【FILE 44】南アフリカ共和国発 『アマンドラ! 希望の歌』
 8月7日よりヴァージンシネマズ六本木にてレイトショー

2010年のW杯開催地に決まった南アフリカ共和国。かつてこの地で行われていたアパルトヘイトにも負けず、音楽で国を変えた驚くべき人々の物語を紹介します。

■STORY
 1940年代、南アフリカで人種隔離政策“アパルトヘイト”が施行される。「肌の色が違う」というだけで、迫害を受けた黒人たち。選挙権もなく、武器もなかったが、彼らはどんなに痛めつけられても歌を歌うことを止めなかった。そして1991年、歌による革命は、ついに成功を収める。
 反アパルトヘイト運動の闘士たちと、ミュージシャンのインタビューを織り交ぜながら、アパルトヘイトに立ち向かった人々に迫る。
■公式サイト> http://www.amandla.info/index.html


■歌が持つパワー
 “歌”というものは計り知れないパワーを持っている。たとえ言葉が通じなくても、音楽を通じて何だか分かり合えるような気がするし、彼らと一体感を味わうことも出来る。そして“歌”は、世界をも変えることが出来るんだということを、この映画は教えてくれる。

 南アフリカ共和国といえば、あの悪名高き人種隔離政策“アパルトヘイト”が長い間、横行していた国として知られている。人口わずか16%の白人が、約84パーセントもの黒人や有色人種を支配・差別していたこの政策は、約40年に渡り黒人たちを苦しめた。
 選挙権もなく、武器もなく、常に死と隣りあわせだった状況下、彼らは大勢で集まり、歌い続けることで、強大な力に立ち向かっていった。この映画では、そんな彼らの闘いを反アパルトヘイト活動家やミュージシャンたちのインタビューを通して年代ごとに振り返っていく。

 本作が長編デビュー作となる監督のリー・ハーシュは、今年で32歳になるが、反アパルトヘイト運動に興味を抱いたのは、高校生のころからだという。きっかけは、友人の一人が南アフリカからの亡命者だったこと。彼は、そのころより反アパルトヘイト運動を開始するが、活動の中で自分たちの声を発信する場所がないというのは、いかに無力なことかと痛感したという。そして9年に及ぶ取材を経て映し出されたのは、情勢がどんなに悪化しようとも、歌い続ける黒人たちの逞しさだ。
我々は国のために泣いている
  我々の国は乗っ取られた
  白人によって
  われら黒人は
  国のために泣いている

  我々が何をした?
  我々が何をした?
  唯一の罪は黒人であること
     --「ティナ・シズウェ(哀歌)」


  神よ アフリカにしゅくふくよ
  アフリカよ 立ち上がれ
  神よ 祈りを聞きたまえ
  われらに祝福を
    --「神よ アフリカに祝福を(人民の聖歌)」

 ときに悲しく、激しい歌の数々は、やがてネルソン・マンデラを27年間にも及ぶ投獄から解放し、彼を大統領へと導き、そしてついにアパルトヘイトを撤廃させるにいたる。

 このタイトルになっている“アマンドラ!”とは、“Power to the people”という意味だそうで、まさに一人の歌声が、何十人の歌声になり、何百人になり、何千、何万となったとき、武器を持たずとも圧倒的な力を発揮することを、身をもって教えてくれている。

 ある一部の権力者たちの思惑で、一国の、いや世界中の運命が簡単に変わることを実感する昨今、我々も何かを発しなければいけないときなのだろうか。それは無力なようで、実はすごい力を秘めているのかもしれない。


■DATA
2002年サンダンス映画祭 観客賞、表現の自由賞受賞作品

原題:AMANDLA! A REVOLUTION IN FOUR PART HARMONY
2002年/南アフリカ・アメリカ/104分
配給:クロックワークス

監督:リー・ハーシュ 
出演者:ネルソン・マンデラ/ドリー・ラテベ/ソフィー・ミグナ


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