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2006年07月28日

2006年エミー賞 新旧ドラマの対決やいかに?

例年にない猛暑のLAだが、プールに飛び込みたくなる暑さになるとやってくるのがエミー賞。はやくも今年の受賞予想が新聞紙上を賑わせている。「24」や「ソプラノス」等のロングランドラマに混じって新しい番組がいくつも登場し見所満載の今年のエミー、王冠は誰の頭上に輝くのか。

今年のノミネート作品をざっと紹介してみよう。まず注目のドラマ部門から。
ノミネートされているのは5作品。世界中でブームを巻き起こした「24」、マフィアの家庭を描いた異色ドラマ「ソプラノス」、そしてホワイトハウスの内幕をドラマ化した「ウエストウイング」。この辺はエミーの常連だが、これに加えて新顔のドラマが二つノミネートされた。

一つは2004年開始のFOXの看板ドラマ「HOUSE」。主人公の医師、グレッグ・ハウスと、その若きスタッフたちが、医療に関わるミステリーを解決していくサスペンスドラマ。サイエンスの薀蓄を盛り込んだサスペンスとくれば、警察の鑑識を舞台にした「CSI」が思い浮かぶが、キャスティングの良さ、ストーリーの良さで、ややマンネリ化した「CSI」を上回る面白さ。すっかり人気番組にのし上がった。
そしてもう一つ、昨年3月にスタートした青春医療ドラマ?「Grey’s Anatomy」も今年の有力候補だ。シアトルの病院を舞台に、仕事に恋に、様々な悩みを抱えながらも奮闘する若いインターンたちの生き様を描いた作品だが、独特のサワヤカさが受けて、1,2を争う人気ドラマとなった。文句なしのノミネートで、ドラマ部門の最有力候補との呼び声も高い。ところでこの「Grey’s Anatomy」、新たなアジア系スターを生み出した。女性インターン役のクリスティーナを演じるサンドラ・オーだ。彼女は最優秀助演女優賞の本命となっている。

「24」「ソプラノス」「ウエストウイング」の旧勢力対、ニュージェネレーションの「HOUSE」と「GREY’S ANATOMY」の対決が今年の見所だが、「ウエストウイング」はすでに終了しているし、「ソプラノス」も今年で終わる。旧勢力中の最有力候補は「24」だが、「HOUSE」と「GREY’S ANATOMY」の新ドラマ勢も強力で、ホットな戦いになりそうである。個人的には何度もノミネートされながら一度も受賞していない「24」に獲ってほしいが、結果は蓋を開けるまで分からない。

それにしても、新作品が両方とも医者を主人公にしている点が面白い。ちょっと前までは弁護士ドラマのブームで、弁護士志望の若者がどっと増えたが、これからはメディカルスクールの受験者が増えそうな予感。

次にコメディー部門。文化的・言語的な背景が異なる国ではジョークが分かりづらいため、英語圏以外の国への輸出が難しい。そのため日本では馴染みのない作品が並ぶが、今年の注目株はCBSのシットコム、「Two and a Half Men」。主演はなんとあのチャーリー・シーンだ。自由気ままが信条の作曲家、チャーリー・ハーパーと、その弟と10歳の甥っ子の3人が繰り広げるドタバタコメディー。アメリカのコメディーによくあるパターンではあるのだが、チャーリー・シーンの絶妙のトボケ方が受けて、コメディー部門の有力候補になっている。「ウォール・ストリート」の主演等で、かつてはハリウッドの第一線級にいた彼も、映画では最近ヒットに恵まれていない。「過去の人」になりかけていたシーンを救ったのがこの「Two and a Half Men」なのだ。シーンはコメディー部門の最優秀主演男優賞にもノミネートされている。ちなみにお父さんのマーティン・シーンは「ウエストウイング」の大統領役でドラマ部門の主演男優賞に5回目のノミネート。親子でダブル受賞なんて事があるといいのだが。

