TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 カルト・ビデオならキムズにお任せ!
 ビレッジにあるキムズ・ビデオはニューヨークのカルト・ムービー・ファン御用達のビデオ・ストア。レンタル、セル共に他の店では手に入らない貴重なものが店内にぎっしりで、スタッフもお客もサブカルチャー通ばかり。今回はそんなキムズをのぞいてみよう。

 いまでもトサカ頭のパンク・ロック・ファンや、異常にイレズミ度やボディ・ピアス度の高い若者たちが闊歩するイースト・ビレッジのアスター・プレイスにキムズ本店はある。店の外観はポップで、入り口付近はいつも若い映画マニアの立ち話で賑わっている。

 入り口脇に並べられたフリーペパーやイベント・フライヤーを見繕ってから、まずは1階へ。ここはミュージック・セクションとなっている。外観から想像するより奥行きのある広い店内だが、タワーレコードやHMVとは違って雑然とした雰囲気。アナログ盤の品揃えが豊富な点も、いかにもビレッジらしい。
サブカル好きな若者の溜まり場ともなっているキムズ・ビデオ
 脇にある狭くてちょっと埃っぽい階段を使って2階へ上がると、そこはセル・ビデオ・セクションで、3階がレンタル・ビデオ・セクション。とはいっても、最近ではDVDの割合がかなり増えてきている。どちらのフロアもビデオ/DVDは、当然ジャンル別に並べられているのだが、そのカテゴリーが他のビデオ屋とは少々違う。外国映画はイタリア、フランス、スペイン、韓国、日本、中国&台湾…などと国別に細かく分かれており、それぞれが棚1台ずつを占拠する豊富さ。

 カルト、ホラー、SFの充実度も高く、アニメは日本製の「ジャパニメーション」と「ジャパニメーション以外」で分けられている。これはイースト・ビレッジに集まるサブカルチャー好きの若者たちの間での、日本製アニメの人気の高さを物語っている。
1階のミュージック・セクション。アナログ盤が豊富
 さらに注意深くチェックしてみると、キムズ以外では手に入らないであろう掘り出し物に必ず出会える。例えば、1950年代初期に人気があったテレビのシットコム『エイモス&アンディ』の海賊版DVD。この作品、実は内容が黒人差別的だという理由で現在は廃盤になっているのだ。
 他にも浅野忠信主演『殺し屋-1』(01)の中国語版なども置いてある。ジャケットに写っている金髪で傷だらけの浅野と、中国語で書かれたタイトルやクレジットが奇妙なマッチを見せていた。そうかと思えば、その横に一般のテレビ・アニメを並べた「子供向け」コーナーもちゃんとあったりする不思議さ。

 カルトDVDのコーナーをチェックしていたお客のひとりは、「ここはブロックバスターにはないものがあるからね」とコメント。ニューヨークのレンタル・ビデオ&DVD業界は大手チェーンであるブロックバスターの独占状態なのだが、やはりハリウッド製ヒット作が中心で、コアな映画ファンやマニアには物足りないのだ。

 またスタッフが映画に詳しいこともキムズの大きな魅力。ブロックバスターのようなチェーン店では店員に質問をしても、コンピュータ検索でデータが出てこなければ「分からない」または「その作品は置いてない」で済ませられることもしばしば。けれどキムズでスタッフに質問をすれば、必ずなにか面白い作品を手にして帰ることができる。
カルト・コーナーを物色中、
オタクなキムズ・ファン
 キムズはさらに音楽・映画関連の書籍やオリジナルTシャツも売っており、ちょっとヒマのある時にフラリと寄ってみるだけでも楽しめる。支店は、やはりサブカルチャーな雰囲気を持つダウンタウンのブリーカー・ストリートに2軒、ロウアー・イーストサイドに1軒あり、また、コロンビア大学の近くにも1軒ある。それぞれの店舗が微妙に違った個性を持っているので、キムズ・ファンは自分の趣味にあったブランチを探して贔屓にしているようだ。

Mondo Kim's(本店)
6 Saint Mark's Place
212-505-0311

Kim's Underground
144 Bleecker St. (on Laguardia Pl.)
212-260-1010


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