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2006年08月31日

第58回エミー賞・「あの」ドラマに栄冠!

去る8月27日、毎年多くのファンが釘付けとなるアメリカTVの祭典、エミー賞授賞式が開催されました。会場となったのはロサンゼルスで今、最もオシャレスポットが集まるジェファーソン通りに面したShrine Auditorium。以前にMTVアワードなども行われた大講堂です。歌ありダンスありコントありの一大イベントは、NBCで放映されました。エミー賞での司会はこれが2度目となる、コメディアンのコナン・オブライエンもかなりノリノリで、彼のパフォーマンスと司会進行は会場を大爆笑の渦に包みました。

最優秀賞に選ばれたのは、ドラマ部門に日本でもお馴染みの「24 」(Fox)。シーズン開始以来、ノミネートはされるものの授賞は逃し続けてきた本作も、第5シーズンにして初の受賞となりました。更に、最優秀主演男優賞にも「24」より、バウアー捜査官ことキーファー・サザーランドが選ばれています。ダブル受賞の快挙に、「誰しもに特別な夜が訪れるのなら、私にとっては今夜がその夜」とコメントしています。”Finally!”=「とうとうやった!」という言葉がピッタリの輝かしい栄冠はこのベテラン俳優が持ち帰ることとなりました。

コメディ部門には、前評判の高かった「Two and a Half Men」(CBS)や「Arrested Development」(Fox)を押し退け、ダークホース的存在の「The Office」(NBC)が受賞。アメリカのオフィスワーカーの日常をコミカルに描いたこのコメディは、もともとイギリスで放映されていた人気番組で、アメリカ版に改作するのは難しいのでは?などと囁かれていましたが、そんな懸念も何のその。堂々の初受賞となりました。第2シリーズよりiTunesでのダウンロードを開始し、iPodでいつでもどこでも鑑賞を可能にしたことも功を奏したのではないでしょうか。

一方、昨年度の話題をさらい、本年度も引き続きファンを増やし続けている大人気ドラマ、若きインターン達の日々を描いた「Grey’s Anatomy」(ABC)や「House」(Fox)、リアリティー・ショーの「American Idol」(Fox)は各々11部門にノミネートされていましたが、主要部門の受賞はならず。今年で放映終了となる人気番組「Will & Grace」(NBC)と「Huff」(Showtime)は、最優秀コメディ助演女優賞と最優秀ドラマ助演女優賞を、揃ってメーガン・ミュラリーとブライス・ダナーが受賞しています。

更に、各受賞者・受賞作品の発表に加え、今年の始めに逝去されたアメリカテレビ界の重鎮、名プロデューサーとして知られるアーロン・スペリング氏を偲んだ特別コーナーが設けられました。日本では、「ビバリーヒルズ高校白書」のドナ役でお馴染みとなった女優トリ・スペリングの父親として有名かもしれません。氏のプロデュース作品である元祖テレビ版「チャーリーズ・エンジェル」の主演女優達、ケイト・ジャクソン、ファラ・フォーセット、ジャクリーン・スミスが揃って舞台に登場。懐かしの面々が会場を盛り上げる中、スペリング氏の長年の功績を称え冥福を祈りました。

新作と旧作が入り混じる、波乱の接戦となった第58回エミー賞。納得の受賞もあれば、下馬評を覆す結果もあり、テレビの前で大騒ぎしたファンも多かったようです。エミー賞の裏番組として大作映画が放映されたこともあり、視聴者数は前年比で14%落ち込んだそうですが、それでも1610万人もの人々が見守った2006年度のエミー賞。詳しい全受賞結果は下記のサイトでご覧下さい。そこから来年の受賞作品を予想するのも、また一興かもしれません。

エミー賞・全受賞結果

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 15:57 | トラックバック

2006年08月24日

大盛況!ArcLight ドキュメンタリー・ショーケース

夏休みシーズンに合わせて、大作映画が目白押しのBox Office。どの映画を観に行こうか、予定を調整するのも一苦労といった映画ファンの方々も少なくないはず。話題作が続々と公開されているここロサンゼルスでも、映画館前はチケットを求める人々で連日賑わいを見せています。新作などは、目の前で次の回が満席に…なんてちょっと悲しい出来事もありました。そんな中、映画フリーク達の手帳を更に真っ黒にしてしまいそうなイベントがいよいよスタート!ハリウッドのど真ん中に位置する大型映画館、ArcLightでは8月18日から8月24日の1週間、”Theatrical Documentary Showcase”が開催中です。
ArcLightは設備の良さで知られている劇場。 ゆったりとしたシート・クリアな音響・大スクリーンを囲むコロシアム型の座席配置は、観客に最高のプレゼンテーションをしてくれます。そんな申し分の無い環境のもとで行われているドキュメンタリー・ウィークも今年で10周年。そのクオリティーの高さに年々ドキュメンタリーファンを増やし続けています。今年は国内外で高い評価を受けたドキュメンタリー16作品がエントリーしています。ArcLightの多数ある劇場のうち2館を貸し切って、午前10時から最終回の午後10時前後まで、1日平均13作品がびっしりと上映されます。人気のある作品は毎日観られる計算です。

