スタン・ウィンストン/Stan Winston
 アカデミー賞4回受賞、数々の名作を生み出した特殊効果の巨匠

『ターミネーター』シリーズや『エイリアン2』など、技術の最先端を駆使し、魅力あるキャラクターを次々と生み出してきたスタン・ウィンストン。アカデミー賞受賞4回、ノミネート10回という数字が物語るように、多くの監督、俳優から尊敬を集めている特殊効果の巨匠です。そんな彼が初挑戦したのが、10月9日公開の『クライモリ』でのプロデューサー。これまでの彼の経歴を振り返りながら、ウィンストンの魅力に迫ります。

 1946年4月7日、ヴァージニア州リッチモンド生まれ。23歳のときに、特殊メイクの道を志し、ディズニーのボブ・シファーに弟子入り。ここで技術を学んだウィンストンは、72年にテレビムービー「ショック!生きていた怪獣ガーゴイルズ」で、架空の生物、鳥獣ガーゴイルの特殊メイクを担当し、エミー賞メイクアップ部門を受賞します。これをはじめ、テレビ映画「ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯」('73)、「Masquerade Party」('74)、「An Evening with Diana Ross The Big Event」('77)で同部門を受賞するなど、20代にして輝かしいキャリアを築きます。
 映画界に進出したのは、78年、ダイアナ・ロス主演の『ウィズ』。その後、81年のSFコメディ『ハートビープス/恋するロボットたち』では、アカデミー賞メイクアップ部門にノミネートされるなど、映画界に移っても順調な活躍を続けますが、彼の名を一躍有名にしたのは、やはりこの映画があってこそでしょう。
 ジェームズ・キャメロン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ターミネーター』('84)。未来からやってきた殺人マシーン“ターミネーター”を生み出したウィンストンは、骨格となるマシーンの部分をシンプルな人形と最小のアニマトロクスで描き、演じるシュワルツェネッガーと融合。あの周囲を圧倒する肉体から垣間見える精巧な回路に度肝を抜かれた人は多かったはず。

 「私がキャラクターを考えるときには、まったくのゼロからスタートするのではなく、現実にあるものからインスピレーションを受けて、新しいものを作り出していくんだ」と自身の創作過程について答えていたウィンストン。今でこそ、キャメロンやシュワルツェネッガーといえば大物ですが、この当時はまだまだ駆け出し。だからこそ、低予算という枠の中で、ウィンストンのアイデアと確かな技術が、この作品のヒットに大きく貢献したといっても過言ではないでしょう。

スタン・ウィンストンの代表作のひとつ、『ターミネーター』。
 その後も、ウィンストンは、次々と独創的なキャラクターを生み出していきます。再びキャメロン監督と組んだ『エイリアン2』('86)や、“液体金属”という更なる驚きを見せてくれた『ターミネーター2』('91)。太古の恐竜を現代へと鮮やかに蘇らせた<『ジュラシック・パーク』('93)のほかにも、『プレデター』('87)や『シザーハンズ』('90)、『A.I.』(01)などなど。彼が生み出す特撮は、そのどれもが独創的で話題性も抜群。映画界のエポックメーキング的な作品となっています。
 とはいえウィンストン自身は、その評価に溺れることなく「大作でもそうでない作品でも、自分たちの持てる力を注ぎ込んでいる。どんなに技術が進歩しようと、それは作品を作るうえの手助けにしかならないんだ」という言葉が物語るように、あくまでも彼の興味は作品の持つ世界観を正確に表現すること。生粋の職人です。
 そんな彼は、今回『クライモリ』で長編映画のプロデューサーに初挑戦していますが、「脚本を読んだときに、これは今まで読んだ中で、一番怖いものだ」と思ったそう。その世界観をあらわすべく、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の製作チームや、『クライム・アンド・パニッシュメント』の監督ロブ・シュミットを集結させ、その恐怖の世界を再現。また、プロデューサーという立場を存分に楽しんでいたようで、監督曰く「ウィンストンは平和主義者で温厚だけど、この映画のときはどうやって人を殺すか楽しそうに考えていたよ」とのこと。毎日、自身のスタジオに飾られているエイリアンや、ターミネーター、プレデター、恐竜などを見るとワクワクしてしょうがないというウィンストン。現在58歳、彼の創作意欲はまだまだ衰えるところを知りません。

