2001年6月1日(金)より東京、札幌、名古屋、沖縄、松本、シンガポールなど
各都市にて開催!

 映画の都ハリウッドを抱えるアメリカでは、ショートフィルムと呼ばれる短編映像作品が盛んに作られています。一口にショートフィルムと言っても、1分程度のちょっとしたものから長い作品でも40分くらいまで、ジャンルはコメディ、ホラー、サスペンス、アニメーションと多岐にわたります。しかし作品に盛り込まれたメッセージは長編映画と変わりありません。使用機材なども同じことが多いですし、むしろ短編ということで予算もぐっと押さえて凝縮した内容のものを伝えることができます。しかもCGやクレイ(粘土)アニメーション、特撮や実験的なストーリーなど凝った作品づくりもできるのです。

 また、長編作品のパイロット版としてショートフィルムを作る監督もいます。フォトグラファーなどが自分の作風を知ってもらうためにポートフォリオと呼ばれる作品集を持ち歩くように、ショートフィルムは映像作家にとって効果的にプレゼンテーションできるツールになるからです。多くのまだ世に知られていない若い監督たちは、自らの才能を凝縮した短編作品を作って映画祭などに出品し、ここからメジャーデビューを狙います。スティーブン・スピルバーグ、フランシス・F・コッポラ、スティーブン・ソダーバーグ、ジョージ・ルーカスといった世界に名だたる巨匠監督も、みな始めは短編作品から出発したのです。

 そんなショートフィルムの魅力がぎゅっと詰まった映画祭、「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル 2001」が開催されます。今年で3回目になりこのフェスティバル、一体どんなフェスティバルなのでしょうか。映画祭の内容とその魅力を、このコーナーで詳しく紹介することにしましょう。


 「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル」は1999年に始まりました。エグゼクティブ・ディレクターは俳優の別所哲也氏。アメリカ大使館やジョージ・ルーカス監督、AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)などの協力を得て、1回目は2都市で約1万人、2回目は5都市になり、動員数も2万2千人と年々増えてきています。今年、東京では6月1日(金)から5日(火)まで、そして日本だけでなく、シンガポール会場も含めて6都市で開催予定。映像の未来世紀への挑戦として「Film vs Digital」をテーマに掲げ、DLP(デジタル・ライト・プロセッサーの略)システムによるデジタル上映なども行なわれます。

 今年はアメリカから34本、オーストラリア、ドイツ、イラン、ベルギーなどインターナショナル部門で8本、日本からは8本など、ティム・バートン監督作品を含む計52本の作品が一挙上映。例年、アカデミー賞、サンダンス映画祭などで注目を浴びた作品がお目見えしますが、今年度もクオリティの高い作品が選ばれました。作品は7~8つからなる作品群を1つにし、プログラムAからE、そしてI(インターナショナル作品のみ)の6つのプログラムで構成。それぞれのプログラムを各日に振り分けてスケジュールが組まれています。上映前には監督や来日ゲストなどのトークイベントもあります。日本の若い映像作家や映画ファンのために、ショートフィルムの魅力や可能性などを語ってくれるのです。

 招待作品が豪華なのも特徴のひとつです。1回目はジョージ・ルーカス監督、2回目はマーティン・スコセッシ監督の無名時代の作品が招待されました。昨年は『ザ・パーソナルズ 黄昏のロマンス』でアカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞した伊比恵子監督が作品と共に参加しています。今年は『シザーハンズ』('90)、『バットマン』('92)、『スリーピー・ホロウ』('99)などを手掛け、まもなく新作『PLANET OF THE APES 猿の惑星』(01)が公開になるティム・バートン監督のショートフィルムが招待されています。

 また、この映画祭には各賞が設けられています。これは、アメリカン・ショート・ショート実行委員会が選ぶ“アメリカン・ショート・ショート・アワード”、特別審査員による“審査員特別賞”、観客が選ぶ“オーディエンス・アワード”(東京会場のみ)の3つ。ここで注目なのが、“オーディエンス・アワード”です。これは、皆さんが鑑賞した作品のなかから優秀作を選ぶという投票システム。あなたが選んだ作品が映えある“オーディエンス・アワード”を受賞するかも…。そうとなれば作品を見る目も自然と厳しくなる!?

 ちなみに今年度の特別審査員には、オスカー受賞者でもある伊比恵子監督、作家の村上龍氏、女優の天海祐希さん、映画プロデューサーの河井真也氏が決定しています。“アメリカン・ショート・ショート・アワード”は賞金25万円と、コダック社より3200フィート(約30分)の35mmカラーフィルム、“審査員特別賞”は賞金15万円、“オーディエンス・アワード”には賞金10万円がそれぞれ贈呈されます。自信のある人は、来年、自分の作品を出品してみるのもいいかも。

 「映画祭をみたいけど、会場には行けない…」という人のために嬉しいお知らせ!スカイパーフェクTV!のペイ・パー・ビュー(視聴した分だけ課金されるシステム)・チャンネル、“パーフェクトチョイス”(スカイパーフェクTV!/Ch.110‐120・142‐147の17ch)にて、この映画祭がサテライト放送されます。映画祭直前の5月25日(金)には「アメリカン・ショート・ショートの魅力(仮題)」がオンエア。「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル」のこれまでの足跡や過去の作品、今年度のみどころなどを約90分にわたって放映します。また閉幕後には映画祭の模様や各賞の受賞作品、おすすめショートフィルムなども放送する予定。お見逃しなく!

