TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 ニューヨークで観るボリウッド映画

 インドは世界に名だたる映画王国。その年間生産量は800本にも上り、実はハリウッドを凌いで世界ナンバーワン。インドのハリウッドことボンベイ(現ムンバイ)製の映画は“ボリウッド・ムービー”と呼ばれ、ニューヨークのインド系コミュニティでも上映されている。
 マンハッタンから地下鉄で15分も行けば、そこはクイーンズのジャクソン・ハイツと呼ばれるエリア。ニューヨーク最大のインド系コミュニティだ。メインストリートにはインド料理のレストランやインド宝飾店が並び、道行く女性のサリーもあでやか。

そんな濃密なインド・フレイバーをさらに盛り上げているのが、ボリウッド映画専門のイーグル・ムービー・シアター。これはインドのデリーにある同名映画館から名前を拝借しているとのこと。

 映画館入り口にはボリウッド映画のカラフルなポスターが貼られている。タイトルもセリフもヒンドゥ語だが、英語字幕付きでの上映。入場料8ドルを払い、スナックバーで売られているサモサ(インドのスナック)を買っていざ館内へ。客層は家族連れ、カップル、若い男性のひとり客といろいろ。本編上映まではインド歌謡のビデオクリップが流される。サリー姿の女性歌手から、MTVに影響を受けた現代風なものまで、これもなかなか楽しめる。
イーグル・ムービー・シアターのスタッフと上映作品のポスター
 今回の上映作は『Awara Paagal Deewana 』(02)という、アクション/スラップスティック/メロドラマ/ミュージカルの全てをミックスした、ボリウッドの王道を行く作品。そもそもはブルース・ウィリス主演の『隣のヒットマン』(00)を、ムンバイ&ニューヨークに舞台を置き換えて作られた作品だが、アクション・シーンは『グリーン・デスティニー』(00)、『マトリックス』(‘99)からの、まるっきりの盗用。

 しかし、それが許されているのがボリウッド映画。さらには和太鼓、闘牛&フラメンコ、果てはリバーダンスまで飛び出す荒唐無稽さながら、休憩時間10分をはさんでの3時間は十分に元が取れる楽しさ。地元ムンバイでは公開初日からほぼ満席状態のヒットとなったとか。
上映作品ポスター
 観客のひとりである青年は「ハリウッド映画も観るけど、やっぱりインド映画のほうが好きだな。コメディの部分が面白いから」と言う。一家で来ていた若い主婦も「子供が観たがったから、最近『スクービー・ドゥー』(02)を観たけれど、私はインド映画が良いわね」とインタビューに応えてくれた。

 ところで、ボリウッド映画に於いてはストーリーや演技もさることながら、実は歌と踊りが重要。役者が華やかに歌い踊るシーンが必ず何ヶ所も挿入されるが、歌は専門の歌手による吹き替えで、この歌手にもそれぞれファンがつくのだと言う。だからイーグル・シアターの近くにあるレコード屋でもサントラCDが大きなスペースを占めているし、カセット屋に至っては街中に無数にある。
イーグル・ムービー・シアター
 また6月29日にはニューヨーク郊外のナッソーコロシアムでボリウッド・アワード2002が開催されるが、本国インドからのスターたちによる歌と踊りの響宴の模様はビデオとDVDになり、インドおよび世界中のインド系コミュニティで発売される。

 大胆で破天候なストーリー、めくるめく歌と踊り、ハンサムだけどちょっとアブラギッシュな男優たちと、絶世の美女揃いの女優たち。絢爛豪華なボリウッド・ムービーを一度はお試しあれ。
Eagle Movie Theatre
73-07 37th Road
Jackson heights, Queens 11372
Tel: (718) 565-8783
Subway 7 @ 74th St. or E,F,G,R,V @ Roosevelt Ave.
※上映は1日2~3回につき、電話での問合せが必要


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