TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 映画に登場した場所を訪ねてPart 11~素晴らしき日

 仕事と子育ての両方をこなしながらキャリアを作り上げていくニューヨーカーたち。彼らが大忙しでマンハッタン中を駆け回る一日を描いたロマンチック・コメディ『素晴らしき日』('96/監督:マイケル・ホフマン)の舞台を、登場人物と一緒に巡ってみよう。マンハッタンを駆け抜けるビジーなニューヨーカー気分になれるかな。
 メラニー(ミシェル・ファイファー)は、離婚後ひとりで6歳の息子サムを育てている多忙な建築家。新聞の人気コラムニストであるジャック(ジョージ・クルーニー)もやはりバツイチで、元妻から娘マギーをあずかっている。

サムとマギーは同級生で、今日は遠足の日。ニューヨークの観光名物サークル・フェリーに乗るのだ。初対面のメラニ-とジャックは子供を連れてフェリー乗り場ピア38(42nd St. & 12th Ave.) までイエローキャブを相乗りするが、車内でいきなりケンカとなってしまい、子供たちはフェリーに乗り遅れてしまう。ところがメラニーには重要な商談、ジャックにも記者生命のかかった取材がある。ベビーシッターを見つけられないふたりは子供を連れて、目の回るような一日に突入していく。
アップル銀行:メラニーとジャックは
黒い鉄門の前で口ケンカを始める
 メラニーが勤める一流建築事務所はロックフェラー・センター内のアトラス・ビル(630 5th Ave.)、ジャックが勤めるデイリー・ニュース社はグランド・セントラル駅付近のリンカーン・ビル(60 E. 42nd St.)にある。
 いったんは子連れで出社したふたりは、偶然にも9丁目にある同じ託児所に子供を預けに行くが、託児所を出たふたりが再びケンカを始めるのは73丁目にあるアップル銀行(73rd St. & Broadway)の前。これは映画ならではの辻褄の合わない部分だがご愛嬌。なお、実在のデイリー・ニュース社は42丁目ではなく33丁目にある。

 その後、ジャックは子供たちを自然史博物館(Cental Park West & 79th St.)に連れていき、メラニーはデザートで有名なレストラン“セレンディピティ”(225 E. 60th St.)でアイスクリームを食べさせる。
セレンディピティ:デザートで有名なレストラン。店名と同じタイトルのラブコメ『セレンディピティ』(01)にも登場
 子守りの合間を縫って、ジャックは市庁舎(1 Center Street)や高級エステサロン、メラニ-はダウンタウンの模型工場や高級レストラン“21クラブ”(21 W. 52nd St.)などを奔走するが、気ままな子供たちの手の焼けることといったらない。そんなドタバタ劇の風景として、ラジオシティ・ホール(1260 6th Ave.)、NBCスタジオ(30 Rockefeller Plz.)、セント・パトリック教会(5th Ave. & 50th St.)、カーネギー・デリ(854 7th Ave.)など、お馴染みの名所が次々に登場する。

 苦労の末にそれぞれの仕事で成功を収めた二人は、サムとマギーのサッカーの試合のために、夕方のセントラルパークへと向かう。朝から雨続きだった空によやく太陽が顔を出し、ベセスダ噴水(セントラルパーク内72nd St.)の水が午後の陽射しにきらめく。ほっと一息ついたふたりの間には、なんだか素敵な恋の気分が漂い始めるのだった…。
ベセスダ噴水:現在NYには節水令が出ており、水は止められている
 この映画の主役は、臨機応変の機転で窮地を次々と切り抜けていくニューヨーカーの男女。大事な商談を前にブラウスを汚してしまったメラニーは、恐竜の絵のついた息子のシャツを着てしまうが、それは不思議とスーツにマッチする。取材相手を捕まえられずに焦るジャックは、それでもクールで女たらしな態度を変えず、結果的には取材に成功する。そんな典型的ニューヨーカーの忙しい恋を盛り上げているのが、バックグラウンドとして次々に登場する実在のランドマーク。映画を観ながら風景もチェックしてみると、マンハッタンを駆け抜けるビジーなニューヨーカー気分に浸れること間違いなし。
噴水前のアーチ:ジャックがメラニーを抱き上げる
ロマンチックなシーンの背景


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