各映画館で現在何を上映しているのか?誰が出演しているのか?ということを明らかにするため、映画館の壁面や窓口の上部などには、たいてい公開中の作品の看板を掲示しています。このような看板をすぐ近くで観るという機会はあまり無いのではないでしょうか。
こうした看板の多くは、よく見ると実は“描かれた”ものです。基本的には映画のポスターを意識し、非常に似せて描かれていますが、たまに“これ誰?”という感じで微妙に似てないものもあります…(笑)。昔はポスターを真似て描いていたので、全然似てないということもありましたが(これはこれでまた別の趣きがあって良いと思いますが)、今はポスターをプロジェクターなどで投射し、それをなぞるという手法をとっているので、ポスターと見間違うようなリアルな看板が出来上がります。 これらの看板を描いている業者さんは全国でも数少ないのですが、東京の主要看板は全て新宿大久保にある「東京宣伝美術社」というところが一手に引き受けています(関西には名物職人さんがいらっしゃったようです)。この通称“東宣”さんは、映画看板を専門に扱っている訳ではありませんが、映画館の看板デザイン、取り付け、取り外し、回収までをトータルで引き受けているので、映画館にとっては重要な存在です。 映画の楽日(上映最終日)の最終回の上映が始まると、東宣さんはその映画の看板を外し、翌日から上映される新作映画の看板を取り付ける作業を順次行っていきます。これらの作業は大抵金曜日の夜にされるので、運が良ければ取り付け作業を見ることが出来るかもしれませんね。 ちなみにこの東宣さんは映画館内・館外に吊るされる映画のバナー(横断幕)などの取り付け作業なども行ないますし、映画に関する小物を製作することもあります。記憶に新しい『6d』のキャンペーンで使用した“デュアル・モデル”という人形も、実はこの東宣さんでの製作でした。 映画館での看板の大きさは実は統一されていないので(各映画館での設置スペースに違いがある為)、ある作品がムーブオーバーして他の映画館で続映するという場合、同じ看板は使用出来ないことがほとんどです。従って、その映画館での上映が終了してしまうと、基本的には看板は回収され処分されてしまいます。 看板を製作するには約1週間はかかるので、“描く”という労力を考えると、非常に勿体無い気もします。更に、最近ではデジタルデータによりカラー出力された看板や、あまり大きな看板などを使用しない映画館(シネコンなど)が出てきました。また、一部の映画館では従来の公開中作品の看板スペースに先の新作映画の看板を“宣伝”として設置といったことを始めているので、従来よりも“映画の看板”に関する重要性が低くなってきているようです。 更に、これらの看板の製作費は、主要な映画館に対しては昔からの慣習で、各映画会社の負担になっているので、映画館側がポスターなどで十分に対応してもらえるのであれば、映画会社側はそれに越したことは無いというのが本音です。 いずれにせよ変わりつつある映画の看板ですが、有楽町マリオンの映画看板などは目立ちますし、新宿東口アルタ横の看板群などは壮観ですので、もしまだ観たことが無いという方がいたら是非観てみて下さい。映画看板の魅力を再認識出来るかもしれませんよ! |
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