ゲイリー・フレダー/Gary Fleder
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巧みな構成力で定評があるサスペンスの新しい旗手
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現在ハリウッドで“サスペンスの旗手”として注目を浴びているゲイリー・フレダー監督。『コレクター』、『サウンド・オブ・サイレンス』、『ニューオーリンズ・トライアル』に代表されるように、陰影の効いた重厚な映像や、登場人物たちを巧みに操る構成力は、我々をクライマックスまで一気に引き込みます。今回は、そんな監督の魅力に迫ります。
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1965年12月19日、アメリカ・バージニア州生まれ。ボストン大学を卒業後、奨学金を得て南カリフォルニア大学(USC)へ進学したフレダーは、在学中にボクシングを題材にした「Terminal Round」や、深夜ラジオのDJを主人公にしたサスペンス「Air Time」などの短編映画を製作し、その腕を磨いていきます。才能の片鱗を見せたのが、卒業プロジェクトとして発表したドキュメンタリー「Animal Instinct」('93)。「Terminal Round」と同じボクシングを題材に、ライトヘビー級ボクサー、フィル・パオリーナの姿を追ったこの作品は、サンダンス映画祭で上映されたほか、TV放映もされるなど、高い評価を得ます。 |
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大学卒業後は、プロとしてHBOのテレビシリーズ「Tales From the Crypt」を監督し、その中のエピソードの一つ「Seance」('92)では、ケーブル・エース賞を受賞。
映画デビューは、95年、アンディ・ガルシア主演の『デンバーに死す時』。この映画の脚本を担当したボストン大学時代からの友人、スコット・ローゼンバーグ(後に『アルマゲドン』、『ハイ・フィデリティ』などの脚本を担当)とともに生み出した物語は、裏社会から足を洗ったガルシア扮する元ギャングが、殺害を予告するかつてのボスから恋人や仲間を守るため、奔走するというもの。 |
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『ニューオーリンズ・トライアル』撮影風景 |
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この手の“ダークな犯罪モノ”というジャンルは、ハリウッドでは敬遠されていましたが、この作品はそんな懸念を覆し、95年のカンヌ国際映画祭でインターナショナル・プレミア上映されたほか、コニャック映画祭の批評家賞と審査員特別賞を受賞するなど、高い評価を獲得します。(※後にこのジャンルは、クエンティン・タランティーノの登場により、一大ブームを迎える) |
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こうして、監督として順調なスタートを切ったフレダーが次に挑んだのは、ジェームズ・パターソンのベストセラー小説を映画化したサイコサスペンス、『コレクター』('97)。名優モーガン・フリーマンが犯罪心理学の専門家アレックス・クロスに扮し、美しい女性ばかりを狙った誘拐事件の謎を解いていくこの作品は、大ヒットを記録します。 |
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続いて、マイケル・ダグラスとブリタニー・マーフィ主演のサスペンス、『サウンド・オブ・サイレンス』(01)、SF界の巨匠フィリップ・K・ディックの短編小説を映画化したSF映画『クローン』(02)を発表。さらに3つのエミー賞と2つのゴールデン・グローブ賞を獲得した人気テレビシリーズ「ザ・シールド」に参加するなど、着実に活躍の場を確実に広げているフレダー。
犯罪、SF、サイコと、これまで彼が手がけた作品は、まったく違ったジャンルですが、どの作品にも共通しているものがあります。それは、緊張感漂う演出法。陰影の効いた暗い画面や、複数の人物たちの物語を巧みに操る構成力、そして先の読めない展開などは、観客の目をぐっとひきつけてやみません。 |
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ブリタニー・マーフィのブレイクのきっかけとなった『サウンド・オブ・サイレンス』 |
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そんな彼の演出は、“法廷劇”という新たなジャンルに挑戦した『ニューオーリンズ・トライアル』(DVD名:『ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決』)でも存分に活かされており、陪審員、弁護士、陪審コンサルタント、そして謎の女が評決をめぐり法廷の裏で白熱した争いが繰り広げます。日本でも先日、裁判員法が可決され、5年後を目処に実行が予定されています。“陪審員”という映画やドラマだけの世界が現実になりつつ今、「評決は金で買えるのか-?」とフレダーが投げかけたこのテーマを、改めて考えてみてはいかがでしょうか?
