JOHN CUSACK
 企画・脚本・製作も行うハリウッド実力派俳優、ジョン・キューザックの魅力に迫る!

 幼い頃から舞台に立ち、数多くの作品に出演してきたハリウッドの実力派、ジョン・キューザック。俳優業のほかにも、自ら製作会社や劇団を主催し、企画・脚本・製作も行う幅広い才能の持ち主、ジョンの魅力に迫ります。
 1966年、アメリカ・イリノイ州 エバンストン生まれ。本名はジョン・ポール・キューザック。家族は、俳優・脚本も手掛け、エミー賞を受賞した経験のあるドキュメント映像作家の父ディックと数学の先生をしていた母ナンシー、姉は女優のジョーンとアン 、妹も女優のスージー、弟のビルも俳優という芸能一家。もちろん兄弟姉妹で共演することもしばしばである。そんな芸能一家で育ったジョンは、9歳の時にシカゴのビヴァン・シアター・ワークショップの舞台に立ち、CMなどにも出演、早くから俳優の道を歩み始める。高校時代は、シカゴ・アカデミー・オブ・パフォーミング・アーツで演技を学びながら、CMや学生劇などの出演や演出なども手がけていた。
 83年、ハイスクールのホロ苦い体験をつづった青春映画『恋のスクランブル』でクラス委員の役を演じ、映画デビューを飾る。いくつかの映画に端役で出演した後、85年の青春コメディ『シュア・シング』で主演したジョンは、その爽やかな演技が好評を得て、スターの座を確立。その後、『セイ・エニシング』('89)など数多くの青春映画に出演し、好青年役として活躍していく。90年にスティーヴン・フリアーズ監督の秀作『グリフターズ/詐欺師たち』で主演したジョンは、はじめて詐欺師役に挑戦、人間の奥底にひそむ感情を鋭く描いた本作で、オフビートな演技を披露する。好青年役からは掛け離れた役どころを見事に演じきったジョンは、以後、演技派俳優として様々な役を演じるようになる。個性派監督に起用されることも多くなり、92年には、ジョンが最も尊敬するウディ・アレン監督に目をかけられ、『ウディ・アレンの 影と霧』に出演、『ブロードウェイと銃弾』('94)では劇作家の主人公を演じた。『訣別の街』('96)ではアル・パチ-ノと共演するが、実はアル自身から、共演は是非ジョンにやってもらいたいとのオファーがあったようだ。
 97年からは、演技だけでなく、製作・脚本にものり出すようになる。高校時代からの仲間と製作会社ニュー・クライム・プロダクションを設立し、『ポイント・ブランク』('97)というアクション映画を製作・主演した。この年は、出演依頼も多く、クリント・イーストウッド監督の『真夜中のサバナ』やサイモン・ウェスト監督の『コン・エアー』、アニメでは『アナスタシア』などに立て続けに出演し、この頃からジョンのファンは急激に増え始める。99年には、スパイク・ジョーンズ監督作『マルコヴィッチの穴』で人形遣いの主人公を演じ好評を博し、実力派俳優の座を築く。製作の方では、ニック・ホーンビィの原作に惚れ込んだジョンが脚本・音楽監修、そして主演も行った『ハイ・フィデリティ』(00)が大ヒットを記録。ニュークライム・プロダクション製作の本作は、女に振られた音楽オタクのレコード店オーナーが、自分自身と向き合っていく姿を、カルトな選曲&名曲にのせてユニークに描いたもので、ジョンはゴールデン・グローブ主演男優賞候補となった。
 私生活では、『ポイント・ブランク』で共演したミニー・ドライヴァー、『真夜中のサバナ』のアリソン・イーストウッド、『クレイドル・ウィル・ロック』('99)のコリーナ・キャット等、恋の噂はいろいろとあったが、現在はネーブ・キャンベルと交際中。


■VIDEO&DVDでチェック!ジョンの演技力&演出
個性的な作品に次々出演するジョン・キューザックの演技&演出を作品でチェック!
 出演作は、アクション、サスペンス、ラブ・ストーリー、ミステリー、コメディなど、ジャンルは様々だが、持ち前の演技力でそつなくこなすジョンの演技力を作品でチェック!


