TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 MTVビデオ・ミュージック・アワード

 今年のMTVビデオ・ミュージック・アワードは、ニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで開催された。最多の6部門にノミネートされたエミネム『ウィザウト・ユー』に注目が集まったが、このミュージックビデオを手掛けたジョセフ・カーン監督にも要注目だ。
 冒頭、降りしきる雨をものともせずに、アメリカ自然史博物館の特設ステージでブルース・スプリングスティーンが『ザ・ライジング』を歌った。それを紹介したのは『ザ・ソプラノズ』のジェームズ・ガンドルフィーニ。スプリングスティーンもガンドルフィーニも共にニュージャージー州出身で、なおかつスプリングスティーンのギタリストのスティーヴン・ヴァン・ザントが俳優として『ザ・ソプラノズ』に出演しているよしみからだ。

 その後、テレビ中継はメイン会場のラジオシティ・ミュージックホールへとスイッチ。今年のホストは、長寿コメディ・ショー『サタデーナイト・ライブ』の若手コメディアン、ジミー・ファロン。まさにMTV世代であるファロンは、エミネム、ネリーなどの物まねを熱演したり、突然ステージに登場したソウルのゴッドファーザーことジェームズ・ブラウンと共演して会場を沸かせた。他にもマイケル・ジャクソン、再結成された伝説のハードロックバンド、ガンズ&ローゼズなどが登場し、今年のMTVミュージック・アワードは驚きの連続だった。
数種類作られたポスターのうちの一種
 賞レースの行方はというと、6部門にノミネートされたエミネムの『ウィザウト・ミー』が何部門を受賞するかに注目されていたが、結果は年間ベスト・ビデオ賞、ベスト男性ビデオ賞、ベスト・ラップ・ビデオ賞、ベスト監督賞(ミュージシャンではなく監督が受賞)の4部門制覇。
 エミネムの『ウィザウト・ミー』は、アメリカン・コミックブックを巧みにミュージックビデオに取り込んだ斬新でユーモラスな映像で大ヒットしたが、このビデオを手掛けて今回ベスト監督賞を受賞したのがジョセフ・カーン監督。

 これまでに既に200本以上ものミュージックビデオを製作しており、ざっと挙げてみるだけで、デスティニーズ・チャイルド『セイ・マイ・ネーム』、バックストリート・ボーイズ『ラージャー・ザン・ライフ』、エアロスミス『フライ・アウェイ・フロム・ヒア』、エンリケ・イグレシアス『ヒーロー』、ブリトニー・スピアーズ『ストレンジャー』、モービー『ウィー・アー・オール・メイド・オヴ・スターズ』、U2『エレヴェイション・リミックス』と、そのバラエティと質の高さに驚かされる。
公式ロゴ
 ジョセフ・カーン監督はまだ30歳前のアジア系だが、10代の頃から地元ヒューストンでヒップホップ・アーティストのビデオを製作し始め、瞬く間に売れっ子監督となった。MTVのインタビューでは、影響を受けた監督としてスティーブン・スピルバーグ、リドリー・スコット、アルフレッド・ヒッチコック、ウディ・アレンなど多彩な名前を挙げている。カーン監督は既に劇場公開映画デビュー作『Torque』を仕上げており、来年1月の公開を待っているところ。ラッパー兼アクターのアイス・キューブがモーターバイク・ギャングのリーダーを演じるこの作品は、MTVジェネレーションならではのスピーディーなレース・シーンが期待大とのこと。
前日のプレイベントに並ぶファン
 ところでMTVビデオ・ミュージック・アワードでは監督賞を始め、芸術監督賞、編集賞、撮影賞などは受賞者の名前が矢継ぎ早に読み上げられるだけで、受賞シーンはオンエアされない。しかしMTVとはミュージックビデオによって成り立っているテレビ局。ミュージシャンや曲そのものもさることながら、ミュージックビデオの制作側にももっとスポットライトを当ててもいいのではないだろうか。


■ベスト・ビデオ・フロム・ア・フィルム賞
『スパイダーマン』より
チャド・クローガー・フィーチャリング・ジョージー・スコット「ヒーロー」

◆同賞ノミネート

『メン・イン・ブラック2』より
ウィル・スミス「ラック・スーツ・カミン(ノッド・ヤ・ヘッド)」

『ラッシュ・アワー2』より
リュダクリス・フィーチャリング・ネイト・ドッグ「エリア・コード」

『トレーニング デイ』より
ネリー「#1」
MTVの巨大ビルボードが掲げられた
ラジオシティ・ミュージックホール


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