TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 夏のNYお薦めインディーズ映画

 ニューヨークは夏の映画シーズンを迎えてハリウッド製の大作がめじろ押し。その一方で夕刻を長く楽しめる今、仕事帰りにこじんまりとしたアート館で、質の良いインディーズ映画やリバイバル作品をじっくりと観るニューヨーカーも多い。そこで今年のサマーシーズンを彩るユニークな作品群をご紹介。

 ブロードウェイの雑踏から通り1本だけ入ったマーサー・ストリートとハウストン・ストリートの角にあるのが、ニューヨークのアート館の中では最も人気のあるアンジェリカ・フィルム・センター&カフェ。インディーズ映画の中でも比較的娯楽性の高いものやポップなものを選んで上映している同館、最近ではフランス映画の『アメリ』(01)をヒットさせた。
 現在の上映ラインナップは、サンダンス・フィルム・フェスティバルで注目されたクリスティーナ・リッチ出演の『Pumpkin』(02)。何事においても100%完璧な女子大生が車イスの少年と出合い、“いつも完璧であることは完璧じゃない”と悟るというストーリ。また、中年の白人女性と、既に成人している娘ふたり、そして養子に迎えた黒人少女のそれぞれが問題を抱えながらも人生と折り合いをつけていく様子をほろ苦く綴ったコメディ『Lovely & Amazing』(01)。こちらはトライベッカ・フィルム・フェスティバルで人気を博した作品だ。
アンジェリカで上映作品のポスター
 また、15人もの少年を次々に殺し、自身も獄中で他の囚人に殺害された実在の連続殺人犯ジェフリー・ダマールを描いた『Dahmer』(02/デヴィッド・ジェイコブソン監督)、オスカー・ワイルドの古典喜劇をルパート・エヴェレット、リース・ウィザースプーン、ジュディ・デンチなどの豪華キャストで映画化した『The Importance of Being Earnest』(02/英国/オリヴァー・パーカー監督)などの話題作を上映中。
 ハウストン・ストリートをアンジェリカから西に向かって歩くと、落ち着いた佇まいの古いアパートメントが並び、SOHOの住人が訪れる小さなカフェやクラブ、ちょっと洒落た店なども多い。そんなハウストン・ストリート&6thアベニューにあるのがフィルム・フォーラム。同じインディーズ映画でもアンジェリカよりも硬派な作品を得意としている。

 現在、戦争写真家ジェームズ・ナクトウィの戦地での撮影の様子を追ったドキュメンタリー作品『War Photographer』(01/スイス)、北欧製ならではのシュールなブラック・コメディ『Songs From The Second Floor』(00/スウェーデン)を上映中。
フィルム・フォーラム
 リバイバル作品として巨匠ルキノ・ビスコンティ監督の『若者のすべて』('60/イタリア)などを上映中。7月後半からは三船敏郎&黒沢明特集や、フリッツ・ラング監督の映画史上に残る名作『メトロポリス』('27/ドイツ)も始まる。

 これらは今年の夏に上映されるインディーズ/外国/リバイバル映画のほんの一部で、実はまだまだ興味深い作品が控えている。ひとくちにインディーズ映画と言ってもハリウッド・ムービー以上にバラエティに富んでいて、マメに情報誌をチェックすれば、自分好みのあらゆる作品を観られるのがニューヨーク。ハウストン・ストリートを往復してインディーズ映画のハシゴというのもニューヨークならではの贅沢か。
フィルム・フォーラムの上映作品ポスター


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