TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 夏休みのシネコンは子供たちがいっぱい

 ニューヨークにもシネコンがたくさんあり、それらは複数スクリーンという利点を活かし、超大型ハリウッド製から外国作品まで、ジャンルもドラマ、コメディ、アクション、ホラーと常にバラエティに富んだ作品を上映している。しかし、そんなシネコンにも“季節”や“立地”によって上映作品に大きな特徴が出てくるケースがある。
 ニューヨークでは6月27日に公立小学校が終業式を迎え、早くも夏休みが始まった。子供たちは郊外でのキャンプや旅行に今からワクワクしているが、2ヶ月以上もある長い夏休み、ニューヨークのような都市部に住む子供にとって身近な娯楽といえば、やはり映画。そこで毎年夏には子供向け作品が増えるが、今年は特にその傾向が顕著なようだ。

 夏休みに入って最初の週末、タイムズスクエアに出掛けてみると子供向け映画が花盛り。ニューヨーク最大の25スクリーンを誇るAMCエンパイア25と、その向かいに建つロウズ・シネプレックス・Eウォークでは、人気アニメを劇場版化した『スクービー・ドゥー』、『Hey Arnold! The Movie』、『パワーパフ ガールズ』、ディズニーの新作『リロ・アンド・スティッチ』を上映中。
タイムズスクエアのAMCエンパイア25
 まだまだ客足の衰えない『スパイダーマン』も引き続きオンスクリーンだし、来週以降にはお子さまアイドル・ラッパー、リル・バウ・ワウが天才バスケ・プレイヤーを演じる『LIKE MIKE』と、本来は大人向けながら子供の観客動員数も十分に見込める『メン・イン・ブラック2』、前作が好評を博した、ネズミが主人公の『スチュアート・リトル2』、もう1本のディズニー作品『カントリー・ベアーズ』も次々に始まる。
 シネコンの上映作品の傾向を決める要素は、このように“夏休み”や“クリスマス”といったシーズンの他に、ニューヨークでは人種もかかわってくる。タイムズスクエアの場合は、ニューヨーカーだけではなく州外や海外からの観光客も含めて、さまざまな人種・エスニックの観客を対象としているために、夏休み期間も子供向け作品を増やしはしても、その他の作品は相変わらずバラエティに富んでいる。

 ところが、例えばマンハッタンのハーレムでは、夏休みに入ったことに加えて黒人地区であることから、上映作品にさらに極端な特徴が見られる。
新聞の映画欄もカラフルに
 ハーレムにあるマジック・ジョンソン・シアターでは現在9スクリーンをフル稼動中だが、上映作品のうち4本が子供向けで、3本が黒人アクター主演作。超人気黒人コメディアンのクリス・ロックが名優アンソニー・ホプキンスと共演しているCIAモノ『9デイズ』、やはり黒人コメディアンのエディ・グリフィンがアフロヘアで大暴れするアクション・コメディ『Undercover Brother』、NBAスターがワケあって女装でバスケをするスポーツ・コメディ『Juwanna Mann』がそうだ。

 一般作と呼べるのは『トータル・フィアーズ』と、アダム・サンドラー主演、ウィノナ・ライダー共演のコメディ『Mr. Deeds』だけ。さらに来週以降もウィル・スミス主演『メン・イン・ブラック2』、子供アイドル・ラッパー主演『LIKE MIKE』、エディ・マーフィ主演『プルート・ナッシュ(原)』と、黒人アクター主演作が続々と封切られる。
駅張りポスター『Hey-Arnold』
 シネコンの上映ラインナップひとつにもユニークな特徴を見る事ができるビッグシティ、それがニューヨーク。


<<戻る


東宝東和株式会社