我々が洋画を観る時、もはや「字幕スーパー」は必要不可欠なものになっています。中には字幕を読むのが苦手、面倒だという方もいるかもしれませんが、大半の方は字幕をその映画の一部として、ごく自然にとらえていると思います。

 字幕翻訳家の代表は、ほとんどの大作映画を手がけ、最近はスター来日時に通訳としても活躍されている戸田奈津子さんが一番有名でしょう。また、男性では菊地浩司さん、林完治さんなどの名前をタイトル画面の下に観ることが多いと思います。

 字幕翻訳家の方たちには、まずノースーパーで作品を観てもらい、台本のセリフと照らし合わせて翻訳作業を進めていきます。しかし、最近のように全米との公開タイミングがほぼ同時の作品が多い時は短時間で翻訳をこなさなくてはならず、時間に追われてかなり大変だそうです。

 私は以前、字幕翻訳家という職業に憧れていたこともあり、岡枝慎二さん(『スター・ウォーズ』('77)などを翻訳)が出版された字幕に関する著書などを読みました。それによると、厳密な決まりは無いようですが、経験則として、人間は1秒間に4文字までの表示であれば、確実に認識する(読む)ことが出来るそうです。そこで、俳優が発しているセリフの長さ(秒数)を上記にあてはめ、例えば2秒のセリフならば8文字で表現するようにしているとのこと。つまり、訳していたらとてもこの字数では収まらないので、日本人が理解しやすい形に意訳するという作業が必要なのです。画面にあまり長々と文字が出ていたら、読むだけで疲れてしまって映画に集中できないですからね。

 また、一番難しいのはコメディ映画のようです。万国共通の笑いもありますが、いわゆるアメリカン・ジョーク的なものは日本流にうまく置き換えないと全く面白くないですし、英語が得意な方は字幕が違ってるなどと思うかもしれませんが、それらは日本人に理解しやすいように意訳されているのです。同じ映画を観ていても、外国人が笑うタイミングが違うなどという話を聞いたことがありますが、これらも 字幕では伝わりきらないセリフのニュアンスによるものなのでしょう。

 字幕は、“打ち抜き”といって、手書きのものをそのままフィルムに焼き込んで、画面横に縦位置に表示されているものが主流でした。しかし、白い背景の時などに見にくいということもあり、最近ではより見やすくする為に文字を大きく、そして 活字化して画面下に横書き表示するといった字幕の作品が多くなってきました。

 映画関係者ですと公開前の作品を全体の雰囲気を掴む為に、いち早く字幕なしのノースーパーで観る機会があります。SFやアクション、ホラー映画だと字幕が無くても結構楽しめますが(それでも細部の理解は難しいのですが)、ドラマ性の高い映画(法廷ものなど)だと、さすがに厳しいものです。

 最近は一般家庭でも、DVDで字幕表示のON/OFFの設定が自在に出来たり、逆に英語字幕を表示させることが出来る機能を持つソフトがありますので、それらを使用すればノースーパーで映画を鑑賞することも可能です。しかし、映画公開タイミングの地域差から、輸入DVDに関しては国別の識別コード(リージョナルコード。アメリカは1、日本は2になっています)が設定されているので、国内ハードで再生することは出来ません。しかし、私などは、随分昔に輸入版ビデオ&LD(日本公開前の作品や公開中の作品など)を購入し、クローズドキャプション(難聴者向けの英語字幕。普段は表示されないが、専用機器を使うと表示できる)で輸入版を観ていたこともありました。

 英語が好きな方には、こうした方法で、好きな映画を観ながら生きた英語の勉強をしたり、また、日本語の字幕スーパーの面白さを再認識できるでしょう。映画英語に興味のある方には是非おすすめしたいと思います。尚、下記アドレスに字幕翻訳家の戸田奈津子さん他の方の著書が紹介されています。もう少し深く字幕に関して知りたいという方は、読んでみてはいかがでしょうか?字幕翻訳の苦労や面白さが書かれていますよ。

◆「スーパー字幕アレコレ」
http://www.7-dj.com/jp/cinema/special/spe002/spe002.html

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