リーヴ・シュライバー Liev Schreiber
 スクリーンの個性派は演劇界のホープ

 中堅ハリウッド・スターの中で、特に際立つ個性的な脇役として、その存在を印象づけるリーヴ・シュライバー。スクリーンと舞台の上で目覚しく活躍する彼の魅力に迫ります。
 1967年10月4日、カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。俳優である父テルとアーティストの母へザーとの間に生まれる。リーヴはミドル・ネームで、ファーストネームはアイザック。シュライバーが1歳のとき、家族はカナダへ移住。その後両親の離婚に伴い、シュライバーは母親とともにNY、ロウワー・マンハッタンへ移り住んだ。母親はキャブ・ドライバーとなって生計を立て、シュライバーらを育てたという。
 当初は脚本家を目指していたシュライバーだが、教師の進めで俳優としての道に進むことを決意。ハンプシャー・カレッジ、イギリス王立演劇院、イエール大学のドラマ・スクールなどで演技を学び、役者としてのエリート街道を進んで行く。

 卒業後、ブロードウェイやシェイクスピア・フェスティバルの舞台に立つとともに、94年『Party Girl』('94)で映画デビュー。ドラッグクイーン役が話題となったスティーヴ・マーティン主演のコメディ『ミックス★ナッツ/イブに逢えたら』('94)やウディ・アレンと共演した『サンシャイン・ボーイズ/すてきな相棒』('95)、『バッファロー・ガールズ』('95)といったTVドラマで俳優としての基盤を固めた。
 また『シェフとギャルソン/リストランテの夜』('96)、『Walking and Talking 』('96)などのインディペンデント映画で注目され、同年ロン・ハワード監督のサスペンス大作『身代金』でメジャー映画に進出。翌年大ヒット・ホラー・ムービー『スクリーム』('96)のコットン役が人気を呼び、以後シリーズ3部作すべてに出演。一癖あるキャラクター色の濃い役柄で、ティーンを中心にじわじわとファン層を広げていく。
 99年には、HBOのドラマ『ザ・ディレクター<市民ケーン>の真実』で主役オーソン・ウェルズを演じ、エミー賞とゴールデン・グローブ賞にノミネート。一方、ブロードウェイの舞台でも実力を発揮し、同年シェイクスピア戯曲『シベリン』でオビー賞を獲得した。翌年ジュリエット・ビノシュと共演の『背信』は、トニー作品賞リバイバル・プレイ部門にノミネートされるなど、名実ともに演技派としての地位を確立した。


■際立つ個性派リーヴ・シュライバーの魅力をDVDでチェック

□『ザ・ハリケーン』 ('99) 
無実の罪によって30年間も投獄された実在のボクサー、ルービン・“ハリケーン”・カーターの波乱に満ちた半生を描いた人間ドラマ。主演デンゼル・ワシントンは、2度目のオスカー・ノミネート、ゴールデン・グローブ主演男優賞を受賞した。ボブ・ディランのヒット曲「ハリケーン」を通じて生ける伝説となったカーターは、キャリアの絶頂期に殺人罪に問われ、人種偏見の入り交じった裁判によって終身刑を宣告されたボクサー。

彼が獄中で執筆した自伝を読んだ少年レズラは、その背後に人種偏見がある事を知り、ハリケーン釈放運動に立ち上がる。リーヴ・シュレンバーは、古本市でカーターの自伝を手にしたレズラに、「本が読む人を選ぶこともある」と、貴重なアドバイスを与えるレズラの保護者サム役を好演。
発売/販売元:東宝
価格:\6,000(税抜)
□『ザ・ディレクター[市民ケーン]の真実』('99)
オーソン・ウェルズの不朽の名作『市民ケーン』にまつわる逸話や伝説が盛り込まれたハリウッド実録もの。演劇界の新星ウェルズ(リーヴ・シュライバー)は、RKO社長に招かれハリウッドに進出。ある日、新聞王ハーストの晩餐会に出向いた彼は、ハーストをモデルにした映画製作を思いつく。映画は無事完成するが、モデルにされたハーストは、公開を阻止するため様々な手段を講じて妨害に乗り出す。

2000年ゴールデン・グローブ賞TV映画最優秀作品賞受賞。いつも脇役のシュライバーがこの作品では主演を果し、ゴールデン・グローブ賞TV映画部門とエミー賞ミニシリーズ/映画部門で最優秀主演男優賞にノミネートされている。ウェルズ独特の身ぶりや口調を研究した演技がみものだ。
価格:\4,800(税抜)
発売/販売元:株式会社エスピーオー
□『スフィア 特別版』('98)
ダスティン・ホフマン、シャロン・ストーン、サミュエル・L・ジャクソンという豪華キャスト出演のマイケル・クライトン原作SF大作。太平洋の海底で、数百年前に地球外から飛来したと見られる謎の巨大物体が発見される。その正体を解明すべく、心理学者ノーマン(ダスティン・ホフマン)によって編成された科学者チームが海底へと潜行する。

