FILE13:ニュージーランド発『ミルクのお値段』
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2月16日(土)、シブヤ・シネマ・ソサエティほかにてロードショー!
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ニュージーランドと聞いて、広大な原野、緑の丘、牧場、といった風景を喚起される方も多いでしょう。
そのニュージーランドの美しい自然をそのままパッケージしたような映像を堪能できるのが、映画『ミルクのお値段』です。
監督は、世界37カ国で公開され、本国ニュージーランドの賞を総なめにした映画『TOPLESS』('97)の監督、ハリー・シンクレア。
2作目にあたる本作は、目まぐるしく変化する都市をグランジタッチで描いた前作『TOPLESS』とは対照的な、ニュージーランドの牧場を舞台にしたおとぎ話風のラブ・ストーリーです。
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本作は、2000年度ニュージーランド・フィルム・アワードのベスト・シネマトグラフ賞を受賞。
また同年、トロント映画祭をはじめとする多くの映画祭にも出品され、プチョン国際ファンタスティック映画祭と東京国際ファンタスティック映画祭ではグランプリを獲得しています。
そして、全米ではNY名門シアター、アンジェリカで公開され、話題となりました。
さて本作は、叙情的な音楽とともにニュージーランドの自然を美しく描いた映画なのですが、実はそれだけではありません。
監督のハリー・シンクレアとプロデューサーのフィオナ・コップランドは大のユーモア好き。
そのユーモアを活かした、おとぎ話のような魔法にかかったストーリーが次々展開していきます。
「私はほとんどのおとぎ話の結末である、ハッピーエンドからはじまるおとぎ話というアイデアが気に入ったんです」
とシンクレア監督がいうように、本作の始まりでは、完璧に愛し合っているカップルが、愛を試そうとしたときから、ふたりの仲がこじれていってしまうのです。
コップランドは「あなたが思いもよらない映画になるでしょう」といいます。
ヒロインは、彼の愛を確かめるため、あの手この手と予想もできないいたずらを仕掛けます。
そして、緑の谷間のほのぼのとした牧場は、まるで魔法にかかったように、破壊されていくのです。
愛のマジックに翻弄される男と女は一体どうなってしまうのでしょうか。
最後に愛のマジックがみせる逆転劇は、純粋さについて考えさせられる、大人のためのファンタジー。
きっとヒロインの真直ぐさに、心動かされることでしょう。
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■ニュージーランドから届いた、大人のためのファンタジー! |
この美しい自然の中にある牧場を舞台にした不思議なラブ・ストーリーは、すべてニュージーランドで撮影されています。
シンクレア監督は、週末にニュージーランドの地方をドライブで巡っていたとき、この物語を閃いたと説明します。
「ニュージーランドの牧場の景色は、常に自分にとって特別な力を持っていました。
その起伏と緑の丘の中になにひとつものがない光景。
それは、視覚的なものと情緒的なものの両方の観点から見ても、興味深いものです。
それは、とても美しいけれど、一方で、緑が青々と茂っていながらも、砂漠のような不毛の地を思い起こさせます」
また、ちょうどその時、車のラジオから流れていたロマンティックなロシア音楽の旋律も、新たなインスピレーションを与えたと言います。
それらは20世紀初頭のロシア人作曲家のものだったのですが、妖精と鬼をテーマしたおとぎ話のような楽曲はニュージーランドの牧歌的風景と見事にマッチし、不思議な世界を作るきっかけになったのです。
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撮影はニュージーランドのある牧場で7ヶ月間に渡って行われました。
スケジュールも脚本も制作準備期間もなく、一週間のうち2、3日撮影をするというアンオーソドックスなスタイルで進められた今回のロケは、
「私は“たった今”というものを有効に利用するのが大好きなんです。私は、いまだかつて映画のために準備された瞬間を、演じたものを、観て感動したことがありません」
というシンクレア監督ならではの独特の撮影スタイルなのです。
7ヶ月間という撮影期間は、監督やクルー、キャストにとって、その土地をよく知る絶好の機会になりました。
唯一地元の商店を営んでいる原住民のバハナ家や、マオリ族の人々と仲良くなり、そして、彼らの映画出演をも可能にしました。
この即興での撮影スタイルは、ストーリーに大きなインパクトを与えたのです。
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愛に翻弄される男女のカップルを演じるのは、『TOPLESS』にも出演していたニュージーランドを代表する注目の若手女優ダニエル・コーマックと同じくニュージーランドを代表する若手男優カール・アーバン。
そして、ヒロインの親友役にニュージーランドの実力派女優と言われるウィラ・オニール。
また、ランジ・モツが、ミステリアスで魔法の力を持つ、彼らの運命に影響を与える存在の老婆、アンティを演じています。
ニュージーランドの監督とニュージーランドの役者たちによる、ニューシーランドの牧場を舞台にしたファンタジックなニュージーランド映画がここに誕生しました。
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■STORY |
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美しい緑の谷間のある牧場に、愛し合うカップルが住んでいました。
ルシンダとロブと彼らの117頭の牛たち、そしてひきこもり犬一匹は、夢のような美しい地で、魔法にかけられたように幸せに暮らしていたのです。
男は、イキイキとしていてミルクを作り、女は愛らしく美しくキラキラとしています。
