一般の方が劇場公開前に映画を見る機会は、外部のホールを貸しきって行う試写会になると思います。これらのいわゆる“一般試写”は、公開の1ヶ月前から直前ぐらいまでに集中しています。

 雑誌などの映画欄で映画を紹介してもらうには、当然もっと早い時期にその雑誌の編集者、あるいは執筆をまかされているライターさんなどのマスコミの方々に映画を見てもらわなくてはなりません。週刊誌はともかく、月刊誌などの場合には特に編集の進行が早くなりますので、かなり早い段階からそういった人達に映画を見せていかなくてはならないのです。どのようにして映画を見せるかというと、「社内試写」といって会社の中の試写室でマスコミ向けの試写を組むのです。

 各映画会社には必ず試写室と呼ばれる部屋があって(大体30席ぐらい。大きい所では50席以上あるところもある)、そこで大体10~20回ぐらいの規模でそれぞれの作品の試写を行ないます。ミニシアターを更に小さくしたものとイメージして頂ければ分かりやすいかもしれません(中にはミニシアター並に立派な試写室もありますよ)。

 マスコミ向けの社内試写でも、一般の方が試写会当選の際に受け取るような試写状がちゃんと送られています(勿論一般試写とは文面が全然異なりますが)。各映画会社によっても異なりますが、約3000近いマスコミ関係者のリストを独自で持っているので、それぞれに試写の案内をします。マスコミの方々は他社の社内試写とハシゴして試写を見ることが多いので、その忙しさなどを考慮して時間を設定していきます。

 例えば、試写を設定する時間帯は10時、13時、15時30分、18時30分の4回ぐらいで考えて、なるべく多くのマスコミの方が試写を見れるようにします。つまり、マスコミ試写の設定期間中に金曜日が3回あったとしたら、最初は13時からの回で、次は15時30分、最後は18時30分からといった具合に時間をズラす訳です。各映画会社は大体、銀座周辺にありますのでA社の13時の回が終わったらB社の15時30分の回に行くという感じですね。

 尚、マスコミリストの中にはいわゆる文化人・芸能人などの著名人も含まれていますので、芸能人が社内試写を見に来るということもあります。やはりなかなか映画館には行きづらいからだと思いますが、何にせよ著名人に興味を持ってもらえれば、その後、新聞広告などに向けてコメントを頂いたりすることも出来るので映画的には大きなプラスになります(でも試写室に来てくれる方は極々少数です…)。

 皆さんからすれば、マスコミの人達は映画がタダで沢山見れてうらやましいと思うかもしれません。確かに、実際映画が好きという方も多いです。ですが社内試写はあくまで映画を見た上で、それぞれの持つ媒体で紹介してもらうという主旨、つまり仕事として見てもらっているものなので、そこは誤解なきようお願いしたいと思います。

 こういった理由により、当然媒体を持っていないような方の試写観覧は入り口でお断りさせて頂きますし、仮に媒体を持っていたとしてもそれがほとんど意味をなさない媒体と映画会社が判断した場合は観覧をお断りすることもあります。

 基本的には試写状を持ってきた人は確実に見て頂きますが、持ってない方の場合はチェックをするようにしています。中にはライターと称しているだけの人々がいるからです。この辺のチェックの体制は各配給会社によってまちまちのようですが、試写状を持ってなければお断りするなんてところが多いようですね(実際は結構忘れて持って来ないという方も多いので画一的にチェックするというのは微妙なところです)。また、注目・話題作品の場合、映画館と同じように30分ぐらい前に満席になってしまうなんてこともありますので、せっかく来て頂いても入場をお断りするなんてこともあります。

 一般の方には試写室というのは縁遠い所かもしれません。最近はこれらの試写室をプレミアム試写会などとして××読者限定などという形で使用しているところもあるようですので、一般の方でも試写室で映画を見るチャンスはあります。ただ、映画館に比べたらやはり小さいスクリーンですので、いくら劇場公開前の映画をいち早く見られるといっても、迫力は無いかもしれませんね。やっぱり一般の方には、個人的な意見ですが、映画は映画館で見て頂きたいですし、それが一番だと思います。

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