字幕の豆知識 その2

 以前、このコラムで“字幕”に関して取り上げましたが、最近また字幕に関するお問い合わせを幾つか続いて頂きました。そこで今回は、以前触れていなかったことに関してお話したいと思います。
 劇場公開時には“手書き文字”の字幕が使われていますが、ビデオ&DVDには“活字”字幕が使われていることにお気づきの方は多いのではないでしょうか。通常、劇場公開時の映画本編は、コストが安い等の理由により、“パチ打ち”つまり手書きの字幕を直接フィルムに焼きこんでプリントします。

 ビデオ&DVDは、劇場公開時に翻訳した字幕台本を元に、制作者が翻訳者に了承を得た上で、誤字・脱字や表現を訂正します。その上で、ビデオ&DVD共通の字幕データ(TIFF等のファイル形式)を作成するのです。そのため、劇場公開時の字幕とビデオ&DVDの字幕が違うということが起きるのです。
 ビデオ&DVD制作の際に使用する字幕は、決してあらたに翻訳し直したというものではなく、劇場公開の時のものを転用しています。字幕翻訳者には“2次使用料”を別途に支払って、ビデオ&DVDに使用させて貰っていることになります。

 海外から到着したノー・スーパー・プリントへ翻訳して字幕を入れるのは、非常に短期間のうちに突貫作業で行われます。そのため、誤字・脱字のチェック漏れや、差別用語など表現的に不適切なものが、そのまま使用されていることもあります。
 しかし、この一番最初に映画本編に字幕が入った“初号プリント”が、そのまま劇場公開プリントに使われるのではありません。関係者及び翻訳者が同席して“初号試写”が行われ、映画を観賞しつつ字幕のチェックをして、もし間違いがあれば大抵はこの段階で修正が行われます。しかしながらチェックされた劇場公開プリントに問題がないはずでも、100%完璧というのは難しく、上映時に誤字・脱字がみつかることがあるのです。
 中でも特に専門用語が頻繁に出てくるような映画では、細心の注意を払わないと、字幕が間違っているなど指摘されてしまう事が起きるようですね。しかしながら、以前お話したように、人間が一度に読みきれる文字数には限度があります。字幕は簡潔さを心がけなくてはならず、映画のリズムを壊すことなく、テンポも良くなくてはいけない訳で、これは結構大変な作業ですよね。

 最近上映される大ヒット映画には、大体日本語吹替版が存在していて、子供だけでなく若いカップルが日本語吹替版で観賞している姿が見られるそうです。やはり字幕を追う必要がなく、映画に集中できるということがその大きな理由でしょうね。しかしながら、普段はあまり気にもとめない字幕も、興味を持ってみると結構奥が深く魅力的なものだと思います。皆さんにもこれを機会に字幕に興味を持って頂ければ幸いです。


■お詫びと訂正
5月23日(木)にアップいたしました記事内容が、事実とは異なるとのご指摘を読者の方々より頂きました。5月27(月)よりコラムを一部訂正し、再掲載いたしました。ご迷惑をおかけいたしました読者の皆様ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。
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