【FILE45】ロシア発『父、帰る』
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9月11日より日比谷シャンテ シネほかにてロードショー
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『惑星ソラリス』を生んだアンドレイ・タルコフスキーの国、ロシアから世界を震撼させた映画が登場。ロシアの原風景の中で描かれるある家族の物語をご紹介します。
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■STORY
母と祖母と暮らすアンドレイ(ウラジミール・ガーリン)と弟イワン(イワン・ドブロヌラヴォフ)の家に、ある日突然、父(コンスタンチン・ラヴロネンコ)が12年ぶりに帰ってくる。写真でしか見たことがない父の出現にとまどう2人だったが、次の日、兄弟は父に連れられ旅に出ることに。父の存在を喜ぶ兄と、素直になれないイワン。ぎこちない関係のまま、3人は目的地の無人島へと到着する。
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(c)REN FILM, 2003 |
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■公式サイト> http://www.chichi-kaeru.com/
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■父の突然の帰還に揺れる兄弟のざわめきを綴る |
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観終わったあとに深い衝撃を受け、様々なことが頭をよぎった。一体なぜ父は突然帰ってきたのか? あのとき父が言いたかった言葉とは何だったのだろう? あの“箱”とは何なのか? そして、あの兄弟の今後はどうなるのだろうか…?
ロシア出身の監督アンドレイ・ズビャギンツェフは、全く無名ながら昨年のヴェネチア国際映画祭で、新人監督賞を受賞、さらに北野武らを抑え最優秀賞である金獅子賞を獲得するという快挙を成し遂げた。これまでは主に俳優として活躍し、本作が初の長編映画。まさに“彗星のごとく”登場してきた監督である。
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ストーリーはいたってシンプルだ。12年ぶりに帰ってきた父と、初めて父という存在を知った兄弟。3人が旅した数日間が描かれるのだが、秀逸な脚本と美しい映像、そして随所に散りばめられた宗教的なモチーフが、この旅を先の読めないサスペンスフルなものへと変えている。
『セブン』のデヴィッド・フィンチャーも用いた“銀残し”と呼ばれる手法で描かれたその風景は、空や海、荒涼とした光景でさえも、印象的に美しく描かれる。その静謐でエモーショナルな光景をバックに、親子のヒリヒリとした空気が痛いほど伝わってくるのだ。
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突然現れた父の態度は、実にそっけない。しかし観ているほうは次第に、彼が子供たちに男としての自立や逞しさを教えようとしているのだとわかってくる(それは皮肉な形で報われることになるのだが)。そんな気持ちを知ってか知らずか、兄アンドレイは素直に父といる嬉しさを表し、弟イワンは反発を繰り返す。
「あんたなしで今までうまくやってこれたんだ」。頑なに父という存在を拒むイワンは果たして心を開くことができるのか?
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家族とは何か? この作品は観客に答えを求めない。全ての旅を終えたあとに映し出されるモノクロの写真が、胸を打つ。
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■映画から観るロシア |
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■1991年にソ連崩壊。その12年後となる2003年に、本作『父、帰る』は製作された。イワンの設定年齢は12歳。父を知らないと同時に、“ソ連”を知らない子供でもある。
■ロシア人の名前は、ミドルネームに「父姓」を名乗る風習がある。家族および社会にとって、父の存在は重要なものとなっている。
■イワンの台詞などは、ロシアを代表する作家、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の影響を受けている。
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■DATA |
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2003年第60回ヴェネチア国際映画祭グランプリ金獅子賞、新人賞監督受賞
原題:VOZVRASHCHENIE 2003年/ロシア/111分 配給:アスミック・エース
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ 脚本:ウラジーミル・モイセエンコ/アレクサンドル・ノヴォトツキー 撮影:ミハイル・クリチマン 出演:ウラジーミル・ガーリン/イワン・ドブロヌラヴォフ/コンスタンチン・ラヴロネンコ
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