『映画館にせっかく行ったのに座れなかった!立見で映画を観た!』そんな経験がある人って、結構いるのではないでしょうか?

 映画館の座席には限りがありますので、人気の映画では、そういうことが当然起こってしまいます。これは現在の映画館の主流である「自由定員制(別称:流し込み制)」というシステムのために起こることなの です。この自由定員制は、上記のように席に座れない人が出てくるという短所があるのですが、良いところも多いのです。例えば、席が空いているのなら、次の回も続けて映画を鑑賞することが出来るなど、比較的 自由度が高いのが特徴です。

 自由定員制では、上映時間の間際になればなるほど座席が埋まっていく為、チケット売り場で刻々と混雑状況を表示するようになっています。この混雑表示は基本的には、分かりやすいものとなっています。東宝 系の劇場は5段階表示で、

 『お座りになれます』→『お席は前の方になります』→『お席のお約束は出来ません』→『お立見になります』→『只今の回はご入場出来ません』

 ざっと上記のようになっています。『座れます』の表示が出ているうちは良いのですが、『前の方』という表示に変わると要注意です。

 自由定員制の席の埋まり方を見ていると非常に面白いのですが、まず一番見やすそうな中央の席から埋まり、それから後方、最後に前方の席が埋まります。人によっては、前の方が好きという人もいるかもしれませんが、やはりスクリーンが近すぎて見づらいためか、前の方は不人気なのです。

 そうして最も不人気であろう"最前列の席"がほぼ埋まりかけてくると 、『お席のお約束は出来ません』という表示に切り替わります。この約束というニュアンスですが、絶対に座れないということを意味するものではありません。お客さんからのクレームを避けるために、結構余裕をもって表示を切り替えることもあるからです。この表示の場合には、1人なら座れる可能性はあるが、カップルなどが連席で座ることは難しいと考えておいた方が良いかと思います。つまりバラ席が存在する状況ということになります。

 そしてほとんど座席が埋まると、いよいよ『立見』の表示に変わります。普通の作品だとこの時点で、客足がバタッと止まります。ですが、これが超話題作(最近ですと「タイタニック」など)の場合は別で、何 とか話題作を観たいと思うためか、立見でも客足が落ちないということになります。この場合、一体どれだけ立見のお客さんを入場させるかというと、各劇場とも消防署から定められた"消防上の定員"というものがあります。基本的には劇場座席数+立見客<100~200名>くらい で、そこまでは入場させることが出来るのです。

 もしそれをも越えるような勢いがある場合は、最終的な措置として『入場止め』を行います。これはその名の通り、消防上の定員に達したことを理由に入場をお断りするもので、チケットの発売も一旦中止致します。そこまで行く映画はそうそうあるものではないのですが、そういう状況下で映画を観賞すると一種独特の熱気を味わえるのは確かです。もっとも立見のお客さんはそれどころでないかも知れませんが…(笑)

 映画館に行って座れなかったということを防ぐ方法をお教えしましょ う。それは、利用されているようで意外と利用されていないのですが、これから行こうとしている映画館に電話して確認するのが一番です。何分前に来れば良いのかをきちんと教えてくれるはずです。あるいは近頃 は『iモード』などの携帯情報サービスでも空席情報を確認出来て便利なので利用されることをおすすめ致します。

 最近では外資系のシネマ・コンプレックス(通称:シネコン)<ワー ナーマイカルが代表的>が全国に続々と出来ていています。このシネコンは『座席指定制』というシステムを取り入れているため、"立見"で映 画を観るという状況は全く起こりません。

 また東宝系の劇場でも、作品によって定員制を実施したり完全入替制(各回ごとに観客を完全に入れ替える)などを取り入れ、自由定員制だけではない柔軟な対応を取っています。近い将来には全てが座席指定制になるという日が来るのかも知れません。観客にとっては立見がないという状況は喜ばしいことだと思いますが、上記のような熱気を感じられないというのはそれはそれで寂しい感じもします。

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