映画館で映写事故に遭ってしまったという経験をお持ちの方はどの位いますか?映写事故とは、上映中の映画が急に真っ暗になったりして上映を中断せざるをえない状況を指します。昔の古い機械と違って最新の映写機ではまずこのような事故は起こらないのですが、それでも年に1回、あるいは2~3年に1回くらいは大きな劇場でも映写事故が起こることがあります。

 私が映画館勤務をしていた時は当たり年で、何回か映写事故に遭遇してしまいました。特に印象深いのは建物の防災上のシステム誤動作によって、ビル内の何館かで上映中の映画の音声が一切出なくなってしまうという大きな事故があったこと。大抵の映画館の従業員控え室には場内の映像・音声モニターが設置されているので、常時チェックしているのですが、その時は劇場ロビーからの報告で音声が流れていないことを確認し、慌てて劇場へ駆けつけたのを覚えています。

 とにかく、画面が真っ暗になってしまった、音が出ていない、画面がブレている等の映写事故が発生した場合は、一旦上映を中断して場内の明かりを全部点け、現状報告のアナウンスを入れることになっています。 前述の事故の際には館内マイクも使用出来なくなっていたので、お客様の前で大声で状況を説明したという嫌な思い(良い経験?)をしました。

 このような状況に遭遇してしまったら、まず落ち着いて下さい。当然せっかくの映画の雰囲気がぶち壊しになってしまうのですから、怒り出してしまう方、気分を害して帰ってしまう方もおられます。ですが大抵の場合はすぐに原因が解明出来ることが多いので、5~10分程度で復旧した後、事故のあった画面のちょっと前までフィルムを巻き戻して上映は 再開されます。

 映写事故が起こったのが最終回で、復旧にかなり時間がかかる時には、終了も遅くなってしまうので上映を中止する場合も出てきます。上映中止だけでなく5~10分程度の中断の時でも、終了後に納得されずに帰る方には“非常券”といってその日から3ヶ月間、他の直営劇場でも有効なチケットを渡す(東宝直営館の場合)といった対応策を取っているところもあります。こういったことを知識として憶えておくと、万が一映 写事故に遭っても冷静な対応をして頂けると思います。

 映画館ではトラブルを防ぐ為に、映写機に関しては常にメンテンスを行 い、フィルムに関しては必ず公開前に「プリントテスト」といって映画 を上映していない早朝や深夜にそのフィルムを1回上映するようにしています。もしノイズが入っていたり、フィルムに傷が入っていたりしてそれが見るに聞くに堪えないものならプリントを交換してもらうことになっています。最近はデジタルプリントと呼ばれるフィルム形式がありますが、これには専用の映写機が必要なのでトラブルが起こるとかなり 大変なことになるようです。聞いた話では、ビデオで一時停止をかけたような状態で画面が固まってしまい、その時は上映を中止するしか無かったそうです。

 お客様に対する当然のサービスとして、映写事故はあってはならないこと。常に万全を期しているのですが、それでもごくごく稀に事故が起きてしまうことがあります。不幸にもこのような事故に遭遇してしまった ら、滅多にない経験をしたと思って下さい。そして、このような映写事 故は当然、試写会の際にも起こり得ます。試写会の場合、状況にもよりますが、映画館とは異なるので上映中止になることが多いかもしれません。試写会の場合、上映中止になっても代わりに何かという訳にはいかないので注意しておいて下さいね!

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