 「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル 2001」のことをもっと詳しく知りたい!という人には、「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル 2001」公式サイトがおすすめ。最新ニュースや上映プログラム、作品リストや招待作品などについての情報が満載です。オンライン・イベントやゲストへの特別インタビューなども予定されているので、さっそくチェックしておこう!

■「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル 2001」公式サイト
http://www.americanshortshorts.com

○「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル 2001」のおもな上映作品



・『Soul Collectors』(00/アメリカ) <7分>
嵐の去った海岸。ある仕事を成し遂げるために、2人の男が海岸の岩に座り込む女性に近づくが…。色使いやカメラワークなど、凝った演出に注目。
監督:レベッカ・ロドリゲス


・『サイの芽』(00/日本) <2分10秒>
一人暮らしの女の子が大切に育てる鉢植え。水をやり、「早く芽が出ないかなぁ」と呟く。シンプルな中にあっと驚く展開が。
監督:アラキ マサヒト


・『Delusions in Modern Primitivism』(00/アメリカ)<17分>
反抗の表現、自己アピールとしてタトゥ、ピアスを次々に体に刻み込んできた男が求めた究極のボディアートとは?ドキュメンタリー・タッチが生かされている作品。
監督:ダニエル・ロフリン


・『Indescribable Nth』('99/アメリカ) <9分27秒>
エリックは小さなガラスドームに“心”を入れた不思議な子供。ドームを揺らすと喜ぶが、ある日ドームが割れてしまい…。アニメーション作品。シンプルな線だけで表情などの動きを表現している。
監督:オスカー・ムーア



・『Vincent』('83/アメリカ)<6分15秒>
礼儀正しく従順な子供、ヴィンセント。彼が憧れていたのはコウモリ屋敷での暮らしだった…。子供の妄想がバートン的なイメージで展開。名優ヴィンセント・プライスがナレーターを務めている。
監督:ティム・バートン
 「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル」第1回目の招待作品は、ジョージ・ルーカス監督が南カリフォルニア大学在学中につくった『電子的迷宮/THX 1138:4EB』('67)でした。この無名時代の作品が高く評価され、フランシス・F・コッポラ監督の出会いにつながってメジャー・デビューのきっかけを掴みました。ルーカス監督は第1回目から「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル」をバックアップしています。ショートフィルムに賭ける若き監督たちを助けたいと思うのも、監督自身のこの経験によるのです。チャンスを得てよりよい作品を作れるようにと支援を惜しまない姿勢は若い監督たちにとっては頼もしい限りですよね。ルーカス監督も、きっとここから次世代を担う新進気鋭のフィルムメーカーを発掘してみたいのではないのでしょうか。今年出品されるジョー・ナスバウム監督作品『George Lucas in Love』('99)は、『スター・ウォーズ』シリーズのルーカス監督にオマージュを捧げたもの。監督の大学時代を綴ったショートフィルムです。といっても内容は『スター・ウォーズ』など、ルーカス監督の作品をモチーフにしたパロディで、ファンならだれでもニヤリとしてしまう作品に仕上がっています。ルーカス監督は「ぜひこのパロディ・ショートをみなさんにエンジョイしてもらいたい」と賛辞を贈っています。

 昨年は第71回アカデミー賞で短編ドキュメンタリー賞を受賞した伊比恵子監督が受賞作と共に参加しました。伊比監督は87年にミス日本グランプリに選ばれるほどの美貌と才能の持ち主。けれど、彼女は周りの期待をよそに松竹シナリオ研究所で地道に脚本作りを学び、91年に渡米、ニューヨーク大学大学院などで本格的に映画製作を学んできました。オスカー受賞作『ザ・パーソナルズ 黄昏のロマンス』は、地域のコミュニティセンターに密着し、「パーソナルズ」という芝居作りに熱中する老人たちの姿を描いた約30分のドキュメンタリー作品です。ともすれば埋もれてしまいがちの短編作品が、オスカーを受賞することによって日本でも大変な注目を集めました。これまでにも短編作品上映などは行なわれてきたと思いますが、伊比監督がオスカーを受賞してから国内でもショートフィルムが注目される機会も増え、短編映画の可能性も広がってきたようです。「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル」はそういった数々の短編作品を救うべく期待され、より一層大きくなっていくことでしょう。伊比監督も「昨年、フェスティバルに参加して多くの人と楽しい時を共有できた喜びを大切に、今年も期待に胸ふくらませています」とのこと。今年も特別審査員として参加してくれますので、楽しみにしましょう!


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