エアライン

 今回のテーマである“エアライン”とは、その名の通り「飛行機」のことを意味しています。なぜ映画と飛行機が結びつくのか、あまり飛行機(国際線)をご利用にならない方には馴染みは薄いかもしれませんが、良くご利用される方にとってはすぐに“機内上映”ということでご理解頂けるのではないかと思います。

 そもそもこの機内上映とは、長時間のフライトでの乗客向けサービスとして行なわれているものですが、旧作ではなく、むしろ最新と言って良い映画が劇場公開とほぼ同時期(といっても最低限、劇場公開から1ヶ月ぐらいはウインドウ<保護期間>を設けていることがほとんど)に観賞できるのが一番大きなメリットだと思います。

 いくら最近、ビデオ&DVDの発売までのウインドウが短くなってきているとは言え、どんなに早いものでも公開から4ヶ月ぐらいということを考えると、映画館以外の場所で、しかもビジネスあるいは旅行のために利用する飛行機の中で最新作が観られるというのは、映画ファンの利用者にとって非常に嬉しい付加サービスのはずです。
 他にも映画館以外で映画を観られるという点では、一部ホテル等でのVOD<ビデオ・オン・デマンド>サービスのようなものもあります。ただ、VODなどは基本的にビデオ&DVD発売以後のサービスになるので、機内上映ほど早いタイミングのものは他にありません。

 プラス、そのサービスは日本のJALやANAなどの航空会社だけではなく、日本に乗り入れている他国の航空会社でも行なわれているため“吹替版”で上映されることがほとんどです(吹替版ならチャンネルを切り替えるだけで複数の言語に対応できますからね)。したがって、各航空会社の選定(※注)により自社作品がエアラインで上映されることが決まった場合、通常よりも早い段階で日本語吹替版を制作する必要性が出てくるのです。

 JALやANAなどの日本の航空会社との契約であれば、日本の映画会社側でコントロールされているので、確実に日本国内の劇場公開よりも早いタイミングでその映画が機内上映されるということはまず有り得ません。

 でもこれがアメリカ本国からの依頼だった場合(つまりアメリカ側で他国籍航空会社と契約して、日本語吹替版が必要になった場合)には、その映画の公開時期にアメリカと日本でズレ(2~3ヶ月とか半年、もしくは1年)があると、日本の劇場公開前に機内上映のための吹替版が制作され(ここまでは結構あります)、場合によっては機内上映されるということも十分起こり得ます。
 うまくそういうケースの作品を機内上映で観賞するチャンスを得た方は、日本公開よりも前に吹替版でその映画を観ることが出来てラッキーだったということになる訳です。もちろん、字幕の方が良いという方もいらっしゃるかもしれませんが、飛行機内でリラックスして観賞するという意味では画面に集中できるので、むしろ吹替版の方が良いのではないかと思います。

 なお、この機内上映のために制作した日本語吹替版は、コストの面からも特別な場合を除き、その後のビデオ&DVDの日本語吹替版にそのまま使われることがほとんどです。ですから、もし機内上映の際の吹替版を気に入ってもう一度観たいという方は、ビデオ&DVDの吹替版をご覧になって頂ければ良いかと思います。


(※注)選定基準:一例ですが、飛行機が落ちるシーンがあるものなどは論外ですし、暴力&残酷描写などが激しいものに対しても厳しいようです。ただ、そういう内容を含んでいても、その作品が話題作のためにどうしても上映したいという場合には、独自に該当箇所にカット等の編集作業を行なった上で上映されることになるようです。
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