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ともにオスカー俳優であり、親友でもある2人の共演は話題となった |
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■ゲイリー・フレダー監督の最新作『ニューオーリンズ・トライアル』をチェック! |
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ジョン・グリシャムのベストセラー小説「陪審評決」をもとに、裁判の裏と表で繰り広げられる熾烈な頭脳戦を、疾走感溢れるタッチで描いた法廷サスペンス。ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン、ジョン・キューザック、レイチェル・ワイズという最高のキャストを配したフレダーは、俳優たちとじっくりと話し合いながら、各シーンをつくりあげたという。また、原作ではタバコ会社だった訴訟相手を銃製造メーカーに変更し、アメリカが抱える切実な社会問題を浮き彫りにした。
※DVD&VIDEOのタイトルは、『ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決』 7月23日(金)DVD&VIDO 発売 発売元:東宝東和 販売元:ジェネオン エンタテインメント DVD価格:3990円(税込)
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(C)2003 Regency Entertainment(USA),Inc.in the U.S. (C)2003 Monarcy Enterprises S.a.r.l in the rest of the world. |
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■『ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決』DVD&VIDEO情報> http://www.eigafan.com/twvd/index.html
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■ゲイリー・フレダー監督の過去の作品をチェック! |
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『デンバーに死す時』('95) フレダーの映画デビュー作。元ギャングのジミー(ガルシア)は、昔のボスから仕事を押し付けられ、かつての仲間を集めるが、任務は失敗に終わる。怒ったボス(ウォーケン)は、彼の仲間の処刑を宣言。なんとか仲間たちを救おうとジミーは奔走するが、危険は彼の恋人(アンウォー)にも迫っていた……。 アンディ・ガルシアをはじめ、クリストファー・ウォーケン、スティーブ・ブシェミ、ガブリエル・アンウォーら豪華なキャストを配し、人生最後の時を迎えた男たちの生き様を激しく、叙情的に綴る。 発売・販売元:アスミック・エース エンタテインメント ビデオ価格:15,540 円(税込) |
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『コレクター』('97) 女性ばかりを狙った連続誘拐犯罪がアメリカ南部で発生。犯罪心理学のスペシャリスト、クロス(フリーマン)は、被害者の中の姪が巻き込まれたことを知り、地元の刑事とともに独自の捜査を開始する。一方、犯人に監禁されていたケイト(ジャッド)は自力で脱出に成功。クロスの捜査の協力を申し出る。 ジェームズ・パターソンの「キス・ザ・ガール」を映画化したサイコサスペンス。才色兼備の女性を収集することに喜びを見出す異常犯罪者と対峙する心理官アレックス・クロスの活躍を描く。アシュレイ・ジャッドがブレイクするきっかけとなった作品。 発売・販売元:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン DVD価格:2,625円(税込)
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『サウンド・オブ・サイレンス』(01) 全米探偵作家協会賞を受賞したアンドリュー・クラヴァンの「秘密の友人」を映画化したサスペンス。娘を誘拐された精神科医のネイサン(ダグラス)は、犯人から「娘を助けたかったら患者のエリザベス(マーフィ)から、6桁の数字を聞き出せ」と要求される。タイムリミットが刻一刻と迫る中、ネイサンは必死の奔走を続けるが……。 娘を誘拐されたネイサン、そして犯人に命を狙われる妻、事件を追う刑事など、それぞれの危機的状況は緊張感をあおり、やがて彼らが交差する過程は見事。主演は、マイケル・ダグラス、ブリタニー・マーフィ。 発売・販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン DVD価格:2,090円(税込)
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『クローン』(02) 『ブレードランナー』の原作者フィリップ・K・ディックの短編小説を映画化したSFアクション・ミステリー。地球が異星人と交戦状態にある西暦2079年。天才科学者スペンサー(シニーズ)は、ある日保安局のハサウェイ少佐に逮捕される。理由は、スペンサーが本物になりすましたクローンであり、その体内に異星人によって仕掛けられた爆弾があるというもの。処刑を免れるため、スペンサーは脱出を図るのだが……。 『マイノリティ・リポート』や『トータルリコール』などディック作品はその多くが映画化されているが、本作はディック作品のイメージを忠実に映像化している。主演はゲイリー・シニーズ、マデリーン・ストウ。 発売・販売元: 松竹 DVD価格:2,500円(税込)
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