■あの『タイタニック』も40年前の巨編『ベン・ハー』を越えられず! | ||||||||
97年に『タイタニック』がアカデミー賞11部門でオスカーを獲得したのを覚えている人も多いのでは?ところが40年も前にその偉業を成し遂げた作品がある。その作品が『ベン・ハー』だ。取った賞の数は実は『タイタニック』と同じ11部門。でも、『ベン・ハー』の持つスケールや様々な記録はいまだ破られていない。
構想10年、総製作費は当時で54億円、セット製作2年、撮影6年6ヶ月、エキストラを含めた出演者は総勢5万人、70ミリ(通常の劇場映画は35ミリで撮影される)フィルムで撮影されたこの作品は、どれをとってもまさに圧巻の一言に尽きる。監督は『ローマの休日』('53)や『コレクター』('65)などの巨匠ウィリアム・ワイラー。撮影は『卒業』('67)、『スティング』('73)などのロバート・L・サーティースが担当した。 主人公のベン・ハーと宿敵メッサラが、大闘技場で数万人の観客が見守る中、大戦車競争で火花を散らすクライマックス・シーンは映画学校で編集や撮影のテキストにもなっているくらい完成度が高い。約20分のこのスペクタクル・シーンのために、ローマに1周460mの競技場の巨大なセットが作られた。その後4ヶ月のリハーサルののち、3ヶ月かけて丁寧に撮影されていったという。劇中、ベン・ハーが暴走する馬に飛び乗り、馬の腹の下をくぐって馬車の操縦席に移るシーンがある。主役のチャールトン・ヘストンに代わり非常に危険なこのアクションをこなしたのが、ジョー・カナット。『駅馬車』('39)でジョン・ウェインの代わりを務めた名スタントマン、ヤマキ・カナットの息子だ。 『ベン・ハー』の素晴らしさは単にアクション・スペクタクルだけにとどまらない。もともとこの作品のタイトルは『BEN-HUR A Tale of the Christ』となっている。つまり、イエス・キリストの物語がその根底に流れているのだ。主人公ユダ・ベン・ハーが歩む苦難の道は、キリストによる救済のドラマと重なって観る者に深い感動を呼び起こす。 ルー・ウォレスのベストセラーをもとにして作られた本作は、27年にモノクロで1度映画化されている。だが有名なのはやはり59年製作のこちらの作品だろう。結果として、第32回アカデミー賞受賞式でオスカー11個を獲得するという快挙を成し遂げた。
【ストーリー】 そんなとき、戦闘中に司令官アリアス(ジャック・ホーキンス)の命を救ったおかげで彼の養子となる。ベン・ハーはローマ第一の剣闘士・戦車操者としてユダヤに戻る。ところが、故郷で愛する恋人エスター(ハイヤ・ハラリート)から、母(マーサ・スコット)と妹(キャシー・オドネル)がらい病に冒され、メッサラの手で死病の谷へ送られて死んだと聞く。ベン・ハーは怒りに燃えて、再びメッサラへの復讐を誓う。 エルサレムとローマが競う大戦車競争に出場したベン・ハーは、卑怯な手段を使うメッサラを破って優勝する。死の間際、メッサラはベン・ハーに母と妹が死病の谷で生きていると告げる。ちょうどその頃、イエスが十字架を背負って刑場へ向かっていた。イエスの処刑を目のあたりにしたベン・ハーは、すべての憎しみが消えるのを感じる。そして奇跡が起こる……。 |
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■ 世紀の超大作に出演した名優チャールトン・へストン | ||||||||
ヘストンは若い頃はブロードウェイなどで活躍、またTV草創期だった時代に大役をつかんで評判を得るようになった。その後セシル・B・デミル監督に気に入られて、大作『十戒』('56)でモーゼ役を演じることになる。デミルは"ミケランジェロの彫刻にある聖書の人物にそっくりだったので彼をモーゼ役に選んだ"と語る。神聖な顔つきが向いているのか、聖書を題材にした作品や大作に抜擢されることが多く、『ベン・ハー』の主演でオスカーを手にしたことによりそれを決定的なものにした。以来、ヘストンはこういったスペクタクル映画には欠かせない俳優となる。彼の私生活は至って穏やか。人望も厚く、スクリーン・アクターズ・ギルド会長も歴任している。
チャールトン・ヘストン プロフィール:24年10月4日イリノイ州エヴァンストン生まれ。映画デビュー作は『虐殺の街』('50・未)。他の出演作に『地上最大のショウ』('52)、『猿の惑星』('68)、『大地震』('74)、『トゥルー・ライズ』('95)などがある。『アントニーとクレオパトラ』('71)では出演のみならず監督、脚本も兼ねている。最近作はアル・パチーノ主演の『エニイ・ギブン・サンデー』('99)。 |
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今さら人に聞けない名作 アーカイブ 『ベン・ハー』