PETER STORMARE
 ■演出も役者も音楽も出来る、才能溢れる演技者ピーター・ストーメアのすべて

 35歳を過ぎてから本格的に映像界に進出を果たしたピーター・ストーメア。遅咲きと思う人もいるかもしれないけれど、舞台では華やかなキャリアを持つベテラン俳優。最近の映画では『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)や『ショコラ』(01)など話題作に出演し、豊かな才能を披露している。そんなストーメアの魅力のすべてに迫ります!
 53年8月27日、スウェーデンのアルブラ生まれ。本名ピーター・ロルフ・ストーメア。スウェーデン表記はペーター・ロルフ・ストルマーレ。イングマール・ベルイマン監督率いるスウェーデン王立劇場で演技を学び、11年間舞台俳優として活躍。88年、東京グローブ座のオープニング・フェスティバルでベルイマン演出の「ハムレット」の主役を演じて絶賛される。脚本も兼ねた「The Electric Boy」、「El Paso」や、ニューヨーク・アクターズ・シアターで「令嬢ジュリー」などを演出。90年にも東京グローブ座にて「夏の夜の夢」、「間違いの喜劇」、オペラ「ハムレット」などの舞台演出家として活躍する。スウェーデンと日本向けにラジオドラマの演出もしていた。映画は、まずスウェーデンで『Malarpirater』('87) などに出演。その後、ペニー・マーシャル監督の『レナードの朝』('90)で本格的にハリウッドへ進出。
 ジョエル・コーエン監督の『ファーゴ』('96)で、エキセントリックな役柄を巧みに演じて高い評価を得る。この後、スティーブン・スピルバーグ監督の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』('97)をはじめ、マイケル・ベイ監督の『アルマゲドン』('98)、ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)、ヴィム・ヴェンダース監督の『ミリオンダラー・ホテル』(01)などに出演。現在の主な活動の拠点はスウェーデンとアメリカ。祖国スウェーデンではスターの位置を不動のものにしている。先妻カレン・サイラスとの間にケリーという娘がおり、現在は日本人の妻、年美と娘と共にロサンゼルスに暮らしている。


■VIDEO&DVDでチェック!ストーメアの演技力
変わり者から学者まで、様々な役柄を巧みに演じるストーメアの才能を作品でチェック!
 一風変わった外国人からお堅い学者まで、どんな役でもこなしてしまうストーメアのカメレオン俳優ぶりを、このコーナーで徹底チェック!


■『ダンサー・イン・ザ・ダーク』 (00)
発売元:松竹、アスミック
販売元:松竹ビデオ事業室
価格:¥5,800(税抜・DVD)or レンタル
2001年6月21日(木)セル&レンタル開始

カンヌ映画祭パルムドール受賞作。チェコからアメリカに渡ってきたセルマ(ビョーク)は女手ひとつで息子を育てながら工場で働いていた。友人たちに支えられつつも彼女には誰にも言えない秘密があった。次第に目が見えなくなるという病気を抱え、息子も同じ運命を辿りつつあるのだ。息子に手術を受けさせるため、懸命に働くセルマ。しかし貯めておいた手術代が盗まれ、事態は思いも寄らぬ方向へと走り出す…。ストーメアはセルマに想いを寄せるジェフ役を静かに演じている。
(C)ZENTROPA ENTERTAINMENTS4、TRUST FILM SVENSKA、LIBERATOR PRODUCTIONS、PAIN LIMITED、FRANCE 3 CINEMA & ATRE FRANCE CINEM
■<映画のモトを大調査!>音楽がなきゃ、映画じゃない!/ビョークの場合>> http://www.eigafan.com/trival/reseach/2001/moto03/main.html


■『レナードの朝』('90)
発売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
価格:¥3,800(税抜・DVD)or レンタル

実話に基づいたオリバー・サックスの同名ベストセラー小説の映画化。嗜眠性脳炎によって、30年もの間半昏睡状態で精神病院に入院しているレナード(ロバート・デ・ニーロ)。そんな彼に研究畑一筋だった新任医師のセイヤー(ロビン・ウィリアムズ)は他の病気のために開発された新薬を投与する。30年ぶりに奇跡的に目覚めたレナードは生きる喜びをかみしめるが…。ストーメアは端役だが重要な神経化学者の役を演じ、この映画でハリウッド進出を果たした。


■『8mm 』('99)
発売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
価格:¥3,800(税抜・DVD)or レンタル

『セブン』のアンドリュー・ケビン・ウォーカーの脚本を映画化したショッキング・サスペンス。私立探偵のトム・ウェルズ(ニコラス・ケイジ)は、ある婦人から富豪の夫の遺品で少女の殺害シーンを収めた8ミリフィルムについての調査を依頼される。調査を進めるトムはやがてハリウッド・ポルノの闇市場へと辿り着く。真実を掴んだトムは自ら危険を冒し、自身の正義を貫くのだが…。ストーメアはスナッフ・フィルムを監督したと思しき映画監督ディーノ・ベルベッドを怪演している。