では、今イベントでの話題作をご紹介致しましょう。まずは、夫妻であるクリス・シェルダン監督とパティ・キム監督が共にメガホンを取った 「Abduction The Megumi Yokota Story」。横田めぐみさん拉致事件にまつわる真相をご家族のインタビューを交えて綴った作品です。日本でも話題になったので、すでに耳にされている方々も多いでしょう。こちらでも公開以前より各映画祭・批評家から絶賛されており、その注目度はかなり高いものでした。今イベントでは初日にスケジュールが組まれ、本編終了後には大きな拍手に包まれました。こちらではあまり認知されていない日本の拉致被害事件はこちらの観客の目にどのように映ったのか?それは、あの盛大な拍手が何よりも強く物語っています。

そして、以前にLAフィルムフェスティバルの記事で報じたエイミー・バーグ監督による「Deliver Us From Evil」も初日に公開されています。カソリック教会に属するオリバー・オグレイディ元牧師が、20年以上にも渡り幼児虐待をしていたという衝撃の事実。小児性愛者の彼がどのように破滅への道を突き進んでいったのかが、克明に描写されています。カソリック教会自体の腐敗や隠蔽工作を赤裸々に描いたこの問題作は、そのあまりの悲惨さと悲しみに途中で席を立つ観客もいました。LAフィルムフェスティバル・最優秀ドキュメンタリー受賞作品。思わず目を覆いたくなるような実態が102分に凝縮され、観る者に強い衝撃を与える一本です。

今年のArcLightドキュメンタリー・ショーケースは戦争や貧困、国交・宗教・人種問題について描かれた作品が中心でした。地元紙Los Angeles Timesは「多くの人々が普段見ることの無い”暗黒面”を垣間見ることが出来る1週間」と評しています。多くのフィクション・大作映画はメッセージをそのまま「答え」として発信しますが、一方のドキュメンタリー映画はその答えを観客個々人に考えさせる手法を用いるものが多いと思います。製作者の主観を押し付けられるのではなく、綿密に調査され裏付けられた真実をもとに、様々な角度からメッセージを受け止めることが出来るドキュメンタリー映画。今後も、本年度のショーケースで見られたような良作が生まれていくことを願わずにはいられません。

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 20:08 | トラックバック

2006年08月17日

明日のスーパーヒーロー目指して!Otaku達のNo. 1争奪戦

去る7月、ロサンゼルスから2時間半あまり南に走ったサンディエゴでは、”Comic-Con International”(通称コミコン)が開催されました。このイベントは、往年の歴史的コミックやフィギュアの展示と、これからのコミック界の更なる発展を願って毎年盛大に行われるアメリカ最大規模のコミック関連展示会です。開催中の7月20日から7月23日の4日間には、従来のコミックブックファンやフィギュアコレクター達にとどまらず、多くのコスプレ好きやゲームマニア、セレブリティ達や映画・テレビ製作者で満員御礼の大賑わい。その熱狂ぶりは過去最高とも言われていて、年々コミックに対する熱い視線が高まって来ているようです。

ところで、「オタク」という日本語が世界共通語になりつつあるのをご存知でしょうか?この「Otaku」に該当する英単語は、”Nerd”ですとか”Geek”といった、人を指すにはちょっぴりネガティブな単語になってしまうのですが、こちらでは「Otaku」はある意味「カッコいいオタク」を指す様子。カワイイ女の子が”I’m a Otaku”なんてTシャツを着こなしてるのを見かけるようになった今日この頃…。我々日本人がそれを着るかどうかは別として、日本語がこのような形で海を渡って認知されているのも、ちょっと興味深いことですよね。

さて、今年のコミコンで最も注目が集まったブースのひとつ。それはやはり「マーベル社」のものでした。スパイダーマン・超人ハルク・ファンタスティックフォー・X-Menなどの大人気コミックを抱える最大手マルチメディア会社。近年では映画化やゲーム化が進んで、以前より更に人気が高まっているこれらのコミックの生みの親であるスタン・リー氏。そんな「コミックの神様」と呼ばれる彼が、コミコン終了直後の7月27日より、一風変わったリアリティー・ショーをホストすることになりました。

その名も、”Who Wants to be a Superhero?”。この番組は「スーパーヒーローになりたい!」と本気で願う一般人を公募して、その意気込みやどんなヒーローになりたいのか、そして彼らがスーパーヒーローになれる素質をどれだけ持ってるかを競い合わせる番組なのです。最終的に勝ち残った優勝者はスタン・リー氏が描くコミックの主人公に、更には”Who Wants to be a Superhero?”がオンエアされているSci-Fi Channel でのテレビ映画主演権が得られるという豪華さ。番組が始まってまだ数週間ですが、その戦いはすでに熾烈を極めています。