■『ハイ・フィデリティ』(00)
 イギリスの作家、ニック・ホーンビィの原作にほれ込んだジョンが、『グリフターズ 詐欺師たち』のスティーブン・フリアーズに監督に依頼して映画化を実現した意欲作。自身も共同製作と脚本、主演を兼任。女に振られてばかりのさえない独身男の日常を60年代から現在までの幅広いロック・ナンバーにのせてユーモアたっぷりに描く。シカゴで小さな中古レコード・ショップを経営する30代の独身男ロブ・ゴードン(ジョン)は突然同棲中の彼女ローラ(イーベン・ヤイレ)に出て行かれてしまう。ローラを取り戻そうとあれこれしているうち、本当に必要なのは、彼女の全てに、そして自分の全てに向き合うことなんだと気が付いて…。ジョンも参加したというこだわりの選曲は音楽ファンをも唸らせる。主人公の冴えない独身男を等身大で演じるジョンは、本作でゴールデン・グローブ賞男優賞にノミネートされた。

発売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
DVD価格:¥3,800(税抜)orレンタル
(C)Touchstone Pictures


■『マルコヴィッチの穴』('99)
 天才クリエイター、スパイク・ジョーンズ映画監督デビュー作。誰もが俳優ジョン・マルコヴィッチになれるという奇妙な“穴”の物語。売れない人形遣いクレイグ・シュワルツ(ジョン)は、妻ロッテ(キャメロン・ディアス)との仲も冷え切って、お金もなく、愛もない生活を送っていた。定職に就くため、新聞の求人欄で見つけたマンハッタンのマーティン・フレマー・オフィスビルの7と1/2階にある小さな会社の面接を受ける。採用されたクレイグは仕事中に偶然、ある“穴”を見つけてしまう。そして、恐る恐る中に入ってみると、なんとそこはジョン・マルコヴィッチになれる“穴”だった…。長髪&無精ひげのむさ苦しい姿で、主人公の人形遣いを演じるジョン、いままでにない、彼の新たな一面が見られる作品。

発売元:パイオニアLDC
DVD価格:¥4,700(税抜)orレンタル


■『真夜中のサバナ』('97)
 ジョージア州サバナで実際に起きた殺人事件をベースに、ジョン・ペレント原作の「真夜中のサヴァナ」をアメリカ映画界の巨匠、クリント・イーストウッドが映画化したノンフィクション。ジャーナリストのジョン・ケルソー(ジョン)は、北米一美しいと言われるサバナの街で毎年行われる壮大なクリスマス・パーティーを取材しにやってきた。しかし、その夜、謎の殺人事件が起こる。この事件に興味を持ったジョンは、事件の真相を追うことにする。次第に様々な問題が明らかになり、美しい街サバナはもう一つの顔を見せはじめる…。ジョンは、ニューヨークからやってきたジャーナリストが、美しいサバナの街が持つ昼の顔と夜の顔に翻弄される様子を好演。登場人物の一人、ザ・レディ・シャブリという芸人(オカマ)とジョンが掛け合いをするシーンが、大きな見どころの一つ。

発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
DVD価格:\2,000 (税抜)orレンタル


■『ポイント・ブランク』('97)
 ジョンが友人と設立したニュークライム・プロダクション製作の映画。ジョンは初めて脚本と製作、主演を行う。人生に行き詰まった腕利きの殺し屋(ジョン)は、故郷に帰り高校の同窓会に出席する。そこでかつての恋人デビー(ミニー・ドライヴァー)と再会し、ふたりはよりを戻す。しかし、ジョンは“全米殺し屋協同組合”を結成する先輩の殺し屋グロス(ダン・エイクロイド)からの入会の誘いを断ったことで、彼に襲われる羽目に…。ストーリーは、一見クライム・アクションとおもいきや、実はコメディという何ともおかしな展開を見せる。主人公の殺し屋のキャラクターも外見が二枚目、中身が三枚目と意外。また、音楽を伝説のパンク・バンド、クラッシュのジョー・ストラマーが担当しており、全篇に散りばめられたクラッシュ、ジャム、スペシャルズ、キュアーなどの名曲は必聴。

発売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
VHS価格:\16,000(税抜)orレンタル
(C)Hollywood Pictures Company


