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近年、海外でも評価を集める日本映画。国内でも洋画全盛の中、各映画誌のみならず一般誌でも日本映画特集を組む機会が多くなりました。北野武は当然としても、三池崇史や黒沢清、坂本順治などなど、そういった記事に常連の気鋭監督も、少し前は映画ファンだけが知っているという状況でしたが、今では一般的著名度を得ています。そんな群雄割拠な時代にあって、ここにスコーンと飛び抜けた映画が登場しました。と言っても新人監督作ではありません。80年代の日本インディーズ映画が異常に元気だった頃から先頭を走っていた、あの監督の作品です。
そしてこの作品は、日本映画であって日本映画ではありません。本作は全編オール・ニューヨーク・ロケ。そしてスタッフもキャストも、全く無国籍です。だからアメリカ映画だという訳でも、三池監督作品的な無国籍という訳でもないのでご注意を。本作に国籍は感じられません。言ってみればボーダレス映画。どこの国とか誰のとか何のためにとか、そういった定義を真の意味でブチ壊した恐るべきパワーを放つ、山本政志監督作品『リムジンドライブ』を紹介します。 |
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山本政志監督と言えば、80年代前半の日本インディーズ、主にパンクシーンの中に自らも生息し、それを切り取った劇映画作家。98年のストリート・ムービー『JUNK FOOD』でも、そのスタイルが若い層を中心に人気を博しました。しかし、彼の作品にクールであるなどという、スタイル的な評価は表面的なものに過ぎません。問題はそれがどこから沸いてくるのがというところにあります。 | ||
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そして、監督が選び演出した俳優全員が魅力的。特に主演のガングロギャル、エリ役を務める仲祐賀子は、全くの素人ながら見事な存在力。誤解を恐れず言うのなら、演技的な技術力は感じられず、前半はイマイチ彼女にのめり込めません。しかし、中盤後半と進むにつれ、彼女から目が離せなくなるのです。これはもう、観る側が彼女に愛情を感じてしまうからでしょう。そして前作『JUNK FOOD』にも出演した元チーマーの鬼丸が、野太い人間を描いた本作の中でひとり、人間の脆い部分を背負って迫力の妙演を見せ、映画を引き締めています。さらに、主演のリムジン・ドライバー役であるT.M.スティーブンスのいい人さ加減は絶妙。現役ミューミュージシャンである彼が添えるファンク・ミュージックも絶品です。
キャスト&スタッフとも、人種はバラバラ。彼らがそれぞれにやりたい放題な図は、まるでドキュメントのよう。そのライブ感と固定観念のなさがもたらすパワーが一体となり、めちゃくちゃに楽しい映画に仕上がっています。映画を観るというより、遊びに行く感覚で、ぜひ映画館に出かけてほしい1本なのです。 |
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STORY NY。リムジン・ドライバーの黒人中年マリーク(T.M.スティーブンス)は、ある日、若い日本人女性エリ(仲祐賀子)を乗せる。彼が車から目を離した隙に、チンピラの置き引きにあう。うまく犯人のひとりを捕まえたまではよかったものの、たまたま近くにいた口のうまいパキスタン人アクラム(チョードリー・イクラム)に乗せられて、結局は職を首になるハメに。しかも彼氏に振られたらしいエリは、マリークの部屋に居座ると断言。文句を言いながらも人のいいマリークは彼女を住まわせる。次々に男を変えて、気ままに過ごすエリ。しかし日本人バーでしりあったナオ(鬼丸)と付き合うようになり、次第に彼女の生活が彼に支配されていく。 | ||
STAFF&CAST 監督・製作・脚本:山本政志 ライン・プロデューサー:サラ・ジィレンスティアナ 撮影:マイケル・パールマン 衣装提供:ヒステリックグラマー 音楽・出演:T.M.スティーブンス 出演:仲祐賀子、鬼丸、サンキ・リー、チョードリー・イクラム、津田寛治、ドン・タランほか
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