口コミ

 皆さんが映画を観る作品を決める時、参考にするのは何でしょうか?大抵の場合、やはり夏やお正月映画などの大作のようにTVスポットがたくさん流れて、更に雑誌にも沢山紹介されているなどといった、とにかく良く目につく作品なのではないでしょうか?

 確かに映画を選ぶとき、何の情報もない作品を選ぶことはまずないですよね?タイトルも知っている作品で、誰が出ているどんな作品か、といった多少は知識のある作品を選択するはずです。ですから映画会社は、配給する映画を大ヒットに導く為にいかに広く一般に知らしめるか(認知させるか)ということを最大の課題として宣伝を行なっている訳なのです(まれに、一般に宣伝するよりマニアやファン層のみに宣伝した方が効果的という作品もありますが)。

 ですが、皆さんが本当に参考にするのはその映画の評判なのではないでしょうか?多くの場合、映画の情報をテレビや雑誌など、いわゆるマスコミ情報の中から得ている思います。しかしそれは積極的に映画の情報を得ようとする人にとっては効果的ですが、それ程でもない人にとってはただの一情報にしか過ぎません。これが友達や知り合い、家族などの非常に身近な人が実際に映画を観て来た上で、口から発せられる情報は、身近なものゆえにマスコミ情報よりも信頼に足るものになりえます。このような身近な一般の間で口から口へとその映画の評判が自然的に巻き起こっていく状況を俗に「口コミ」(口コミュニケーションの略)と呼んでいます。

 この口コミは映画に限ったものではなく、音楽や商品など様々な消費行動の局面で起こります。非常に効果があるので、現在は口コミを戦略的に重要視する会社も多いのです。それ故に口コミ現象が起こるような作品は本当の話題作ということになり、映画選びの重要な参考になります。だからこそ各映画会社は何とか口コミになるような話題を作ろうとそれぞれ宣伝に躍起になるのです。

 映画公開前に実施される一般試写会も、口コミをしてもらう為に実施されます。よく試写会でたくさんの人に見せてしまって良いのかと思われがちですが、試写を見た多数の人から、より多くの人たちへの口コミを期待している本当の理由です。口コミのメリットは、一度広がれば人から人へとどんどん伝わっていくということです。口コミは費用は一切かからない上に一般の方が自発的に行なってくれる“宣伝”なので、映画会社には良いことづくめな訳です。

 しかし全ての作品で口コミが発生するということはありえません。口コミになる作品にはある程度の共通項があり、やはり“作品の中身が良い”ものの場合が多いように思われます。やっぱり感動したり、面白かったりする中身を持つ映画は他人にも勧めたいと思うからでしょう。ちょっと前では『シックス・センス』('99)が衝撃のラストで口コミが広まりました。最近では中国映画『山の郵便配達』(01)がその内容の良さから口コミで広まっています。

 現在はインターネットの普及により、口コミは当初の身近な人の口から口へという長期的広がりから、不特定多数の人への短期的広がりへと変化をしてきています。インターネットは非常に口コミ向きの媒体なので、更なるネットの普及に伴い、本当の意味でインターネットからのヒット映画などが出てくる日もそう遠くはないかも知れません。「あの映画面白いよ!」とか「とても良い映画だから観に行った方が良いよ」といった口コミを広めて、次の大ヒット映画を生み出すのはあなたかもしれませんね。
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