■『ブロードウェイと銃弾』('94)
 ジョンが最も尊敬するウディ・アレン監督作に初主演。前作『ウディ・アレンの 影と霧』で、その演技を認められたジョンは、本作で見事主役を勝ち取った。20年代のブロードウェイを舞台に、その内幕をアイロニカルに描いた傑作コメディ。劇作家のデビット(ジョン)はギャングのボスの出資により、自身の戯曲のブロードウェイ・デビューが決まるが、次々と思いがけない問題が降りかかる。演技力のないボスの情婦オリーブ(ジェニファー・ティリー)の出演を条件として提示されたり、主演女優(ダイアン・ウィースト)をめぐる三角関係に悩まされたり、そして脚本のリライト騒動がおき、やがて殺人事件にも巻き込まれて…。主人公の新進劇作家を演じるジョン、ベテランのスターたちのなかでも見劣りしないしっかりとした演技を披露。

発売元:パイオニアLDC
DVD価格:¥4,700(税抜)orレンタル


■『グリフターズ/詐欺師たち』('90)
 ジョンが注目されるきっかけになった作品。監督は後にジョンと組み、『ハイ・フィデリティ』で再びメガホンをとったスティーヴン・フリアーズ。ロサンゼルスを舞台に、母と息子とその恋人の愛憎をハードボイルド・タッチで描く。ロイ(ジョン)は、一見おとなしそうな好青年だが、実は詐欺師。ある日、ロイは競馬のノミ屋で働く母のリリー(アンジェリカ・ヒューストン)と8年ぶりに再会する。それほど年の離れていない親子は、はたから見ると恋人同士のようにも見え、ジョンの恋人で詐欺師のマイラ(アネット・ベニング)は内心穏やかでない。母と息子と恋人の危険な三角関係はやがて…。詐欺師でマザコンで女好きという、今までにない屈折したキャラクターを演じたジョンは、本作で高い評価を得る。

販売元:パイオニアLDC
DVD価格:\4,700(税抜)or レンタル


■その他のVIDEO&DVD作品
『恋のスクランブル』 ('83) 『すてきな片想い』('84)『グランドビューU.S.A.』 ('84)『やぶれかぶれ一発勝負!!』 ('85)『シュア・シング』('85) 『スタンド・バイ・ミー』 ('86)『エイトメン・アウト』 ('88)『セイ・エニシング』 ('89)『シャドー・メーカーズ』 ('89)『トゥルー・カラーズ』('91)『蜃気楼ハイウェイ』 ('91)『ザ・プレイヤー』 ('92)『心の地図』('92)『ウディ・アレンの影と霧』('92)『ビッグ・マネー・ブルース』 ('93) 『カッティング・エッジ』('94)『ケロッグ博士』('94)『訣別の街』('96)『コン・エアー』('97)『アナスタシア』('97)『フィオナが恋していた頃』('98)『シン・レッド・ライン』('98)『クレイドル・ウィル・ロック』('99)『シカゴ・ドライバー』('99)『ジャック・ブル』('99・TV)『狂っちゃいないぜ』('99)


■ジョン・キューザックの新作はジュリア・ロバーツと共演のラブ・コメディ!

