タイアップ

 前回お話したように、映画の宣伝(特に広告)には非常にお金がかかります。そこで各映画会社は自社のみの宣伝ではなく、他業種の会社と協力をすることで宣伝にかかる費用を抑えつつ、映画の宣伝をするという方法をとっています。これを通称“タイアップ”と呼んでいます。
 タイアップとは“結び付く”という意味ですので、当然、映画会社にとって効果があるだけでなく、タイアップする側にとってもメリットがなければ成立はしません(ドラマと主題歌の関係などはまさに理想のタイアップ関係ですよね)。つまり映画会社にとってはタイアップによって自社作品の露出の機会が増えて更にその幅も広げることができ、タイアップ先にとってはその映画のイメージによって商品などが売れる、という図式が映画におけるタイアップの理想形になります。

 夏や冬の大作映画は、自社でお金をかけた宣伝をするので一般の認知も非常に高くなり、タイアップがより成立しやすいのですが、通常の作品だとよほどメジャーな俳優などが出ていない限り、映画の知名度も一般には低く、タイアップの成立は難しくなります。

 タイアップ先は、ただ闇雲に探し求めるのではありません。映画のストーリーやイメージにあっているとか、主人公がその商品を使っているとか、映画の中にその商品が出てくるといった要素があれば、そこからタイアップ先を検討していきます。その方がタイアップ成立の可能性が強いからです。映画のエンディングロールをじっと見ていれば映画に協力・関係したメーカーのクレジットが出てきますが、これらの情報は概ねは(特に大きなものは)、映画が完成するまでに確実に情報として日本にも入ってくるので、それらを元にして早いうちから動き出していかなければ、大きな展開となるタイアップ成立は難しくなります。
 秋公開の『トゥームレイダー』を例にとってタイアップということを考えてみると、まずこの映画は元々がゲームなので、ゲームメーカー(PC版はアイドス・インタラクティブ、PS版はカプコン)とのタイアップが真っ先に成立しました。また映画の中でヒロインのララ・クロフトが乗る車としてランドローバー社の“フリーランダー”が登場するので、日本でも日本のランドローバー社とのタイアップが成立し、フリーランダーが貰えるというキャンペーンを実施しています。

 アメリカ公開時には“ペプシ”がタイアップをしていたのですが、ご承知の通り日本では早くから『PLANET OF THE APES 猿の惑星』での大々的なタイアップが決まってしまっていた為、残念ながらペプシと組んでの展開は出来ませんでした。(映画のTVスポット以外にもペプシのスポットが流れていましたよね? うまく成立していれば、『トゥームレイダー』のボトルキャップなんていう可能性もあったのです)

 しかしタイアップは、何もこのような大掛かりなものだけでは決してありません。試写会の告知や試写会場の費用を相手が負担してくれる代わりにこちらは映画をお貸しするという“タイアップ試写会”というものもあります。良く試写状や試写会に「○○○特別試写会」などと企業名などが入る場合があるかと思いますが、そういった試写会はここでいう“タイアップ試写会”になります。

 とにかくタイアップをうまく活用できれば、少ない宣伝予算でもパブリシティや広告以外でも大きな展開となって露出を稼ぐことが出来るので、映画のヒットの為にも非常に重要になってきます。ちなみに皆さんが日々利用されるであろう“コンビニ”に行くと、結構この映画がこんなタイアップ(最近では『PLANET OF THE APES 猿の惑星』のボトルキャップ、『ジュラシック・パークIII』のお菓子など)をしているな、ということを実感できると思いますが、これらはタイアップの部類としてはかなり大きなものになります。そのあたりを憶えておくと面白いと思いますよ!
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