という訳で、新旧ドラマの対決が見所になりそうな今年のエミー賞、皆で「24」の受賞を祈願しようではありませんか。


TEXT BY 岩下慶一

投稿者 eigafan : 12:38 | トラックバック

2006年07月20日

新法則?自主制作映画で夢の豪華キャストを得る5つの方法

ここハリウッドのみならず、アメリカでは通年星の数ほどの自主制作映画が作られます。大監督・有名脚本家といった未来の成功を夢見る映画クリエーター達は、日夜映画制作に没頭。ロサンゼルスのあちこちで、彼らの撮影風景を見かけることも少なくありません。けれど、そのうち公開まで漕ぎ着く作品はほんの一握り。まるでロト(米国版宝くじ)にでも当たるような確率の世界ですが、5月に行われたニューヨーク・トライベッカ映画祭で話題となったインディーズ映画「Mini’s First Time」は、こうした難関を乗り越えた、極めて異例の作品と言えるでしょう。

「Mini’s First Time」は、LAを舞台に家族の崩壊を描くブラックコメディ。ニッキー・リード扮するティーンを主人公に、ドラッグ、近親相姦、裏切り、殺人、と何でもあり。タブーの連続といったダークなストーリーですが、何がすごいって、まずその豪華な顔ぶれ!プロデューサーにはかのケビン・スペイシーが名を連ね、メインキャストはアレック・ボールドウィン、キャリー=アン・モス、ルーク・ウィルソン、ジェフ・ゴールドブラム、そしてニッキー・リード。ここまで来るともう、自主制作の域を超えていると言っても過言ではありません。更に驚いたことに、ニック・グーテ監督にとって本作は監督デビュー作品。おまけに自身で脚本も手がけています。そんなハリウッドっ子達も興味津々の「一体どうやって?」を、グーテ監督が5つの法則として明かしました。

1、演劇学校に行くべし
グーテ監督曰く、映画監督というものは役者達の信頼を得てこそ良い作品が仕上げられるとのこと。演劇を理解し、どれだけ役者が大切かを理解することが成功への一歩だそうです。実際にグーテ監督は、ジェフ・ゴールドブラムも講師を務める演劇学校に2年半通ったそう。もしかしたら、そこでゴールドブラムとの交流が生まれたのかも。コネクションも大切な鍵のひとつとなるこの世界、そういった意味でもグーテ監督はなかなかの策士のようです。


2、目と耳を常に「オープン」に
グーテ監督夫人も脚本家であり、彼の脚本にはスターが必要だとアドバイスしていたそうです。そんな折グーテ監督がたまたまラジオを聴いていたら、ケビン・スペイシーが「新しい才能と若手発掘のための製作会社作り」についてインタビューを受けていたとのこと。それからすぐに、脚本をサンプルとしてスペイシーのプロダクションに送り、とんとん拍子に本作品の製作が実現したそう。いつどこにチャンスやブレイクが来るかは誰にも分からない、というのが監督の弁。常に情報を集め、更に迅速な行動力を持つことが成功の秘訣かもしれません。


3、「グレート」な脚本を書くべし
素晴らしい脚本が「戦い」の半分を占める、というのがグーテ監督の持論。脚本家でもある監督ならではの視点であり、興味深い脚本こそが映画の成功を決めるということでしょう。確かに、最初のサンプルで誰の目にも留まらなければ今日の映画化は無かったかもしれません。当たり前のようで難しいこの教訓。もしかしたらこれが一番の難関かもしれませんね。


4、幸運を掴め
この映画で母親役を好演しているキャリー=アン・モスをキャスト出来たのは、監督にとって本当にラッキーだったようです。実は「M:I:III (2006)」の監督変更などゴタゴタの際に、当初そこにキャストされていた彼女が降板することに。そこに目を付け、出演依頼をしたのがグーテ監督だったとか。この映画で、今までとは雰囲気の違った役柄に挑戦しているキャリー=アン・モス。結果的に、彼女にとっても監督にとっても「吉」と出たようです。


5、まずアレック・ボールドウィンをキャストしろ
ちょっと分かりづらいこの最終項目。平たく言うと、最初に大物を配役することで芋づる式に良いキャストが得られるということです。ボールドウィンが出演を承諾したあと、2日の間にルーク・ウィルソン、キャリー=アン・モス、ジェフ・ゴールドブラムが出演を快諾。むしろ、そんなに共演を望まれるアレック・ボールドウィンの底力に脱帽、といったところです。


そんな豪華キャストによる鮮烈デビューを果たしたニック・グーテ監督。彼のユニークな5つの法則は、ハリウッドの新しいスタンダードになるのか否か?「Mini’s First Time」は7月14日からNYとLAで公開、他各都市でも順次公開予定。キャストでこれだけの話題をさらった本作品、インディーズ映画の枠を超えてどこまで注目されるのかが楽しみです。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 22:16 | トラックバック

