10月7日新宿シネマ・カリテ、28日大阪パラダイス・シネマ、ほかにて順次公開

 北欧に位置するデンマーク。農業の国として有名なこの国の映画、観たことありますか?今、映画界はデンマークに熱い視線を注いでいます。きっかけを作ったのはラース・フォン・トリアー監督の『奇跡の海』('96)。もともとカルト的人気を誇っていた彼が本作でカンヌ映画祭審査員特別大賞を受賞したことで、デンマーク独特の美意識が世界に認知されたのです。そしてトリアー監督は最新作(http://www.eigafan.com/abroad/from_ny/2000/an_0928.html Back Number9月28日参照)で、本年度カンヌ国際映画祭にて見事パルムド-ルを獲得しました。

 また、95年に結成された<ドグマ95>も話題。これは「人工照明は使わない」など、独自に10カ条の制約を設け映画製作を実践している集団のことで、トリアー監督も参加しています。そんな今こそ旬のデンマークから未知の新鋭監督作『WEBMASTER』を紹介します。


 近未来テクノポリス。闇の権力者が運営するコンピュータ・ドメインのウェブマスターを務める男を主人公に、ヴァーチャルとリアル双方の価値観を描く本作。と言ってしまうと近年ありがちな青春ドラマを思い浮かべるかもしれませんが、一筋縄ではいかないのかデンマーク映画。本作の一番の見どころは斬新な映像。想像を絶するサイバーな世界が堪能できるのです。そんなパンッキシュな世界を創造したのは、トーマス・ボーシュ・ニールセン監督。

 「聞いたことない」との声が聞こえてきそうですが、それもそのはず。本作が彼の長編劇場映画デビュー作になります。アメリカとフランスで、3DアニメーションとSFXなどの映像を学び、アニメーション製作から映画界入り。その後ミュージックビデオやCMなど多くの作品を手掛ける傍ら、小説も執筆して多くの若者に支持されている多才の持ち主、というのがニールセン監督の正体です。

 その経歴を存分に発揮した本作では、コンピュータ・アニメーションのように造型されたテクノポリスを舞台に、テンポの速いゲーム性ある映像を充分に見せてくれます。その仕上げに1年以上を要したというデジタル画像の数々は必見。まずは本作を体感して、独自の美にこだわりをみせるデンマーク映画にはまろう!

STORY  近未来テクノポリス。腕利きのハッカーJB(ボム)は、バーチャル・ネット界のトップグループで、最も怖れられている組織の実力者/ストイス(キール)のコンピュータへの侵入に成功。それに敬服したストイスから、彼のコンピュータ・システムを保護する重要なポスト“ウェブマスター”に指名される。JBの仕事はストイスのコンピュータ・システムの中でも一番重要な4人の幹部だけがアクセスを許されるエリアをガードすることだった。

 ある晩、JBの良き理解者であり腕のいい探偵ミア(シャボウ)が、マスメディアに売り出せば金になる意外な事実を突き止め、その捜査協力をJBに依頼。それは、4人の重要な幹部の内の一人が浮気をしているというのだ。真相を探るべく現場を見張っていたその目の前で、彼はその魅惑的な女性に殺されてしまった…。

 この事件と時を同じくして、最も固くガードされ侵入不可能と思われていたJBの管理エリアに何者かが侵入。ストイスの口座にアクセスし、大量の金を盗んでいった。JBは、ストイスに呼び出され、35時間以内に犯人を見つけ出し金を取り戻すように命じられる。あろうことかストイスは、JBを疑っていた。そして犯人が見付からなければ、JBの体に埋め込んだタイマー付きの人工心臓を止めると言うのだ。この人工心臓は、勝手に除去しようとすると神経系がショートするしくみになっている。唯一タイマーを解除出来るのは、ストイスだけなのだ。

 JBの命をかけた犯人探しが始まる。ストイスの美しい女バービー(ローベック)の謎めいた誘惑。ローゼンスタインが殺された事件との関係。また不思議なことに4人の幹部の内の一人の行方がいつの間にか消えていた。犯人の企みはいったい何なのか?!ミアの助けをかりて、JBは犯人の足取りを追跡する。迫るタイム・リミット。果たしてJBは犯人を見付け出し、自分の命を救うことが出来るのか!










STAFF&CAST
監督・脚本・出演:トーマス・ボーシュ・ニールセン 製作:ソレン・ジュール・ペーターゼン 撮影監督:ラース・ベイヤー CGデザイナー:カースティン・スキット 音楽:アルニ・シュルツ 美術:トーマス・レイヴン 編集:キャスパー・リーク 衣装:ルイズ・ニールセン メイク:トリン・コルデス・バーグ 出演:ラース・ボム、ブック・シャボウ、カリン・ローベック、ヨルゲン・キール、フレミング・イエットマー、マーズ・パルズム、ドルス・ウェス・レアマンほか

DATA
1998年/デンマーク映画/カラー/ビスタサイズ/ドルビーステレオ/102分/R-15 配給: 株式会社 彩プロ/宣伝: オムロピクチャーズ


★トーマス・ボーシュ・ニールセン
PROFILE:63年デンマーク生まれ。アニメ映画の製作から映画界に入り多くの作品を手がける。『Valhala』('87)においては作品のコーディネーターを務め、その頃すでに開発されていた3DアニメーションとSFX技術の訓練を始める。技術習得のためコペンハーゲン、パリ、モンペリエを経てアメリカへ渡る。87年彼は兄弟のラースと製作会社ニールセン&ニールセンを設立。6年間で数々のCMの3DアニメーションとSFXを手がけた。会社分割後、デンマークのナショナル・フィルム・スクールで演出の教鞭を執る傍ら、長年の夢であった映画シナリオの執筆を始める。いくつかのシナリオを執筆し、『モルグ』(ユアン・マクレガー主演作『ナイトウォッチ』の原型)の製作会社であるThura Filmに売りこむ。その間カールスバーグ・インターナショナルとペプシのCMを監督、EMI-Medley社に所属する多くのロックバンドのミュージックビデオの監督を手掛ける。96年プロデューサーのソレン・ジュール・ペーターセンと出会い、『WEBMASTER』を完成。96年の秋、二人の合弁会社であるZeitgeist ApSを設立。現在2000年製作予定の新作シナリオを執筆中。

主演男優ラース・ボム
 PROFILE:61年デンマーク生まれ。85年王立デンマーク演劇学校を卒業。その後テレビ・演劇界へ。子供番組『Bamse & Kyling』シリーズでの Bamse役、連続ドラマ『Strisser pa Samso』シリーズとニコラス・ウィンディング=レフン監督の長編映画『プッシャー』('96)での警察官役などで人気を博す。今回のJB役では新生面を見せ、役者としての母国での地位を不動のものとした。
主演女優プック・シャボウ
 PROFILE:69年デンマーク生まれ。93年Odence演劇学校を卒業。評価の高い叙事詩的なデンマーク作品『Kun en pipe』('95)の主役でブレイク。同作でデンマーク・ロベルト映画祭の主演女優賞を受賞した実力派。その後カールスバーグ醸造所一家の歴史を描いたテレビシリーズ『Bryggeren』('96)でNanna役を務める。今回のミア役では男勝りで好戦的なキャラクターを演じている。


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