TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)
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エスニック・シティNY/プエルトリコ系ニューヨーカー(後編)
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ラティーノが熱いNYから、前回に引き続きプエルトリコ系が活躍する映画について。今回は、ハリウッドに進出するニューヨークのプエルトリコ系アクターにスポットを当ててみよう。
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映画・テレビを問わず、ニューヨークを舞台にした犯罪モノ・刑事モノにひんぱんに登場するのが、ルイス・ガスマンと、『ガールファイト』(00)で父親役を演じたポール・カルデロンのふたりで、共にプエルトリコ生まれのニューヨーク育ち。映画ファンなら「あ、この顔、見たことある」と必ず思うはず。
カルデロンは『クロッカーズ』('95)、『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト 』('92)、『キング・オブ・ニューヨーク』('90)、『シー・オブ・ラブ』('89)など、ガスマンは『ボーン・コレクター』('99)、『カリートの道』('93)、『ハード・ウェイ』('91)、『Q&A』('90)など、大量のニューヨーク・シネマに出演している。いずれもラティーノのステレオタイプと言える犯罪者か刑事の役ばかりだが、スクリーンにニューヨークのリアリティを吹き込む貴重な脇役として、多くの監督から重宝がられているようだ。なお、ガスマンは『ザ・カウント・オブ・モンテ・クリスト(原)』(02)で、ようやく“犯罪モノではない作品”への出演を果たした。 |
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『ウェディング・プランナー』 発売元:日本ヘラルド映画 価格:¥4,700(税抜) |
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プエルトリコ系女優の大物といえば、『ウエスト・サイド物語』('61)でチャキチャキのプエルトリコ娘を演じ、アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得したリタ・モレノ。プエルトリコで生まれ、のちにアメリカに移住。『雨に唄えば』('52)などのミュージカル映画からスタートし、現在も第一線で活躍中。この世代では数少ないラティーノ・アクターだ。 |
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リタ・モレノの次にメジャーになったプエルトリコ系女優は、『ドゥ・ザ・ライト・シング』('83)で映画デビューを果たしたロージー・ペレス。ニューヨーク/ブルックリン生まれのペレスは、実はコレオグラファーであり、また映画プロデュースも手がける才人だ。スペイン語訛りの猛烈に早い英語“スパングリッシュ”をしゃべり、ちょっとアタマの弱いプエルトリコ系キャラクターを演じることが多い。ブリジッド・フォンダとニコラス・ケイジがニューヨークを舞台に繰り広げたロマンティック・コメディ『あなたに降る夢』('94)でも、強烈な個性とトークを披露している。 |
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そして現在、もっとも売れているプエルトリコ系女優と言えば、ニューヨーク/ブロンクス生まれのジェニファー・ロペス。シンガーでもある彼女は、音楽面ではセクシーで挑発的なラティーノとしてのアイデンティティを強く押し出しているが、女優としてラティーノを演じたのは初期の作品のみ。ニューヨークの地下鉄アクション『マネートレイン』('95)ではプエルトリコ系の警官、『セレナ』('97)では非業の死を遂げた実在のメキシコ人シンガーを演じたが、その後は『ザ・セル』(00)、『ウェディング・プランナー』(01)、『エンジェル・アイズ』(01)などに白人キャラクターとして登場し、ハリウッド映画で主役を演じられる数少ないラティーノ女優として頑張っている。
プエルトリコ、ドミニカ共和国、キューバ、メキシコ…ニューヨークにはたくさんのラティーノ・グループが暮らしているが、シネマ・シーンでもっとも活躍しているのは、今のところプエルトリコ系。これからもプエルトリコ系がますます進出し、第二、第三のジェニファー・ロペスが生まれることは確かだ。 |
J・ロペス最新作『enough』 駅貼りポスター |
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それと同時に他のラティーノ・グループからもユニークな個性をもったアクターが出てくるだろう。そしてニューヨーク・シネマに、よりカラフルなリアリティを与えてくれるに違いない。 |
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