TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 クリスマス・スペクタキュラー/ラジオシティ・ミュージックホール

 アメリカはいよいよホリデー・シーズンに突入。高まるクリスマス気分をさらに盛り上げてくれるラジオシティ・ミュージックホールの『クリスマス・スペクタキュラー』を早くもレビュー!
 10月最終日のハロウィーンが終わると、アメリカはすっかりホリデー・シーズン。11月28日には家族団欒のサンクス・ギビング、そして12月には一年のハイライトともいえるクリスマスとニューイヤーズ・イブ。迫り来る楽しいイベントを前にニューヨーカーもうきうきし始め、街はクリスマスのデコレーションできらびやかに彩られる。

 そんなクリスマス気分をぎゅっと詰め込んだ楽しさ満点のミュージカル・レビューが、毎年恒例のラジオシティ・ミュージックホール「クリスマス・スペクタキュラー」だ。第70回目となる今年は11月7日に始まり、来年1月5日まで200回以上の公演を行う。1日5回公演の日もあり、120万人の観客動員数が見込まれている。
ショーの主役サンタとザ・ロケッツ
 今年もショーは3Dムービーで幕を開ける。サンタのソリがニューヨークの空を駆け巡り、プレゼントの包みがばらまかれる。あらかじめ手渡されていた3D用サングラスをかけた観客には、そのプレゼントがまるで自分の手元に落ちてくるように見え、歓声が沸き起こる。セントラル・パークやマディソン・スクエア・ガーデンなど実在の名所がふんだんに登場し、やがてソリはラジオシティ・ミュージックホールの楽屋口に横付けされる。
 次の瞬間にはサンタがステージに登場し、楽しい語り口でショーのホストをつとめるという展開。サンタのセリフも時代を繁栄し、「子供たちからの手紙をEメールで受け取った」と言って観客を笑わせ、また自宅で待つミセス・サンタとは携帯電話で会話をしたりもする。

 お馴染みのバレエ「くるみ割り人形」のシーンで主役のクララを勤めるのは、サンフランシスコ出身の中国系バレリーナ、コレッタ・チャン。まだ14歳だが長いシークエンスにも関わらず、疲れをまったく見せずに軽やかに踊ってみせる。
ザ・ロケッツのラインダンス。
40名が並ぶ様は壮観
 何十人ものサンタによるユーモラスなダンス・シーンでは笑いが巻き起こり、ラジオシティ・ミュージックホール専属の名物ダンス・チーム、ザ・ロケッツは「おもちゃの兵隊」で一糸乱れぬマス・ゲームのようなダンスを披露。
 しかし、ザ・ロケッツの見せ場はなんといっても、あのライン・ダンス。40名のダンサーがステージに一直線に並ぶ様はまさに壮観。まずは華やか笑顔と均整のとれたプロポーションを披露し、ついで一斉に足を振り上げる。単純な振り付けに見えるが、相当の訓練なくしてはできない踊りだ。

 ラジオシティ・ミュージックホールは常時ザ・ロケッツのメンバーを募集しているが、応募の条件は18歳以上、身長168~179cmで、タップ・ダンスとジャズ・ダンスの素養が必要。

 今年も総勢80名がザ・ロケッツとして踊っているが、いずれも競争率の高いオーディションを勝ち残った選り抜きのダンサーだ。中にはひとりだけ日本人のリサ・マツオカさんも含まれている。
開演を待つ子供たちの衣装も
クリスマス・ムードたっぷり
 実は今夏、ザ・ロケッツは労働条件をめぐってホール側と争い、ストライキの瀬戸際まで行った。ホール側が、数年にわたってザ・ロケッツとして踊ってきたベテラン・ダンサー41名にも改めてオーディションを受けることを要求したことが発端。
 結果的にはホール側が提示した慰労金を受け取って脱退するか、またはオーディションを受けるか、の選択をダンサーが行うこととなり、一見落着した。

 ショーの最後は「Nativity」と呼ばれるキリスト生誕の物語。それまでの明るくにぎやかな舞台セットがガラリと変わり、ホール全体が宗教絵画のような幻想的な雰囲気に包まれる。幼子イエス、聖母マリア、三人の賢者と共に本物のヒツジやラクダが登場するのも驚きだ。

 今年初めてショーを観る10代の娘とやってきた女性客は、「22年前に一度観たけれど、時代は変わったわね、サンタがロックンロールを踊るなんて!」と言いながらも充分に楽しんだ様子。1時間45分のショーは大人も子供も楽しめる、まさにファミリー向けの構成で、これが毎年のリピーターを生み、70年間もの長期に渡って人気保っている秘密。「クリスマス・スペクタキュラー」よ、永遠なれ!
ザ・ロケッツ「おもちゃの兵隊」のポスター


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