未公開作品

 正確な公開本数は私にも分かりませんが、各映画会社が劇場公開をする小規模の映画から全国的に大規模に拡大する映画まで全てをまとめれば、恐らく年間数百本は間違いなく劇場公開されていることになると思います。

 以前の項目でもお話させて頂きましたが、映画に関しては劇場で公開するしないということが、少なからずビデオ&DVD、あるいはそれ以降の権利運用ビジネスにおいて影響をもたらすことになります。仮に公開されているのをほとんどの人が知らないぐらいのレベルでも、劇場公開されていれば“劇場公開作品”という謳い文句を嘘偽りなく使用できる訳ですから、映画会社は当然のことながら、まずは劇場公開を念頭において映画を買付ける訳です。
 しかしながら、なかには数本の作品とのパッケージでの買付けを迫られるシチュエーションなどもあり、目玉作品を獲得する為に“抱き合わせ”的に買付けせざるを得ない作品があったるすることもあります。またパッケージでの買付けでは無い場合でも、その会社との契約上や付き合いにおいて欲しくない作品が“舞い込んでくる”ことがあります。

 勿論、そういう場合のそれらの作品が全て悪い作品、つまり興行的価値が無いという訳ではないのですが、もしそういった中の作品で、日本での公開が厳しいと判断した場合には“未公開作品”として劇場での公開は見合わせて、“ビデオストレート”と呼ばれる形でビデオ&DVDにおいて初めて、一般の方たちの目に触れるという方法をとることになるのです。
 レンタルビデオ店の棚には、勿論メインとなる話題作を中心として劇場公開されたタイトルが約7~8割を占めていますが、それでも残りはタイトルを聞いたこともない未公開のビデオストレート作品が占めているのを皆様お気づきではないでしょうか?

 なかには、かなり有名な役者や監督の作品なのに未公開のものもあるので「あれこれって公開してなかったんだっけ?」という感じです。未公開=すべてC級以下の作品、という認識は誤りです。なかにはかなりの掘り出し物的な作品もあります。公開したくとも、うまく公開出来る劇場がタイミング的に見つからなかった為というケースもあるかもしれませんからね。
 しかしながら、その多くが興行的にいって、ある程度の採算も見込めない作品であることもまた事実だと思います。どんな映画だろうが劇場公開する以上は、最低限の宣伝費はかけなくてはなりませんから、それなのにフタを開けたらお客さんが数人しか来なかったではシャレにならないので、宣伝費をかけてマイナスになるぐらいならば、いっそのこと公開をしないという判断は当然正しいのです。しかしながら、いざ公開はしたもののヒットはほとんどせず、ビデオの為の公開<=宣伝>とも言えるケースが実は結構多いような気が…。

 ジャンル的には特に、アメリカのコメディ映画なんかは、どんなにアメリカで大ヒットしようが、ユーモアの感覚が異なる日本人には全くウケないということが多々ありますから、特に未公開になる可能性が高いですし、その他のジャンルでも俳優や監督などそのほとんどのスタッフ&キャストが無名で、なおかつ中身に面白みが無いとなれば、やはり未公開になる率は高いと思います。それでも各社は何とか劇場公開の道をとりあえずは考えるんですけどね。“化ける”作品も、ごく稀にありますから。

 当然未公開作品はビデオでしか見ることが出来ないので、もし話題の作品が借りられていて観ることが出来ないという時には趣向を変えて、普段はまず見ないであろう未公開作品の中から、興味を引かれるものがないか探してみてはいかがでしょうか?もし仮に“ハズレ”の作品にあたってしまっても、投資は少ないですし、中にはなかなかに面白い作品も紛れていますから…。
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