プリント その2 “テレシネ”について

 前回は映画上映の為のプリントについて話を致しましたが、今回はそのプリントから派生して、ビデオやDVDのマスターがどのように制作されるのかということを、少し解説させて頂こうと思います。
 皆さんがビデオやDVDをご覧になられた時に一番に感じるのは、きっと映画館で上映されていた時より画質が“きれい”であるということではないでしょうか?

 それもそのはず、現在ビデオやDVD制作の元になるマスター・テープは、前回お話したインターポジの時点で“テレシネ”と呼ばれる変換作業を行なっているのです。だから劇場で皆さんが目にするプリントの時より、きれいな画質で映画を楽しめるのです。

 但し、昔の作品でインターポジが見つからなかったり、保存状態が良くない場合など、インターネガや劇場公開プリントからしか“テレシネ”が出来ないというケースもあります。このような場合には当然画質のクオリティはインターポジからのものより下がってしまうことになります。
 この“テレシネ”と呼ばれる作業は、プリントの情報をビデオ信号に変換して映像を収録すること。ビデオやDVDを制作する上で一番最初の取り掛かりとして、非常に重要になります。多くの場合にはインターポジの時点から、画質をほとんど落とすことなく収録できるHD(ハイビジョン)フォーマットに“テレシネ”をします。

 このHD(ハイビジョン)という言葉は、皆様も耳にしたことがあるかと思います。単純にビデオやDVDなど、全ての元になる最上位マスター素材という認識を持って頂ければと思います。売り文句として“HDマスターからの収録”とあれば、画質としては非常にきれいだと考えて差し支えないと思います。

 HDの中でもHD-D5と呼ばれるフォーマットが、現在アメリカでは主流。発売されているビデオやDVDは、ほとんどがこのHD-D5を大本のマスターとしています。画像情報の圧縮率が他のフォーマットと比べて非常に低いので、画質がほとんど落ちないのです。
 ちなみにBSのWOWOW放送などでは、このHD-D5がマスターとして使用されています。通常はアメリカできちんとHDを制作しているので、日本でわざわざHDテレシネをするということはほとんどありません。しかし、たまにHDマスターが制作されていない作品があると、日本でHDテレシネをインターネガなどから行なうこともあります。弊社で近々発売される中国映画『山の郵便配達』(01)の場合がそうでした。

 ほとんどの場合、HDはビデオやDVDの根本的なマスターであることに間違いありませんが、厳密に言うと実際のマスター素材は、そのHDマスターからダウンコンバートという作業を経て制作される“デジタルベータカム”が、それぞれのマスターになります。
 ビデオとDVDでは画面サイズが異なるので、ビデオは“4:3スタンダード”、DVDだと“16:9スクイーズ”がそれぞれのマスターとなっています。共にHDとは同等の画質という訳には行きませんが、デジタル信号で処理しているので、それほどの劣化がない形になっています。
■画面サイズに関してはDVDの用語(2)を参照
 最後にご参考までですが、ここ最近“デジタル・リマスター”という表現を聞くと思います。これは昔の作品を“テレシネ”してビデオ信号に変換することをいいます。

 フィルムの傷やゴミなどの画面のノイズ部分を、“パラ消し”と呼ばれるデジタル修正作業で丁寧に取り除き、色調などを調整。出来る限りきれいな画質で現代に甦らせるのです。全ての傷やゴミを取り除くのは、かなりの時間と費用を要しますが、新作同様ではないにしても、過去の映像よりきれいな画質で映画を観ることが出来るのです。これもひとえに技術の進歩がなせるワザですね。
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