【FILE48】スペイン発『海を飛ぶ夢』
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実在の人物ラモン・サンペドロの手記を元に、全身麻痺の障害を負った主人公の壮大な心の旅路を描いた真実のドラマ『海を飛ぶ夢』。今回は特別に監督のアレハンドロ・アメナーバルと主演のハビエル・バルデムのインタビューを掲載。
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■自分が考えていた以上に、この作品を作ることに意義があると気づきました。 |
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監督 アレハンドロ・アメナーバル
――『アザーズ』のあとに、なぜ『海を飛ぶ夢』を撮ろうと思ったのですか?
数年前にラモン・サンペドロの本を読んだとき、私は彼の語り口に完全に心を奪われました。そして、ラモンの周囲にいた人々に質問をし始めた私は、自分が考えていた以上に、この作品を作ることに意義があると気づきました。ラモンのストーリーは、語り継ぐ価値のあるものです。この映画を作ろうと決めたとき、他の何よりも重要だったのはストーリーでした。製作費や役者よりも、です。 |
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――フィクションと言える部分は?
ドラマチックな流れを作ったり、ラモンの経験を2時間の映画に凝縮するためにキャラクターを省略したり、何人かの人物をひとりのキャラクターにまとめたりしたところです。 たとえば、フリアというキャラクターは、数名の女性を複合させて作ったキャラクターです。ラモンの実に感心すべき点は、彼はつねにハーレム状態にいたという事実です。フリアは、彼の身体が不自由になったあとで出会い、彼を愛した女性たちを具体化させたキャラクターなのです。 |
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■『海を飛ぶ夢』は、確実にラブストーリーです。色々な愛の形を見せているのです。 |
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――「愛」はこの映画の重要なテーマですか?
『海を飛ぶ夢』は、確実にラブストーリーです。色々な愛の形を見せているのです。ラモンの物語を、彼のベッドを囲んだ何人もの女性の視点から見せています。まず、自分の問題を聞いてほしくてラモンに会いに行っていたロサとの間には、保護的な愛が築かれています。いっぽう、フリアとの間には知的な繋がりがあります。彼らは似た悩みを持つものの、生と死に対して、まったく異なるビジョンを持っているのです。 さらに、ラモンと甥の間には父子のような関係がありますし、兄ホセとの間の兄弟愛やミス・コミュニケーションも重要です。そして、母親のような深い愛情を見せる義姉のマヌエラとラモンのあいだには、暗黙の了解の関係が築かれています。 |
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――『海を飛ぶ夢』の監督をつとめたことは、あなたの中で大きな一歩となりましたか?
人間と死を語るこの映画は、私にしか作れなかったでしょう。私の作品には、つねにそれがテーマとして敷かれていました。私は人間そのものや、生きる意味を与えるもの、そして、その意味を引き裂くもの、つまり死に興味があるのです。ラモンを“腰抜け”とか、“連帯責任の意味を知らない”と言うならば、それは彼の自由の権利を理解しようともせず、自分勝手な判断を下しているのです。“勇敢”という言葉を誰かに当てはめるとするなら、ラモン以上に適当な人はいません。 『海を飛ぶ夢』が第一に描いているのは、旅です。生と死への旅。それは、ガリシアへの旅――海へ、そしてラモン・サンペドロの中に広がる世界への旅なのです。 |
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■シンプルで飾らないところを持ち合わせた彼は、とても魅力的でした。 |
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主演 ハビエル・バルデム(ラモン・サンペドロ役)
――ラモン・サンペドロの役のどこに惹かれて、仕事を引き受けたのですか?
ラモンが、愛、死、生命、性といった大きな題材を口にしても、とても自然に聞こえます。私は、彼のそんなところに惹かれました。彼は、28年間あたためてきた知恵を、客観的に捉えることができる人なのです。 ある意味、彼はとても賢明な人でしたが、同時にとてもシンプルな人であり、誰かに無理強いすることも決してありませんでした。読み書きも自由にできない状況のもとで、彼は意志の力だけで知識を貯め込んでいったのです。知力、故意に形作られてきたもの、そしてシンプルで飾らないところを持ち合わせた彼は、とても魅力的でした。 |
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―― 実在の人物を演じることで、どのような工夫をしましたか?
実在のキャラクターを演じるとき、本来のその人自身や、その人が私たちに残してきたものを汚していないか、必ず不安になるものです。 ラモンは、彼の本を通して、私たちに死や、生身の体を持つこと、一方的な愛、そして無償の愛を考えさせ、私たちにとてもパワフルな教えを残してくれています。そのようなキャラクターを演じるとき、役者は自分の中にその人が入りこめる場所を作ってあげなくてはなりません。役者は単なる媒体にすぎないのです。自分の意見をそのキャラクターに反映させてはなりません。たとえば、私は死を恐れていますが、それは私のキャラクターの役作りには全く役に立たないことです。
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■ラモンが残したメッセージを決して無駄にしてはならないと固く思いました。 |
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――手足を動かせず、ガリシアのアクセントで話し、自分より20歳年上の人物を演じるうえで、とくに苦労した点は?
肉体的な面で、とても苦労しました。そのうえ、私は話し方がとても下手で、自分の声も嫌いなので、声域を広げたり、人々の興味を引く語り方を追及していったりすることが、私にとっての最大のチャレンジでした。私が動かせたのは、首と、頭と、目だけです。いつもキャラクターのフィジカル面にたよって演技している私にとって、それがどれだけ難しかったことか。 しかし、毎日の5、6時間に及ぶメイク時間のおかげで、私は他のキャストやクルーたちと、別の方法での接し方を学びました。それは、体を動かさず、ジェスチャー抜きで、声だけでコミュニケーションを取るということです。
――ラモンの死を演じた日は、どのように撮影に挑みましたか? |
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そのシーンに備えて、私は、実際のラモンの死の映像を、何度も何度も見なくてはなりませんでした。ラモンの痛みを利用しているように感じましたが、彼がどのように苦しみ、死んでいったかを見て、ラモンが残したメッセージを決して無駄にしてはならないと固く思いました。 この映画は、ラモンの本当の苦闘を知らなかった人々に訴えかけているのだと思います。この映画が多くの人に鑑賞されることに意義があるのだと、私もアレハンドロと同様に思います。なぜなら、彼には深い苦悩の中、ひとりで死んでいくしか道がなかったからです。 |
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