2006年07月13日

アメリカTVの祭典・エミー賞のノミネート作品発表

先日、7月4日は米国独立記念日。アメリカは今年で230回目のお誕生日を迎えることになりました。連日異例の暑さが続いている今年のロサンゼルスでは、何と1500万人!ものイベント好きな人々が、マリブ沿岸からサンペドロ周辺までのビーチに集結。パレード見物やバーベキュー、そして恒例の花火大会のため、待ってましたと言わんばかりに海辺は早朝から行楽客でごった返しました。

ところで、一年を通してロサンゼルスで花火が売られるのは、独立記念日と大晦日シーズンの2回だけ、というのはご存知でしたか?銃声と間違えちゃうから、調子に乗って火事が多発しちゃうから、などなど色々な防災上の理由があってのことですが、この日も厳戒態勢のもとに花火を販売する特設ワゴンには長蛇の列ができ、数々の花火大会と併せて多くの人々が「Fireworks」を楽しんだ一日となりました。

そんなお祭りムードが冷めやらぬ7月6日、本年度で58回目となる「Emmy Awards」のノミネート作品が発表されました。今年は多くのテレビっ子達が「おや?」と眉をひそめる結果となった模様。というのも、本年度からはエミー賞会員の間で「もっと新しい番組や関係者に投票しよう!」という動きがあったとのこと。従来の「長寿番組だろうと何だろうと、とりあえず人気の作品に1票…」からはガラッと志向が変わった様子です。その結果、昨年の話題をさらった「Desperate Housewives」や「Lost」、日本でも人気の「Will & Grace」は何かしらのカテゴリーでは候補となっていますが、ベストドラマ賞やベストコメディー賞からは洩れています。

今年のベストドラマ賞にはまず、日本でも大ブームとなった「24」がエントリー。ご存知、キーファー・サザーランド扮するジャック・バウワー捜査官が、テロリスト集団と戦うサスペンスドラマ。最多の12ノミネーションを誇る堂々の候補作品となっています。2001年の初回放送からずっと変わらぬロングヒット。こちらはあまりの人気に5年目のプレッシャーもどこ吹く風、といったところです。もうひとつは、医療系ドラマの「Grey’s Anatomy」が選出されています。映画「サイドウェイ」でも好演が光っていたサンドラ・オーがメインキャストのひとり。緊迫する医療現場での人間ドラマが大人気の作品です。また、アメリカ人が大好きなベストコメディー賞には「Arrested Development」他4作品がノミネート。これらも、結果が楽しみな候補達です。

このエミー賞には、90ものカテゴリーと各々のノミネーション数があり、テレビ関係者達は毎年その候補と結果に一喜一憂させられます。あまりに多いその「席数」のため、何かに引っかからないほうがおかしい、もし何にもノミネートされなかったらよほどその番組がつまらないのでは…?なんて、超辛口な意見も飛び出すほど。候補番組のすべてはここにはとても書ききれません。ぜひエミー賞ホームページにてチェックしてみてください。ドラマの他にも、アニメやリアリティーショーなど、今のアメリカ人の嗜好や流行りが見えてくるかも?

再度、あまりにも多いカテゴリー数のため、エミー賞の発表は2週に渡って放送されます。8月19日にはエントリーされた最優秀俳優賞や女優賞、映画に負けず劣らずのテクニカルアチーブメント賞、いわゆる技術功労賞など63部門が表彰され、8月27日に残り27部門の受賞作品が発表される予定。上記のベストドラマ賞やベストコメディー賞が発表されるこの夜、今年は司会者に有名番組「Late Night」のホストであるコナン・オブライエンが選ばれています。ふんわり横分け・七三ヘアーの辛口面白コメンテーターが贈る本年度のエミー賞。これだけでも見逃せないお祭りになりそうです。


エミー賞・候補者全リスト


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 17:33 | トラックバック

2006年07月06日

LAフィルムフェスティバル 期待の新作が続々と登場

初めまして!今週からFromハリウッドを担当することになりましたアベマリコと申します。ゆるく温かい目で見守って頂ければ幸いです。今後も、気になるハリウッド情報を続々とお送りしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします:)

