映画館まで皆さんに足を運んでもらうためには、まずその映画を知ってもらう(認知してもらう)ことが必要です。そのために各映画会社は公開が予定されている映画の宣伝材料を作成し、「こんな映画を公開するんだと」いうことを皆さんに知ってもらうのです。この宣伝材料のことを映画業界では、省略して通称“宣材(センザイ)”と呼んでいます 。ところでこの宣材とは具体的に何のことを指しているのか分かりますか?

 皆さんが目にしたり手に取ったりできるものとしては、映画館の中や外に貼られている「ポスター」や「チラシ」があります。このポスターが宣材の中で一番大事なもので、映画のタイトルや誰が出ているのか、どんな映画なのか、何が売りなのかということを明確に表現するもので、ある意味ではその映画の顔とも言えます。

 ポスターには基本的に大きさが2種類あって、大きいものがB全(ビー ゼン)で小さなものがB2(ビーツー)というサイズとなっており、そのままB全・B2と呼ばれています。ただB2に関しては、通称で“半裁”( ハンサイ)と呼ばれることが多いようです。全ての作品で必ずこの2種類がある訳ではなくて、映画の公開規模によってはB全だけとか、半裁だけということもあります。

 基本的にポスターは、一度作成したら公開までその絵柄パターンは変更しません。ただ、超話題作といった公開までかなり時間がある映画などの場合、一番最初にティーザーと呼ばれるB全を作成して、とにかくこんな映画を公開しますよという簡単な内容(タイトルを浸透させるのが主な目的)を示しておき、公開が見えてきたらより分かり易い絵柄のポ スターを作るということもあります。

 また、より映画の内容を伝え易くするために、公開までに数パターンの絵柄のポスターが作られる場合もあるのです。ただポスターの絵柄に関しては、アメリカのオリジナルポスターをそのまま日本用にカスタマイズ(役者名を日本語にする等の単純な変更)して使用するには基本的 に問題はありません。でも、日本向けに絵柄を多少でも変更する場合、アメリカの映画会社にお伺いをたてて、了承をもらわなければならないのです。これを通称“アプルーバル”と呼んでいます。了承を得るまでにかなり時間を費やしてしまう場合も多々あって、かなり面倒な作業となるのですが…。

 「チラシ」は、B5サイズでポスターでは伝えきれないものを補うために置かれているもので、表は基本的にポスターと同じですが、裏に簡単なストーリーなどが記載されているという訳です。チラシを手に取った人は、とりあえず何らかの興味がそのチラシの映画にあった訳ですから この時点で映画会社の宣伝は少なからず成功していると言えるのかも知 れませんね。このチラシ、映画館に来た人誰もが貰える唯一の宣材なので、たくさん置かれているものですが、是非暇つぶしの為ではなく、じ っくりと読んで欲しいものです。

 「ポスター」や「チラシ」は皆さんの目に触れる宣材でしたが、一般の方がほとんど目に触れないものも結構あります。ここではその代表格の「プレス」を紹介したいと思います。

 このプレスと呼ばれるものは、映画を雑誌やテレビなどで紹介してもらうために各マスコミに配布する文字資料のことです。つまり皆さんが 映画館で購入されるプログラム(パンフレット)みたいなものだとお考え下さい。ただこのプレスは、プログラムと同じではありません。各社が一番趣向を凝らしたものになっていて、デザインもまちまちだし、サイズも違うとまさに映画会社の個性が出ているものなのです。中身は基本的には映画を紹介してもらうのが目的なので、ストーリーや出演者のプロフィール、舞台裏のことなどが書かれています。一般の方が手にすることが出来ないものなのですが、最近では、プレゼントになっている場合も多いので、そのような際には是非応募して、プレスを手に入れてみて下さい。きっとその映画会社の色というか雰囲気が、ちょっとは垣間見えることでしょう。

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