの。ネルソンは、どうしようもない不安を抱えた多くのニューヨーカーたちが、何らかの手助けを必要としていることを切実に感じたという。ライターとして人々の力になれるのはどうすればいいいのかと模索する中、彼女はひとりの消防士ニックと出会う。テロ事件で同僚たちを失った彼は、仲間を称えるスピーチをメモリアルデーに用意するためにライターの助けを必要としていた。その役を買って出たネルソンは、ニックとの共同作業の中でジャーナリズムとは違う表現の可能性を感じ取る。

 同時期ネルソンは、シガニー・ウィーバーの夫で演出家のジム・シンプソンと出会い、彼がテロ事件を題材にした脚本を探していると聞く。彼女は消防士との経験を元に1週間で脚本を完成させ、それを読んだシンプソンとウィーバーは直ちに上演を決定。ウィーバーは『ゴーストバスターズ』('84)で共演して以来の友人ビル・マーレイに脚本を送り、出演の快諾を得て、昨年秋「The Guys」上演の運びとなった。
 上演が行われていたのはグランド・ゼロから7ブロック離れたフレア劇場。事件当時はもちろん上演中の芝居はキャンセル。その後も客足は遠のいていたが、「The Guys」によって劇場は生き延びることが出来た。昨年末には被害を受けた学校の生徒や消防士と遺族らを招待している。
 今年になってビル・マーレイ、シガニー・ウィーバーに替わり、ビル・アーウィンとスーザン・サランドンが舞台に登場。僅か95席の小さな劇場で上演された、たった90分の小作品にビッグスターが出演したのは無論ビジネスのためではない。すでに何度も語り尽くされた9月11日を彼ら自身の方法で表現し、少しでも人々の助けとなることを願ってのことだろう。

 事件から半年と数日後の3月14日、「The Guys」は盛況のうちに幕を閉じた。遺族を失った悲しみや事件の衝撃を少しでも癒したこの作品は、観た人にとって忘れ難いものとなったに違いない。事件は次第に忘れ去られようとしているが、ニューヨーカーの心の傷が本当に癒される日は遠い。
11日のイベントに参加したオペラ歌手J.ノーマン(中央)ジュリアーニ元市長(左)ら。遺族を代表する12歳の少女(右)が点灯。

(C)U.S. FrontLine News


<<戻る


東宝東和株式会社