映画の広告

 前回までにお話したパブリシティは、いわばお金がかからない広告でしたが、やはり映画(特に注目されるような夏や冬の大作映画など)を確実に大ヒットへと導く為には、お金をかけた広告というものが必要不可欠なものとなります。

 以前の豆知識でもお伝えした“TVスポット”や“新聞広告”は全国的な宣伝となり、最も費用がかかりますが、多数の人に映画を知らしめるという意味では効果も高いものになります。やはりテレビで一日中スポットが流れていたり、ドーンと新聞見開き全面広告などあればインパクトも大きいですし、こういう映画がこれから公開されるんだということを手っ取り早く多くの人に理解してもらうことが出来ます。しかしこのふたつだけで良いかというと、決してそのようなことはありません。これ以外にもいろいろな場所に広告を打ってその作品の認知を広めなくてはならないのです。こういった広告のなかで皆さんに身近なところでは“雑誌広告”があります。
 雑誌などに1ページ、あるいは見開き2ページぐらいの映画のビジュアルを使った告知を観たことはありませんか?これはパブリシティではなく“雑誌広告”と呼ばれるもので、費用をかけて打つ広告になります。雑誌広告を打つのは、主に発行部数がある(つまり読まれている&売れているということ)男性誌や女性誌、情報誌、映画誌などになります。それぞれの雑誌にひとつだけしか広告が無いなんてことはありませんので目立たせることは難しいのですが、手元に残るという意味では効果があります。ただ広告を入稿(原稿として提出)するのが雑誌発売日の約1ヶ月前ぐらいだったりするので、その段階で公開初日が決まっていないと広告に入れられないということもあります。

 他に良く打つ広告としては、“交通広告”と呼ばれるものがあります。これはJRや地下鉄などの駅の構内や車内の中吊などに広告を打つというもので、これもまた多くの、それも幅広い年令層に向けて映画をアピールすることが出来ます。車内の中吊りだけではインパクトはあまりありませんが、駅の構内の広告をジャック(占拠)するような形で広告が打たれていると(お金はかかりますが)かなりアピールすることが出来ます。最近では車体に広告がペイントされたバスなど走っていたりもしますよね。

 また、映画である以上、動く絵を見せた方がインパクトがあるのは当然なので、街頭ヴィジョンでスポットを流すなんてことも良く行なわれます。しかし、上記のようなことは各社大作の公開前には当たり前のように実施することなので、うまく差別化を計らないと埋もれてしまう可能性が大きいです。街頭ヴィジョンも、もはやただそこで映像が流れているだけでは全然インパクトがありません。ただ費用をかけるだけではなく、例えば、駅前などで複数の街頭ヴィジョンがあるようなところはそれを連動させて同時に同じスポットを流すという方法など、どうすればより効果があるのか?ということを考えていかなくてはいけないのです。
 とにかく広告は多くの人の目に触れるように目立たせること、そして様々なところで繰り返し目に触れさせることで記憶させ、そして初めて“観たい”という興味を抱かせることが出来るものなので、大量の広告だけでも駄目ですし、大量のパブリシティだけでも駄目です。広告で映画のことを知らしめて、パブリシティでその内容を補足説明するということが重要で、双方があって初めて多くの人が興味を持ってくれるのです。

 普段何気なく行動する日常生活の中で、もし同じ映画情報が様々な場所やシチュエーションで目にすることがあったとしたら、それはもう宣伝としては成功したと言えます(もっとも、それで興味を持ってもらわないといけないのですが)。今年の夏映画は軒並み大ヒットを記録していますが、『A.I.』や『パール・ハーバー』、『千と千尋の神隠し』、『PLANET OF THE APES 猿の惑星』など、広告もそうですが、パブリシティもかなり出ていましたよね。

 冒頭に述べたように、広告には費用がかかるので当然自社だけで打てるものには限界があります。それを補うものが、他社と組んで行なう“タイアップ”と呼ばれる広告の方法です。次回はこの“タイアップ”に関してお話したいと思います。
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