DVDの制作&製造(2) |
前回は、DVDの制作過程において重要であるエンコード&オーサリング作業が終わり、DLTが完成するところまでをお話させて頂きました。今回は後半と致しましてそれ以後、どのようにして製造まで行くのか、ということを説明させて頂きます。 |
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■エミュレーション&プルーフディスク~そして製造 |
完成したDLTを元に、ラボ以外の人間(発売元メーカーの制作スタッフ等々)がエミュレーションと呼ばれる確認チェック作業を行います。前述した通りでDLTとはDVDの形状をしているものではありませんが、擬似的にDVDプレーヤー上のように、エンコード&オーサリングしたものを再生することが出来るので、メニュー画面の動き、特典映像、本編の画像&すべての音声が間違いがなくきちんと収録されているかどうか、丸1日もしくは2日かけて、実際に見聞きして確認致します。 |
メニュー画面や特典映像などはそれほどボリュームが無い(凄い量の特典映像もありますが)ので、比較的短時間でチェックが完了します。ただ本編に関しては、字幕や音声を変えて概ね最低でも4回ぐらいは同じ本編を見なくてはなりませんので、実はかなりキツイ作業だったりするのです。皆さんはあまり経験がないと思われますが、仕事とはいえ、まあ字幕や音声を変えて観るとはいえ、同じ映画を1日に2回以上続けて観るのは、たとえどんなに大好きな映画であってもツライものです。ましてやそれがあまり面白くもない映画であれば苦痛にもなるでしょうね。 しかし、この部分でしっかりチェックをして行ないと、商品が出回ってから不具合が見つかるといったある意味最悪の事態を招くことになりますので、このエミュレーションとは、ある意味でDVD制作過程において、最重要かつ本当に集中力&根気が必要になる作業といえます。 |
しかし人間がチェックする訳ですから、それでもチェック漏れが起こり得ることは否めません。最近では、『ブラックホーク・ダウン』DVDでdtsのリア音声LとRが逆に収録されていたり、『七人の侍』DVDで本編に同じカットが二度収録されていたことなど、ミスが相次いで発覚致しました。それらは恐らくエミュレーション時点でも気づかなかったということだと思います。ただこれは対岸の火事ではなく、DVDという商品の性質上いつ我が身に降りかかってくるか分かりませんので、各メーカーにとっては本当に考えさせられる“教訓”になりました。 このエミュレーションが終了した時点で何も問題が無ければ、そのままこのDLTからマスタリングと呼ばれる最終調整作業を行い、DVDを量産製造する為のマスターが完成します。そしてそのマスターを元に、製造作業に入る前、ラボからメーカーに対して“プルーフディスク(検証ディスク)”と呼ばれる、盤面に何も印刷されてはいないDVDが若干数製造・発送されます。 |
メーカー側は、各自所有のDVDプレーヤーにて“DVDソフト”として最終的な動作確認をして、このまま製造して良いかどうかの最終承認をラボに対して出します。このプルーフ時点でまずNGが出ることはないのですが、ごくたまにエミュレーションで見過ごしたミスが発覚したりすることもありますので、その場合にはNGとして再度エンコード&オーサリング部分から修正の上でやり直すということになってしまいます。 一方同時に、ラボ側でもそのプルーフ時点でエミュレーションでは何も問題が無かったが~社のDVDプレーヤーで再生すると不具合が起きるといった、DVDならではのいわゆる“相性”の問題で不具合が起きないかどうかラボ所有の各社プレーヤー(ラボによってもまちまちですが当然市販の全ての機種という訳にはいきませんので、各社の代表的な機種とPS2&X-BOXなどの特殊タイプということが多いようです)で検証テストを行ない、問題が起きないかどうかの確認をすることになっています。当然、その際かなりの不具合が生じるなんてことがあれば、当然エンコード&オーサリングからやり直しとなります。 |
上記のような最終のプルーフチェックでOKが出て、初めて製造作業(プレス作業)がスタートします。そして、工場でプレスされたDVDとケースやジャケットなどの資材がアッセンブルされてDVD商品として出荷され、各店頭に並び、皆さんの手にようやく渡るという訳なのです。その後も、まあ前述のようにそれから不具合が発覚なんてこともありますので、DVDはメーカーにとっては本当に最後の最後まで気が抜けない存在ですね。 いまはPCにてDVDを制作することが出来る時代ですので、そのようなPCをお持ちの方であればエンコードやオーサリングなどの作業というものがどんなものかは想像し易いかと思いますが、一般の方にはあまり馴染みのない世界だと思います。しかし、そのような方達にも映像ソフト商品としてDVDを制作&製造していくプロセスを理解して頂ければ、今よりは少し、DVDというもの対して知識を深めて頂けるのではないでしょうか。少しでも参考になれば何よりです。 |
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