■『ファーゴ』('96)
発売元:アスミック・エース
価格:¥4,700(税抜・DVD)or レンタル

ノースダコタ州ファーゴ。多額の借金を抱えるジェリー(ウィリアム・H・メイシー)は前科者のカール(スティーブ・ブシェーミ)とゲア(ストーメア)に妻を偽装誘拐させ、自動車業界の大物である義父から身代金をだまし取ろうと計画する。しかし、狂暴な二人組は計画外の殺人を始めてしまう。妊婦の女警察署長マージ(フランシス・マクドーマンド)は証拠を丹念に追及し、ようやく犯人を突き止めるが…。ストーメアは誘拐犯ゲア・グリムスラッドを不気味に演じ、注目を浴びた。
(c) 1996 PolyGram Film Production BV
■<話題のビデオ&DVDをチェック>話題のオスカー作品を知って映画通になろう!『ファーゴ』> http://www.eigafan.com/dvd/index.html


■『アルマゲドン』('98)
発売元:パイオニアLDC
価格:¥4,700(税抜・DVD)or レンタル

ブルース・ウィリス、ベン・アフレック出演の大ヒット作。小惑星が地球に接近し、衝突すれば確実に地球は消滅するというニュースが飛び込んできた。回避する方法はただ一つ、核爆発を起こして軌道を変えるのだ。ミッション遂行のため選ばれたのは6人の宇宙飛行士と8人の石油採掘のプロフェッショナルたちだった。終焉へのカウントダウンの中、彼らは全人類の希望を背負い、宇宙へと飛び立つ…。ストーメアはシャトルを間一髪で救うロシア人宇宙飛行士レヴ・アンドロポフを演じた。


■『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』('97)
発売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
価格:¥3,800(税抜・DVD)or レンタル

スティーブン・スピルバーグ監督による人気シリーズ第2作目。絶滅したはずの恐竜が、秘密の遺伝子工学研究所で放置されている間、新たな生態系で自然繁殖していたらしい。数学者のマルコム(ジェフ・ゴールドブラム)率いる生態観測チームが送り込まれるが、そこには想像を凌ぐ恐るべき野生恐竜たちの猛威が待ちうけていた…。ストーメアは恐竜ハンターの助手スタークを演じ、悪役に徹している。待望の続編『ジュラシック・パーク3』は今年夏の公開予定。


■『ビッグ・リボウスキ』('98)
発売元:アスミック・エース/東芝デジタルフロンティア
販売元:パイオニアLDC
価格:¥4,700(税抜・DVD)or レンタル

ジョエル&イーサン・コーエン兄弟のヒット作。ジェフ“デュード”リボウスキ(ジェフ・ブリッジズ)の家にある日突然、借金を返せとチンピラがやってくる。彼らはデュードを同姓同名の大金持ちと間違えたのだ。頭に来たデュードはボウリング仲間のウォルター(ジョン・グッドマン)とドニー(スティーヴ・ブシェーミ)に事の顛末を話し、富豪リボウスキの大邸宅に乗り込む。しかし、それが大災難の始まりだった…。ストーメアはおかしなニヒリスト役を演じて笑いを誘う。


■『ハミルトン』('98)
発売元:クロックワークス
価格:¥15,800(税抜)or レンタル

ストーメアがスウェーデンで主演し、好評を博した作品。ロシアの核ミサイルがテロリストの手によって盗まれた。ミサイルはフィンランドとスウェーデンを経由して中東に密輸される可能性が。特殊部隊のエリート中佐カール・ハミルトン(ストーメア)は、部隊を率いて核兵器奪回作戦を遂行する。しかし、彼らが始末した密輸団は囮にすぎず、ミサイルはスウェーデンを通過してしまう。消えた核ミサイルの行方を追って、ハミルトンとテロリストたちとの非情な闘いが始まった…。


■その他の出演作品
『不法執刀』('97)、『ゴースト・アウトローズ』('99)、『ダメージ』('92)


■最新映画でチェック!ストーメアの新境地
不思議な魅力に思わず引き込まれる…そんなストーメアの新作での役柄は?
 ストーメアの新作は、『ベルリン/天使の詩』('87)などのヴィム・ヴェンダース監督作品『ミリオンダラー・ホテル』。ロサンゼルスにある“ミリオンダラー・ホテル”を舞台に、知的障害者のトムトム(ジェレミー・デイヴィス)とエロイーズの愛の行方を、殺人事件の捜査や怪しげな美術品売買の話と絡めつつ、悲しくも切なく綴ったラブ・ストーリー。FBI捜査官スキナー役にメル・ギブソン、パンク女ヴィヴィアン役にアマンダ・プラマー、画商テレンス・スコービー役にジュリアン・サンズなど、そうそうたる顔ぶれが揃っている。原作は世界的人気ロックバンドU2のボーカル、ボノが長らくあたためていた企画をヴェンダース監督が映像化した。

