TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 トライベッカ・フィルム・フェスティバル

 陽射しがすっかり初夏めいてきたニューヨークで、5月8日から12日にかけて第1回トライベッカ・フィルム・フェスティバルが開かれた。これはロバート・デ・ニーロのトライベッカ・プロダクションズ社の主催によるもので、ニューヨークのシネマ・シーンを盛り上げるだけではなく、昨年のテロ事件で多大な被害を受けたダウンタウンに活気を取り戻すことも大きな目的としている。
 グランド・ゼロから目と鼻の先のトライベッカ地区(Triangle Below Canal)に、自身の経営するトライベッカ・プロダクションズ社と自宅を持つデ・ニーロは、テロ事件によって甚大な被害を受けたダウンタウンの再生を願い、構想だけは長年持っていたというフィルム・フェスティバルを今年、遂に実現させた。

 8日のオープニング・イベントには、その日にプレミア上映された『アバウト・ア・ボーイ』(02)主演のヒュー・グラントを始めとする映画スターの他に、ニューヨーク市長、州知事、クリントン前大統領も列席。以後5日間にわたって、いずれも見逃せないイベントが目白押しとなった。

 話題となったのは、5月16日の全国一斉公開に4日先駆けての『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)のプレミア公開。この収益金は、テロ事件の被害者となった子供たちへと寄付される。またシェリル・クロウなどのロック・ミュージシャンと、ロビン・ウィリアムズらアクターによる“MTVロック&コメディ・コンサート”も注目を集めた。
フェスティバルのバナー
 映画祭としての呼び物は、デ・ニーロの旧友でもあるマーティン・スコセッシ監督が選んだ“ベスト・オブ・ニューヨーク”映画10本の上映。ウディ・アレン監督の『マンハッタン』('79)を筆頭に、スタンリー・キューブリック監督の『非情の罠』('55)など、スコセッシ監督ならではのユニークな作品が並んだ。

 “インターナショナル・ショーケース”では、世界各国からの優れた作品23本を上映。さらにケヴィン・スペイシー、バリー・レヴィンソン監督、メリル・ストリープらが審査に加わった“インディペンデント・フィルム・コンペティション”では、1,300本もの応募作の中から選ばれた64本が上映された。
上映会での行列
 そして11日にはファミリー・フェスティバルが開催された。これは地元の子供たちにも楽しいイベントを提供しようという目的で行われたもので、気持ち良く晴れた土曜の午後、ストリートに特設されたステージでのミニ・コンサート、工作教室、フェイス・ペインティングなどに、たくさんの親子連れがやってきた。

 また地元をなんとか再活性化するために、トライベッカにあるレストランを紹介するブースも作られており、デ・ニーロと、プロダクション共同経営者であるジェーン・ローゼンタールの、地元トライベッカへの愛情がひしひしと伝わる催しだった。
本物はどれだ!?スターのロウ人形
 このトライベッカ・フィルム・フェスティバルは、これから毎年開催される予定。今年はテロ事件からの復興促進という側面にスポットが当てられたが、来年以降はニューヨークならではのユニークな映画祭として、サンダンス映画祭やカンヌ映画祭と肩を並べる一大イベントに育っていくと期待されている。


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