TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 クリスマス映画 in ニューヨーク

 アメリカではクリスマス・シーズンになると名作クリスマス映画がテレビで繰り返しオンエアされ、人々はお気に入りの作品を毎年楽しむ。今回はそんな定番クリスマス映画の中からニューヨークを舞台にした作品をピックアップしてご紹介します。
 今年の新作クリスマス映画『サンタクロース・リターンズ!クリスマス危機一髪』『Friday After Next』、クリスマスとほぼ同時期にあるユダヤ教の宗教行事“ハヌカ”をテーマにした『アダム・サンドラーズ・エイト・クレイジー・ナイツ(原)』は、いずれも好調なヒット振りだが、残念ながらどれも舞台はニューヨークではない。けれど名作クリスマス映画にはニューヨークの風景が楽しめるものがいくつもある。その代表格は、なんといっても『34丁目の奇蹟』('47)。マンハッタンの34丁目に実在する世界最大のデパート、メイシーズを舞台にした心暖まる作品だ。
メイシーズの名物、ショーウィンドウ・ディスプレイ
 毎年メイシーズ主催により盛大に行われるサンクスギビング・デイ・パレードは、クリスマス・シーズンの幕開けでもある。ひょんなことからパレードのサンタ役として雇われた白いひげの老人(エドモンド・グウェン)は、クリスマスまでおもちゃ売り場で子供たちに笑顔を振りまくこととなった。(意外なことに本物のメイシーズにはおもちゃ売り場はない)ところが老人が自分を本物のサンタだと主張して譲らなかったために大変な事態が巻き起こる。しかしメイシーズのイベント責任者(モーリン・オハラ)と、そのおしゃまな娘(ナタリー・ウッド)は、いつしか彼を本物のサンタだと信じるようになる…。
 ノスタルジックな白黒の映像で見る55年前の34丁目界隈とメイシーズ、面白おかしく描かれる売り上げ合戦。エドモンド・グウェン演じるユーモラスで心の広いサンタ、モーリン・オハラの端正なキャリア・ウーマン振りと洗練されたファッション、まだ幼いナタリー・ウッドの芸達者振りなど見所がいっぱいで、アットホームなクリスマス気分を十分に盛り上げてくれること間違いなし。なお、94年にはリメイク版『34丁目の奇跡』がリチャード・アッテンボロー主演により作られているので、見比べてみるのもいいかもしれない。(※オリジナルは“奇蹟”、リメイクは“奇跡”と時が違う)
メイシーズは今年で創立100周年
 ニューヨークを舞台にした数あるロマンチック・コメディの中でも絶対的な人気を誇る『ユー・ガット・メール』('98)にも、クリスマス・シーンが出てくる。この作品はマンハッタンの西側、アッパーウエストサイドでの物語だったが、現在、日本で公開中の『セレンディピティ』(01)では東側のアッパーイーストサイドがフィーチャーされている。クリスマスのショッピング客で賑わうブルーミングデール・デパートに始まり、映画のタイトルと同じセレンディピティという名を持つカフェ、セントラルパーク内のアイス・スケート場ウォールマン・リンク、ウォルドーフ・アストリア・ホテルなどが次々と登場する。

 大人のためのロマンス映画なら、メリル・ストリープとロバート・デニーロの『恋に落ちて』('84)。この作品でも主人公がリゾーリ書店でクリスマス・プレゼントの本を買うシーンが見られる。
メイシーズの今年のクリスマス公式キャラクター“カエルのカーミット”
 ニューヨーク郊外での雪のクリスマス風景が美しいのは『グットナイト・ムーン』('98)。最愛の子供を残して逝かなければならない母親と、新たに子供たちの母親となる若い女性の対立と葛藤、そして家族の絆を描いた感動作だ。スーザン・サランドン、ジュリア・ロバーツという二大女優の競演が興味深く、夫役のエド・ハリスも地味ながら実力派の面目躍如の演技を見せている。

 ちょっとオフビートなクリスマスなら、マンハッタンを出てブルックリンへ。『スモーク』('95)は、煙草屋の主人(ハーヴェイ・カイテル)によって語られる風変わりなクリスマスの物語が心に染みる佳作。

 アクションならウェズリー・スナイプスとウディ・ハレルソン主演の『マネートレイン』('95)。地上のにぎやかなクリスマス・ムードをよそに、地下鉄構内で壮絶なアクションが繰り広げられる。ブレイク以前のジェニファー・ロペスも警官役で出演。

 他にもコメディなら『ホーム・アローン2』('94)、『ゴーストバスターズ2』('89)、『3人のゴースト』('88)などがある。さて、今年のあなたのお気に入りは?


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