連日30℃を超え、ちょっとした異常気象のロサンゼルス。梅雨の日本より一足お先に夏真っ盛り!といった状況です。街の老若男女はこぞってアイスドリンクを求めカフェに走り、フラペチーノ片手にグッタリ…。「カラッと爽快なロスの夏」はもしかしたら迷信になるのでは?そんな今年の蒸し蒸しと暑いハリウッドから、更に熱いフィルムフェスティバルのレポートです。

本年度で12回目となる「ロサンゼルスフィルムフェスティバル」が、6月22日から7月2日までの10日間開催されました。事前に募られて審査を通過した長編・ドキュメンタリー・短編・ミュージックビデオが、10日の間に余すところ無く上映され各賞を競い合います。このフェスティバルは、あの「Los Angeles Times」と大手スーパーマーケット「Target」がメインスポンサーということもあり、最優秀長編とドキュメンタリーへの賞金が$50,000と超破格。今年は最優秀長編にスティーブ・コリンズ監督の初長編映画「Gretchen」が、最優秀ドキュメンタリーにエイミー・バーグ監督の「Deliver Us From Evil」が選ばれました。

昨年はハリウッドのど真ん中にある、ここを知らない人はモグリ?というほどに有名な映画スポット「The Arclight」で行われましたが、今年はハリウッドから車で20分ほどのウエストウッドエリアでの開催。この地域はUCLAがあることで有名で、大学所有の施設や数々の老舗映画館・レストラン・ホテル・アパレルショップが立ち並ぶオシャレスポットです。先日のサンダンスフィルムフェスティバルでは、サンフランシスコの「Kabuki Theater」がベースになると発表されましたが、LAフィルムフェスティバルも本年度よりここを本拠地にするとのこと。またひとつ、新しい映画観光スポットとしてウエストウッドが賑やかになりそうな期待大です。

この映画祭の特徴のひとつは、新進気鋭の映画クリエーター達の作品上映にとどまらず、クラシック作品も合わせて上映してくれるところ。一般の観客達も気軽に足を運べ、往年の名作を大スクリーンで鑑賞出来ます。毎年選出されるゲストディレクターに今年はジョージ・ルーカスが選ばれ、監督のお勧め映画が上映されました。奇才スタンリー・キューブリック監督の「Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb (1964)」(邦題:「博士の異常な愛情 / または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」)、巨匠ジャン・リュック・ゴダール監督の「Masculine Feminine (1966)」(邦題:「男性・女性」)、そして我らが黒澤明監督の「The Seven Samurai (1954)」(邦題:「七人の侍」)の3本で、これらの名作を求める多数の観客でこちらも大盛況でした。特に「七人の侍」に関しては、ルーカス監督が自身の「Star Wars」シリーズで黒澤映画から多大なインスピレーションを受けたというエピソードが余りにも有名なお話。日本だけじゃなく、世界中で黒澤明監督の作品が愛され根付いているという事実、何だか日本人として誇らしいですよね。

今年のフェスティバルでひときわ注目を集めていた作品が、先日のカンヌ映画祭でも大好評だった「A Scanner Darkly」です。原作は同名のベストセラー小説で、リチャード・リンクレイター監督が「Waking Life (2001)」(邦題:「ウェイキング・ライフ」)でも用いたロトスコープの手法によるSFアニメ映画。出演はキアヌ・リーブス、ロバート・ダウニー・Jr、ウィノナ・ライダーなどなどで、あの独特な「揺れた」映像感覚がしっかりとよみがえっています。ロサンゼルス郊外を舞台に、ドラッグ犯罪と政府スパイ達のしがらみを描いた作品。各映画祭でガッチリと前評判を掴んでいるこの1本、ストーリー・キャスト・映像のどれを取っても大ヒットの予感です。

映画の都ハリウッド近辺という場所柄もあり、今年もLAフィルムフェスティバルは大盛況のうちに幕を閉じました。本年度の共同議長のひとりであり、「Star Wars」でハン・ソロを演じたハリソン・フォードも来場。集まった映画制作者達に「我が道を行け」と激励しました。今までに作られた公式だけにとらわれずオリジナリティを追求する、今後の映画制作を担う新しいクリエーター達の活躍が今から楽しみです。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 15:31 | トラックバック