しかし、幸せすぎるルシンダは、ふたりの幸せが、このまま永遠に続くのかどうかと、気になります。
自分の親友のドロソファラにそそのかされた彼女は、ふたりの愛の“値段”を知ろうとして彼を試そうとします。
すべてを台無しにしてしまうほどのいたずらをしかけたりして、彼を驚かせていきます。
しかしこれこそが、彼女にしかけられた罠だったのです。
あっという間にルシンダは、親友ドロソファラにロブを奪われてしまいます。
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そして、彼女はロブを永遠に失う前に、愛の魔法について学ばなければならないことを知るのでした。
結婚を前にした幸せなルシンダに、愛の試練が見舞う。
ふたりの仲に嫉妬する女友達、ふたりの愛を呪縛する、さまざまなできごと。
失いかけた愛を取り戻すための方法はひとつ…。
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■DATA |
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『ミルクのお値段』
THE PRICE OF MILK
2000年/ニュージーランド/87分/カラー/35mm/シネマスコープ/ドルビーデジタル
監督/脚本: ハリー・シンクレア
製作総指揮: ティム・サンダー
製作: フィオナ・コップランド
撮影: レオン・ナービー
編集: クシュラ・ディオン
美術/衣装: カーティス・キャメロン
音響デザイン: クリス・バート
演奏:モスクワ・シンフォニー・オーケストラ
指揮:ヴァレリー・ポリャンスキー
出演: ダニエル・コーマック、カール・アーバン、ウィラ・オニール、マイケル・ローレンス、そして、117頭の牛とひきこもり犬一匹
配給:巴里映画
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●プチョン国際ファンタスティック映画祭2001グランプリ受賞
●東京国際ファンタスティック映画祭2001グランプリ受賞
●ニュージーランド・フィルム・アワード2000 ベスト・シネマトグラフ賞受賞
●オークランド映画祭2000招待作品
●エジンバラ映画祭2000 招待作品
●トロント映画祭2000招待作品
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『ミルクのお値段』配給会社 巴里映画 公式サイト
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■ニュージーランド生まれの監督、ハリー・シンクレア |
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前作『TOPLESS』で一躍有名になったハリー・シンクレア監督は、はじめはオークランドで役者として活動していました。
その後、映画製作、レコーディング、ライブ活動を行なうようになり、89年に製作した短編『The Lounge Bar』が、アメリカン・フィルム&ビデオ・フェスティバルの最優秀選考に残ったことで話題になりました。
その後、連続深夜TVシリーズ『TOPLESS THE TV』('97)を手掛けるようになりましたが、このTVシリーズが人気番組になり、映画化がはじまりました。
こうしてシンクレア監督は、初の長編映画『TOPLESS』を撮るに至ったのです。
その『TOPLESS』は本国ニュージーランドをはじめ世界各国の映画祭で多数の賞を受賞しました。
シンクレア監督の第2作目にあたるのがこの『ミルクのお値段』。
2000年カンヌフィルムフェスティバルでプレミア上映をはじめ、各国の映画祭などで上映され、多くの人々の目に触れる機会を得ました。
全米では、公開の際に多くのメディアにとりあげられました。
日本でも東京ファンタスティック映画祭で知ったという方も多いことでしょう。
その際、来日したシンクレア監督は、映画と同じ優しさのこもった素顔を見せてくれました。
最新作は、第3作目にあたる『TOY LOVE』(02)を製作中だそう。
また、親友でもあるピーター・ジャクソン監督の最新作『ロード・オブ・ザ・リング』(01)に本作品の主演男優カール・アーバンとともに出演しています。
こちらも楽しみです。
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■ニュージーランドってどんな国? |
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『ミルクのお値段』が作られたニュージーランドは 南半球に位置する国です。
日本とは、ちょうど逆にあたるので、日本のような四季の変化はありません。
年間を通して比較的温暖な気候が続くため、アウトドア・スポーツを楽しむ観光地として人気があります。
また、南十字星や右巻の渦巻きなど、南半球ならではの光景が見られるのも特徴のひとつです。
国土は26万6200平方キロメートル。これは日本の3/4の面積にあたります。
国立公園や森林保護区がたくさんあり、自然環境の保護に取り組む緑豊かな国として知られています。
手付かずの自然がそのまま残っている所もあり、ユニークな動物が多く生息することでも有名です。人口は約380万人。
大部分はイギリス系白人ですが、先住民族であるマオリ人が総人口の14%を占めます。
公用語は英語ですが、第二公用語はマオリ語です。マオリ族は、独創的な文化を持った最も人口の多い少数民族なのです。
現在もマオリの文化を継承して生活するマオリ族の方々が、実は、本作『ミルクのお値段』にも出演してくれています。
大自然を誇るニュージーランドですが、文化の発展にも熱心に取り組んでいます。
国内最大の文化イベント“ニュージーランド・フェスティバル・オブ・アート”をはじめ、多くの文化的イベントが開催されています。
国際映画祭も行われており、“ニュージーランド国際映画祭”は今年で26周年を迎えます。
国内8都市を巡回するこの映画祭の期間中は、街が映画一色になるそうです。
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