スタン・ウィンストン・スタジオ>>http://www.stanwinston.com/
『ターミネーター3』特集<映画を支える二本柱>でスタン・ウィンストンをクローズアップhttp://www.eigafan.com/New_info/Review/t3/sp/index.html


■スタン・ウィンストンの最新作『クライモリ』をチェック!
 地元の人間が決して足を踏み入れない奥深い森に迷い込んだ6人の男女が、遭遇する想像を絶する恐怖を描く。本作で特殊メイク効果と、初の長編映画のプロデュースを担当したウィンストンは、『悪魔のいけにえ』や『サイコ』などに代表される70年代のホラーを意識したという。その未曾有の恐怖は全米を震撼。あのホラー界の帝王、スティーヴン・キングも絶賛した恐怖は、ぜひとも劇場で体感すべし。

『クライモリ』公式サイト>>http://cry-mori.com/
『クライモリ』主演エリザ・デュシュクをクローズアップ!>>http://test.eigafan.com/yomueiga/star/




■過去の作品でスタン・ウィンストンの魅力をチェック!
『ジュラシック・パーク』('93)
 スティーヴン・スピルバーグ監督が、バイオ・テクノロジーを用いて現代によみがえった恐竜と人間との死闘を壮大なスケールで描いたSFパニック映画。本作で特撮を担当したウィンストンは、舞台となるテーマパークで暮らす何体もの恐竜を再現。実物大のモデルと、最新のCGを用いて本物そっくりの恐竜を生み出すことに成功した。この年、『エイリアン2』('83)、『ターミネーター2』('91)に引き続き、アカデミー賞・特殊視覚効果賞を受賞。その後も続編の『ジュラシック・パーク/ロストワールド』で、さらにバラエティ豊かな恐竜を披露している。
発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
DVD価格:3,990円(税込)


『シザーハンズ』('90)
 ティム・バートンが描くファンタジーラブロマンス。発明家の博士によって生み出された両手がハサミの男、エドワード(ジョニー・デップ)は、一人孤独な毎日を送っていたが、ある日化粧品のセールスに訪れたペグに発見されたことから、彼女の家族と暮らすことになる。やがてエドワードは、ペグの娘キム(ウィノナ・ライダー)に恋をするが…。 ジョニー・デップ扮するエドワードの特殊メイクを担当したウィンストン。血の気のない顔、黒い衣装、そして2つの手からは大きなハサミうという何とも個性的で、愛すべきキャラクターとなっている。本作でウィンストンは、アカデミー賞のメイクアップ賞にノミネートされた。
発売元・販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
DVD価格:2,079円(税込)


『ターミネーター3』(03)
ジェームズ・キャメロン監督と、アーノルド・シュワルツェネッガーを一躍スターダムに押し上げたSFアクション『ターミネーター』('84)の伝説がジョナサン・モストウ監督に引き継がれ再び幕を開ける。人間とサイボーグが激しく対立する2029年から送り込まれた殺人マシーン“ターミネーター”T-800(『ターミネーター』)、そしてT-1000(『ターミネーター2』の襲撃を逃れたジョン・コナー親子。審判の日は、避けられたかと思われたかが、新たに彼を狙うT-Xが現れる。
 精巧なアニマトロクスを用いてターミネーターを表現したウィンストンは、シリーズ最新作でも、ロボット工学を用いた最新技術を披露。新旧のターミネーターも登場し、シリーズの集大成にふさわしい世界を見せてくれる。
発売元:東宝東和
販売元:ジェネオン エンタテインメント
DVD価格:4,179円(税込)


『ターミネーター3』公式サイト>>http://www.t3-jp.com/index.html


<<戻る


東宝東和株式会社