TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 セレブから観光客までが訪れるシネマ&ミュージカル・グッズの店

 NYには、一般の映画ファン、観光客、アクター、業界人のすべてを満足させるレアなシネマ&ミュージカル・グッズの店がある。ツーリストとロバート・デ・ニーロが肩を並べてショッピングする店とは?
 近ごろはオシャレなエリアとして知られるチェルシーに、映画マニアや業界人がこぞってやって来る“アブラカダブラ”という店がある。広い店内には、『エルム街の悪夢』シリーズのフレディやETの等身大フィギュア、特殊メイク用品、マスク、衣装、小道具が足の踏み場もないほどに、びっしりと置かれている。

 店内の一角にデスクを置き、奇妙な叫び声を上げるペットの赤いオウムを肩にのせて店番をしているのが、オーナーのポールさん。意外と気さくに、店の歴史を語ってくれた。「20数年前に映画のノベルティ・グッズの露店を始めたんだ。それからクリストファー・ストリートに店を構え、6年前に規模を広げてここに移転した。今、隣のテナントが空いているだろ? また店を広げようかと考えているんだ」。
オーナーのポール
背後に見えるのは数百ものマスク
 これまでにアル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ウディ・ハレルソン、『スター・トレック』シリーズのミスター・スポックことレナード・ニモイ、ロック・シンガーのデビッド・ボウイなど、数えきれないほどのアクターやミュージシャン、ウディ・アレンの映画制作スタッフ、テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』や『デビッド・レターマン・ショー』の制作スタッフなどが来店したという。特に印象に残っているのは、店内に山と積まれているホラー映画グッズを、すべて詳細にチェックしていったマイケル・ジャクソンだとか。
ホラー&SF映画キャラのフィギュアも豊富
 またNYU(ニューヨーク大学)の映画科の学生も課題映画のための小道具を探しに来るが、「彼らは、とにかくマケてくれと頼むんだ」と肩をすくめる。さらにチェルシーという場所柄、一般の映画ファンも気軽に立ち寄っていくとのこと。店内にはプロジェクターとサウンド・システムを備えており、映画の上映会を行ったり、時には店内をクラブに変身させてイベントを開くこともあるそうだ。
 一方、タイムズ・スクエアの劇場街には、ミュージカル・グッズの専門店“シアター・サークル”がある。「オペラ座の怪人」を上演中のマジェスティック・シアターの向かいにあるこの店は、入り口を入ってすぐは、観光客向けのスーベニア・ショップ。「ライオン・キング」「レ・ミゼラブル」「ロッキー・ホラー・ショー」といった人気ミュージカルのロゴ入りTシャツやキーホルダーが売られている。

 ところが、奥には落ち着いた書斎のような造りのブック・セクション“シアター・ライブラリー”があり、ミュージカル関連書籍がズラリと並べられている。
ミュージカルの脚本がぎっしり
 スタッフのひとりであるトムさんは、「大量のミュージカル・シナリオを揃えているので、ショー・ビズ関係者もよく来ますよ。ショーの合間にスターがフラリとやって来ることもあるし。ライザ・ミネリやネイサン・レイン、他にもたくさんのスターを見かけました」と、にこやかに語ってくれた。

 スターや業界人に会えるかもしれないシネマ&ミュージカル・グッズの店。もし出会えなくても、ちょっと勇気を出してスタッフに話しかけてみれば、スターの意外なエピソードを聞けるかもしれない。

Abracadabra Superstore     Theatre Circle
19 W. 21st St.            268 W. 44th St.
(Bet. 5th & 6th Aves.)       (Bet 7th & 8th Aves.)
tel: (212) 627-5194         tel: (800) 223-1320


シアター・サークル
ブロードウェイの中心にある


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