 ジョンの最新作は、ジュリア・ロバーツ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズと共演の『アメリカン・スウィートハート』。人気女優の付き人をしている主人公が、愛する気持ちをバネに、次第に美しく洗練されていくという現代のシンデレラ・ストーリー。
 主人公のキキ(ジュリア・ロバーツ)は、超人気女優で姉のグウェン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)の付き人。美しく華やかで、いつもスポットライトを浴びている姉に対して、妹のキキは地味で内気で目立たないけれども、舞台裏で一生懸命彼女の世話に走りまわっていた。そんなキキにも、実は密かに恋心を抱いている人がいた。しかし、その人は売れっ子俳優のエディ・トーマス(ジョン・キューザック)で、しかも彼は姉グウェンの別居中の夫だった。エディにとってキキは永遠に妹以上にはランクされない存在。それがわかっているキキは、切ない恋心を胸に秘め仕事に打ち込むが、やがて、そのまっすぐな想いは、やがてエディを真実の愛に目覚めさせていく…。
 監督は、敏腕プロデューサー、そして映画製作・配給会社のレボリューション・スタジオの経営者としても知られているジョー・ロス。キラキラと輝くライト、瞬くフラッシュ、豪華リゾート・ホテルなど、セレブと彼らを取り巻く人たちのロマンティックなドラマが展開されるが、一方で、映画スターたちの実生活やゴージャスだけど嘘もいっぱいのハリウッドの舞台裏を同時に楽しむことができる作品でもある。主人公キキが恋する売れっ子俳優のエディ・トーマス役を演じるジョンは、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ扮する大女優グウェンを妻に持ち、ジュリア・ロバーツ扮するキキに恋されるという、一見ラッキーな役どころに見えるが、実はこのジョン扮する映画俳優エディ・トーマスという人物は、妻の浮気がきっかけで精神不安定に陥ってしまうような軟弱男。映画スター役は今回はじめてのジョンだが、実力派俳優といわれるだけあって、見せかけの愛に惑わされる優柔不断な男っぷりを見事に演じきっている。
 最新作は他に、今年秋に日本公開予定のピーター・チェルソム監督によるラブ・ストーリー『Serendipity』(01)に主演。また、『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズ監督が、蘭コレクターの男を描いた『Adaptation』(02)にジョン・キューザック役として端役出演している。そして、『カラーパープル』『マーシャル・ロー』の脚本で有名なメノウ・メイエス監督による、若きヒトラーと彼の美術教師との友情を描く『Hoffman』(02)に出演が決まったようだ。また、製作の方では、『Never Get Outta the Boat』(01)というブラック・コメディで製作総指揮を担当。そしてまた、ニュー・クライム・プロダクションで、ジョージ・ヒッケンルーパー監督による『2.2』(02)の製作も行うようである。


■ここもチェック!? ジョンのあれこれ
作品とコメントに見る、ジョンの才能とは?
 実力派としてしられるジョン、芸能一家に生まれただけあって、幼い頃から演技をしてきた彼は、いままで40にも及ぶ作品に出演している。そんなジョンの才能を作品とコメントでチェック!

 ジョンの数多くの出演リストをみて気が付くのは、彼が非凡なキャリアの積み方をしている、ということ。長身でルックスも良いジョンならば、一躍スターダムにのし上がることもできたはず。しかし、ビッグ・ヒットを狙ったショー・ビジネスの世界とは、一線を画した、作家性のある監督や個性派監督の作品に多く出演をしてきた。その出演作の選球眼には定評がある。
 ジョンが出演を決めるとき主に重視していたのは、その作品の監督が誰であるか、ということだったようだ。それは同時に、脚本に重きを置いているという意味でもあり、よい監督にはよい脚本が付いてくるものだという認識があったからだ。ジョンが尊敬してやまないウディ・アレン監督の2作品(『ウディ・アレンの影と霧』『ブロードウェイと銃弾』)に出演しているが、その際にも、彼と仕事が出来るのならどんな役だって出演したい、と語っていた。また、テレンス・マリック監督作『シン・レッド・ライン』の出演にあたっては、きついスケジュール調整をしなければならなかったにも関らず、マリックが監督をするのなら、と無理をしてでも撮影に参加することを希望したという。ジョンはその時「僕が俳優をやっているのは、テレンス・マリックのような人物と共に仕事ができる機会があるかもしれないっていう希望があるからで、俳優にとってはそれが全て」と語っている。この発言を見ても、ジョン自身が俳優としてはっきりとした指針を持って作品を選んできたことが分かるだろう。
 その後、スパイク・ジョーンズ初監督作のヘンテコ映画『マルコヴィッチの穴』で主演するわけだが、その時にも「まったく奇抜で、まったく新しく、複雑で、ひねりがあって、洗練されて、低級で、それがすべて同時に 詰まっている、突拍子もない映画だ」と作品がいかに興味深いものであるかを語っている。個性的で独創的で斬新なアイデアを持つ作品を選んでいるところに、ジョンの俳優としてのこだわりが感じられる。

 キャリアを積んで、今やハリウッドの中堅を担う、実力派俳優の一人として位置付けられているジョン。また、企画・製作・脚本など俳優以外の方面でも彼の名は知られており、自身が主催するシカゴの劇団ニュー・クライム・シアター・カンパニーで製作する映画や演劇も人気である。今後は、監督業にも興味があるとの意向を述べており、ジョン・キューザック監督による映画が実現するのも、そう遠くない未来のようだ。俳優としてのジョンの活躍も見逃せないが、こちらの方も楽しみ。ジョンの今後に期待しよう!


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