深海で彼らが出遭ったのは、銀色に輝く巨大な球体、“スフィア”だった。外界から遮断された海底で次々と起こる恐怖の出来事。そしてコンピュータを通してコンタクトをしてきたのは、果たして人類最初の地球外生物なのか。シュライバーは、野心に富んだ宇宙物理学者を演じている。
発売/販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
価格:\2,000(税抜)
□『スクリーム2』('97)
人気ホラー『スクリーム』シリーズの第2弾。前作同様、ウェス・クレイヴン監督、ケヴィン・ウィリアムソン脚本による2作目には、ハロウィン・マスクを被った謎の殺人鬼が再び登場。あれから2年、事件を元にした映画が公開された初日、興奮状態の映画館で恐ろしい殺人事件が起きる。この事件を皮切りに、凄惨な事件を忘れ楽しい大学生生活を送っているシドニー(ネイヴ・キャンベル)を狙った殺人ゲームが、再び仕掛られていく。

随所に現れる映画オタク的シーンが、マニアには魅力。シュライバーは、前作と同じコットン役。シドニーの母親を殺害したと思われていた彼が、無罪釈放されてシドニーの元に登場。なんともいえない不気味キャラでその存在を印象付けた。
発売元:アスミック
発売元:東芝デジタルフロンティア
販売元:パイオニアLDC
価格:\4,700(税抜)
□『身代金』('96)
ロン・ハワード監督、メル・ギブソン主演による秀逸のサスペンス・ドラマ。新参航空会社のオーナー、トム(メル・ギブソン)は一代で財を成した成功者。賄賂疑惑をももみ消す程の切れ者だが、ある日愛する一人息子を誘拐されてしまう。FBIの救出作戦が失敗に終ったとき、彼は人生で最も危険な賭けに出る。

犯人の要求に従うと息子を殺されてしまうと直感したトムは、TV放送を通じて犯人が要求する身代金は絶対に払わないと宣言。その上、犯人を捕まえたものに、賞金として身代金分の200ドルを与えると公表したのだ。果たしてトムの作戦は成功し、愛する息子を無事に取り戻せるのか・・・。リーヴ・シュライバーは、冷血誘拐犯グループのメンバーの一人を演じている。弟を殺されたときの切れ方は見もの。
発売/販売元:パイオニアLDC
価格:\4,700(税抜)
 その他の出演作は、『聖なる嘘つき/その名はジェイコブ』('99)『ハムレット』(00)『ニューヨークの恋人』(01)など。


■シュライバーの独特の魅力を新作チェック

 テロの脅威がごく身近に感じられるようになった21世紀、1個の核爆弾が招く第三次世界大戦の恐怖を、リアルに描きあげた巨匠トム・クランシーのベストセラー小説が映画化された。このサスペンス巨編『トータル・フィアーズ』は、全米公開と同時に第一位を記録。この夏、日本でも公開が待ち望まれているハイテンション・ディザスター・ドラマだ。リーヴ・シュライバーは、本作でCIA工作員ジョン・クラークを演じている。
 トム・クランシーの映画化作品はこれが4作目。過去、主役ジャック・ライアンは、ハリソン・フォード、アレック・ボールドウィンらによって演じられてきたが、本作ではベン・アフレックが熱演。また、映画『今そこにある危機』('94)でウィレム・デフォーが演じ、小説シリーズの登場人物の中でも主要な存在であるジョン・クラーク役は、『トータル・フィアーズ』においてはリーヴ・シュライバーが演じている。

世界を股にかけて暗躍するCIAの腕利き工作員ジョン・クラークは、本作でも重要な位置付けがされているが、シュライバーはこの役柄をクールに演じている。デフォーと同様、個性派俳優として主演をサポートする彼の演技が光るのは、特に現場経験のないライアンとコンビを組む場面。緊迫した中、アフレックとともにユーモラスともいえる味のあるシーンを作り出している。
 その他の作品では、現在、ロシアを舞台にしたポリティカル・フィルム『The Yeltsin Project』の撮影がトロントで進行中。監督は『シックス・デイ』(00)のロジャー・スポティスウッドで、TVチャンネル、ショウタイムのプログラムで2003年に放映される予定だ。


■シェイクスピアとシュライバー

 映画では主演をサポートする性格俳優として、その存在を確立するリーヴ・シュライバーは、実は古典派演劇のホープである。92年から16本のブロードウェイとオフ・ブロードウェイ舞台に立ち、演劇界で目覚しく活躍する彼が最も得意とするのはシェークスピア戯曲。

 95年「テンペスト」のセバスチャン役、98年アレック・ボールドウィンと共演した「マクベス」、そしてNYパブリック・シアターで上演された「ハムレット」('99)と「オセロ」(01)は、いずれも高い評価を得ている。99年の「シンベリン」でオビー賞を獲得したことは前述の通り。イギリス王立演劇院での成果を着実にキャリアに生かしているようだ。
 そんな彼に、現代ニューヨークに舞台を置き換えたシェイクスピア戯曲の映画化作品『ハムレット』(00)への出演の声がかからぬわけがない。マイケル・アルメレイダ監督の実験的ともいうべきこの作品では、オフィーリアの兄レアティーズを魅力たっぷりに演じ、シェイクスピア役者としての実力をスクリーンの上で発揮した。 

 映画においてはその独特の個性を、また舞台においては演劇の王道を際立たせるという両面性で異彩を放つ俳優。それがリーヴ・シュライバーの魅力である。


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