 ストーメアは、元ビートルズの一員でメンバーに虐待され捨てられたと思い込んでいるディキシー役を演じている。ストーメア自身はこの役に対して、「ディキシーは過去に生きているんだよ。彼の現実は空想の中にあって、自分はビートルズのメンバーで、ビートルズの曲を書いたと信じ込んでいるんだ。奴は幸せな男で、まさに“フール・オン・ザ・ヒル”といった感じのはぐれ者なんだ。居場所もなく、珍種の男なんだね。そういう幸せなところとか、そこまで思い込めるっていうのは、逆に僕にはうらやましいね」とコメントしている。
(C)1999 Road Movies Filmproduktion,GmbH Berlin All rights reserved.
 ヴェンダース監督がこの映画で好きなシーンのひとつに、ディキシーがピアノを弾く場面をあげている。「ディキシーは自分がビートルズの一員であり、ほぼ全ての曲を書いたと信じているという人物。ちょっと頭がおかしいふうに見える彼が静かにピアノを弾く場面はとてもエモーショナル。現場にもある種宗教的な雰囲気が漂っていた。今でもそのシーンを思い出すたびに背中がぞくっとして、鳥肌が立ってしまうくらい」と語っている。

 また、ラッセ・ハルストレム監督、ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップと共演、アカデミー賞5部門にノミネートされた『ショコラ』(00)がまもなく公開。ストーメアは、レナ・オリン扮する妻ジョセフィーヌに暴力を振るう夫セルジュ・ミュスカ役を演じている。ビノシュ扮するヴィアンヌ・ロシェの娘、アヌーク役のヴィクトワール・ティヴィソルは、ストーメア演じるセルジュが部屋に侵入する場面が最も面白く、また、壁に背中を押しつけられて話す場面が最も大変だったと語っている。ティヴィソルは『ポネット』('96)で3歳で主役のポネットを演じた天才子役。

 このほかの新作に、ジョージ・A・ロメロ監督のスリラー『Bruiser』(00)、ジョン・ウー監督の『Windtalkers』(01)、アレキサンダー・ロックウェル監督、スティーブ・ブシェーミ出演のコメディ・ドラマ『13 Moons』(01)、ブラッド・レンフロ、ドミニク・スウェイン出演のコメディ『Happy Campers』(01) 、スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演のSFサスペンス『Minority Report』(02)などがある。


■ここもチェック!?ストーメアのあれこれ
作品とコメントに見る、ストーメアの才能とは?
 スウェーデン人でありながら、アメリカ人やロシア人の役も難なくこなしてしまうストーメア。英語も流暢に話せる彼は、多くの映画監督や共演者からお気に入りの俳優として注目されている。フィルモグラフィーを見ると最近の話題作に彼の名が載っていることが少なくない。どの役?と聞かれてよく見ると、演じる役があまりにも多彩で驚いてしまう。

 母国スウェーデンで舞台俳優として厳しい訓練を10年以上も積み、その才能が買われて映画界からも引く手あまたのストーメア。実際、彼は俳優だけでなく脚本家、美術家、舞台演出家でもあり、果ては音楽までも作ってしまうという才能の持ち主だ。
(C)1999 Road Movies Filmproduktion,GmbH Berlin All rights reserved.
 彼が日本でも俳優として舞台に立ったり、また舞台演出しているのを知っている人もいるかもしれない。シェイクスピアの「真夏の夜の夢」を演出した際は、歌舞伎をイメージしたメイクや着物を思わせるような衣装などを取り入れ、あえて日本的なものに近い舞台を作り上げるよう工夫したという。演出をする時、彼は単に観るだけでなく、観ているものを経験して欲しい、と語っている。

 ストーメアは舞台のみならず映画の中でも、“観ている”というより、こういう人物が実際いるのではという“経験”をさせてしまう役者。これは彼が、ストーリーにとってその人物がどの程度の重要さなのかをわきまえていて、実際いてもおかしくないような人物として自分のものにしてしまうから。こうしたリアルな演技や表現方法は一朝一夕に出来るものではない。ストーメアが長年の舞台生活、演技経験で培ってきたものなのだろう。

 ヴィム・ヴェンダース監督は、『ミリオンダラー・ホテル』で、始め彼をディキシー役にしようとは考えてはいなかったという。それどころかどの役にするかも決めていなかったらしい。「彼のことがとても気に入ってしまって、どうしても僕の映画に出て欲しくなったんだ。問題はどの役にするかだったんだけれど、ピーターはビートルズとジョン・レノンの大ファンで、ディキシーというキャラクターが大好きだった。彼の中ではディキシー役をやると決めていたんだね」結局ストーメアは、ディキシーというちょっと変わった放浪者のような役柄を見事な存在感で演じている。これ以上ないというくらいはまっていて、彼がディキシーそのものに見えてしまうくらいだ。

 ディキシー役に限らず、どの役も彼でなければ出せないような微妙な存在感を放ち、しかも決して違和感を感じさせず、観るものを惹き付ける。彼が今後どんな役を演じるのか、注目したいところだ。
■eigafan.com おすすめ映画:『ミリオンダラー・ホテル』> http://www.eigafan.com/New_info/Review/mdh/index.html


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