TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 ニューヨーク in TVドラマ

 アメリカではエミー賞授賞式が終わった直後の9月後半から10月前半にかけてTVドラマの新シリーズが次々と始まる。今回は数ある人気ドラマ、新ドラマの中からニューヨークを舞台にしたものをピックアップしてご紹介。
 今年のエミー賞は9月22日に開催され、ドラマ部門は『The West Wing』(日本では10月より邦題『ザ・ホワイトハウス』として放映開始)、コメディ部門は『フレンズ』がそれぞれ最優秀賞を獲得した。その2日後にはさっそく長寿刑事ドラマ『NYPDブルー』の新シーズンが始まった。
 ドラマのシーズン第1回目はプレミアと呼ばれ、各放送局ともに特に力を入れるが、今年で10年目を迎えた『NYPDブルー』は本編の始まる前に『インサイドNYPDブルー』と題して過去9年間を振り返る特別番組をオンエア。デビッド・カルーソ、ジミー・スミッツなど過去の人気レギュラー陣が出演当時の裏話を披露した。

 パトロール警官、消防士、救急隊員の活躍と人間模様を描いて人気の高い『サード・ウォッチ』も第3シーズンが始まった。昨シーズンの最終回はニューヨークが大停電に見舞われ混乱に陥るというストーリーだったが、実はこのエピソードは第2シーズンのプレミアとして撮影されたもの。ところがオンエア直前に9.11テロ事件が起こったためにいったんお蔵入りとなり、第2シーズンの最終回としてようやくオンエアされたのだった。そして今回のプレミアでは、大停電から誘発された暴動の巻き起こるニューヨークの街へ警官たちが出動していくシーンから始まったのだった。
『サード・ウォッチ』今シーズン・プレミア
『ブラックアウト(停電)』の雑誌広告。
 10月2日には、現役ドラマでは最長寿の警察&裁判ドラマ『ロウ&オーダー(法と秩序)』の第13シーズンが開始される。プレミアは『アメリカン・ジハード(アメリカの聖戦)』と題され、ニューヨークのアラブ系アメリカ人に対する偏見を取り上げている。この『ロウ&オーダー』はアメリカで実際に起こったさまざまな事件をヒントにストーリーを構成し、前半を刑事による捜査シーン、後半を検事による裁判シーンに振り分けるというユニークなスタイルを取っている。また街頭ロケの多用によりニューヨークのリアリズムを追求している点も息の長い人気の理由だ。

 12年に渡るロングランのあいだに『ロウ&オーダー』というタイトルはいわばブランド・ネームのようになり、今では同タイトル別シリーズの『ロウ&オーダー:S.V.U.(原題)』、『ロウ&オーダー:クリミナル・インテント(原題)』もオンエアされている。

『ロウ&オーダー』今シーズンプレミア
雑誌広告
 この2作も共に人気が高く、それぞれ第4シーズン、第2シーズンが始まる。新作ドラマでは『Without a Trace』が始まった。ニューヨークのFBI行方不明人捜査専門チームが最新テクノロジーとシャープな推理によって、跡形もなく失踪した人間を捜し出す。

 シットコムでは『フレンズ』の第9シーズンが始まった。レイチェル役のジェニファー・アニストンは、昨年と一昨年のエミー賞助演女優賞にノミネートされていたが、今年はついに主演女優賞をゲット。また、今夏公開された映画『Good Girl』で、これまでとはまったく異なる落ち着いた演技を見せて好評を博したばかり。それが『フレンズ』の更なる人気に結びつくかどうか。
 弁護士とインテリア・デコレイターが主人公の『ふたりは友達?ウィル&グレース』も第4シーズンに突入。プレミアではミュージシャン&アクターのハリー・コニックJr.がゲスト出演して花を添えた。

 ファッション雑誌の編集室を舞台にデビッド・スペード、ローラ・サン・ジャコモなどがスタイリッシュな笑いを提供してくれる『Just Shoot Me』の人気も相変わらずで、10月8日に第7シーズン開始。日本で未オンエアなのが不思議な1本だ。
『ふたりは友達?ウィル&グレース』の街頭ポスター
 近年、ニューヨークの犯罪ドラマは犯罪シーンやセックス・シーンの描写がますます過激になっており、時に視聴者からクレームがつくこともある。それでも本物のストリートで撮影されるニューヨークの猥雑さはリアリティ満点。一方、ほとんどスタジオで収録されるシットコムには、実はニューヨークのフレイバーはあまりない。それでも軽くスマートな会話と笑いはやはりニューヨークならではのもの。ニューヨーカーはどちらのタイプのドラマもそれなりにも楽しんで見ているようだ。


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