TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 映画に登場した場所を訪ねてPart12~コロンビア大学

コロンビア大学と言えばニューヨークにある名門大学。狭いマンハッタンにありながらも広いキャンパスを有し、壮麗な建物を多く持つことから映画のロケにもたびたび使われてきた。今回はそんなコロンビア大学構内をご紹介します。
 アメリカの名門大学8校で構成されるアイビーリーグの一員であるコロンビア大学は、アメリカがまだイギリスの植民地だった1754年にイギリス国王ジョージ二世によって設立された伝統ある大学。ニューヨーク州では最古の高等教育機関で、2004年には創立250周年を迎える。歴代の卒業生は各界で活躍し、教授陣からはなんと64名ものノーベル賞受賞者が出ている。大学は一般教養がメインだが、大学院は建築、ビジネス、教育、ジャーナリズム、法科など19の学部を持ち、アート学部にはフィルム、シアター、ライティング、ビジュアル・アーツの4学科が含まれている。
コロンビア大学のシンボルとも言えるドーム
 同校はセントラル・パーク西側のモーニングサイド・ハイツと呼ばれるセクションにある。このあたりのブロードウェイ沿いは同校のいわばキャンパス街のようになっており、学生好みのカフェや書店などが並んでいる。一方、大学構内は古い建物と樹木や芝生がいかにも伝統を誇る名門大学といった雰囲気を醸し出しており、映画の背景にもよく登場する。

 今年のメガヒット『スパイダーマン』(02)では、クイーンズに住む高校生ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)がコロンビア大学の研究室に見学に訪れ、そこで特異な遺伝子を持つクモに刺されたためにスパイダーマンとなる。
アート学部付属のミラー劇場
 バーブラ・ストライサンドが監督・主演を努めた大人のためのロマンチック・コメディ『マンハッタン・ラプソディ』('96) では、婚期を逃したコロンビア大学の中年教授ふたり(バーブラ・ストライサンド、ジェフ・ブリッジス)が恋に落ちる。
 ウディ・アレン監督が初めてミュージカルに挑戦した『世界中がアイ・ラヴ・ユー』('96)では、ウディ・アレン演じる主人公の娘(ナスターシャ・リオン)がコロンビア大学の学生という設定。法科の図書館の前でミュージカル・シーンが撮影されたが、このシーンは残念ながらカットされ、幻となってしまった。

 懐かしの大ヒット・コメディ『ゴーストバスターズ』('84)では、コロンビア大学の情けない科学者トリオ(ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス)がオバケ退治カンパニーを結成して幽霊たちと格闘する。
専門別に20もある図書館のひとつ
 1969年に実際にコロンビア大学で起こった学内紛争を、当時同校の学生だったジェームズ・クネンが小説にして発表したのが「いちご白書ーある大学革命家のノート」。その映画化作品『いちご白書』('70)には、もちろん同校のキャンパスが存分に登場する。
 コロンビア大学の卒業生からは多くのアクターも出ているが、興味深いことにそのほとんどは映画科・演劇科以外の専攻を取っている。『オーシャンズ11』(01)のケイシー・アフレックは、コロンビア大学とジョージ・ワシントン大学で優生学を専攻。

 『セイブ・ザ・ラスト・ダンス』(01)のジュリア・スタイルズは現在も社会学専攻で在学中。昨年はそのフィールドワークの一環として同校から近いハーレムのYMCAで子供たちと共に絵を描くプロジェクトに参加、気さくな人柄で子供たちからも人気を得ていた。

 映画『コクーン』('85)などの他、テレビやブロードウェイでも活躍する実力派ブライアン・デネヒーの専攻は歴史。俳優・監督・プロデューサーとマルチな才能を見せるマリオ・ヴァン・ピーブルズは経済。
敷地の広さが実感できるキャンパス地図
 アントニオ・バンデラス主演の新作サスペンス『ファム・ファタール(原)』の公開が待たれているブライアン・デ・パルマ監督はなんと物理。サイモン&ガーファンクル解散後もソロ・シンガーとして活躍を続け、いくつかの映画にも顔を見せているアート・ガーファンクルはアート史と数学。

 エキサイティングな部分ばかりが強調されがちなニューヨークだが、この街の「知」の部分を象徴しているのがコロンビア大学。これからも映画の背景として私たちの目を楽しませてくれると共に、個性派アクターや監督を生み出し続けてくれることだろう。


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