毎週出されるお題、つまり落伍者を決めるチャレンジ項目はかなりユニーク。誰が最も迅速に早着替えが出来るか?、メンバー同士で意地悪な質問を出し合う、$20が与えられたらヒーロー達はランチに何を食べるのか? …などなど、ちょっと笑ってしまうような各項目を、毎週スタン・リー氏が実に生き生きと発表します。氏曰く、ヒーローに必要不可欠である「人間性」を試す目的があるようなのですが…。出演者達は至って大真面目。生き残りを賭けて、必死に自分をアピールしています。

様々なリアリティー・ショーがひしめく昨今のアメリカTVシリーズ。この”Who wants to be a Superhero?”は、一体どこまで話題になるのでしょうか。個人的に、今年で84歳となるスタン・リー氏のあまりに元気な姿とウィットに富んだかわいらしいキャラクターは、見ていて飽きないといったところです。各々の個性的なオリジナルコスチュームに身を包み、画面を右往左往する出演者達のその姿は、観る者に笑いと感動を与えてくれるから不思議。これからも続く新エピソードから、目が離せなくなりそうです。

“Who Wants to be a Superhero?” オフィシャルサイト

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 17:34 | トラックバック

2006年08月10日

伝説のマガジンキングが愛して止まない女優とは?

ヒュー・ヘフナー氏。この名前を聞いてすぐに彼の顔が浮かぶあなたは、ある意味かなりの通かもしれません。アメリカでは知らない人がいない程の、”超”が付くセレブのひとり。かのPlayboy誌の創刊者であり、現在でも編集者として辣腕を振るうヘフナー氏。
御歳八十となる彼のプライベートライフは、これまた超が付くほどのゴージャスぶり。大豪邸のプールサイドで無数の多国籍美女をはべらせ、満面の笑みでくつろぐ姿はテレビでもお馴染みとなった光景です。更に、現在のガールフレンドはメインだけで3人。
ナンバーワンの女性のみ、彼と寝室を共に出来るというルールの下、他の2人も同じ豪邸に暮らしているそうで…。そんなプレイボーイを地で行くヘフナー氏が、Playboy誌面への登場を切望する大女優とは?例年よりちょっと遅れた梅雨明けを迎え、これからますます暑くなりそうな日本の皆様へ。ハリウッドからホットなニュースをお届けします。

80歳にして現役遊び人、ヒュー・ヘフナー氏が憧れる女優。それは、あのニコール・キッドマンなのでした。何でも、彼のキッドマンに対する憧れは1999年にさかのぼるとか。その年、彼女はブロードウェイの「The Blue Room」という舞台に出演中だったのですが、舞台を鑑賞しに来ていたヘフナー氏はキッドマンに一目惚れしてしまった模様。
この舞台、批評家からは、”演劇版バイアグラ”だなんて評されていた作品。キッドマンの生のお尻見たさに?集まった観客のひとりが、ヘフナー氏だったようです。彼曰く、その時のキッドマンは本当に魅惑的で、片手にタバコ・もう片方に下着を持ったその立ち振る舞いが、数ヶ月もの間彼の妄想を掻き立て続けたとのこと。70歳を過ぎてそこまで舞台上の女優に熱くなれる彼もスゴイの一言ですが、そんな熟練プレイボーイを完全に魅了したキッドマンも、さすがといったところでしょうか。

へフナー氏のキッドマンへのラブコールもなかなかの話題となっていますが、同時に彼が先週末に心臓発作を起こしたという心配なニュースも取り沙汰されています。ところが、そこはさすがヒュー・ヘフナー。取材に対し「土曜の夜はランジェリー・パーティーをしていて、ガールフレンド(例の”ナンバーワン”の彼女である、ホリー・マディソン嬢だと思われます。ちなみに、彼女は26歳!)が風邪をひいたから早めに切り上げただけだよ」と、笑顔で噂を一蹴。「今はすこぶる健康!今までにないくらいにね」と、あり得ないジョーク付きで取材班を笑わせたのでした。事の真相は定かではありませんが、そんな明るい彼の姿を見ていると、まだまだこれからも面白い話題を振りまいてくれそうだな、なんて期待してしまいます。

先日、カントリー歌手のキース・アーバンと2度目の結婚式をあげたニコール・キッドマン。幸せの絶頂にいるであろう彼女のことですし、是非ヘフナー氏の為に一肌脱いで頂きたいものです。
彼女への憧れを語ったヘフナー氏は「…付け加えておいた方が良いと思うけど、彼女は素晴らしい女優だと思うよ」なんて、かなりお茶目なコメントもしています。某ファーストフードメーカーのCMで、ひとつ1000kcalを超えるであろう巨大ハンバーガーを、あたかも女性について語るかのようにセクシーに宣伝していた姿も記憶に新しいところ。
そんな、80歳の愛すべきプレイボーイ、ヒュー・ヘフナー氏。ちょっと気が早いお話ではありますが、冥土の土産として?彼の可愛らしい願いが叶う日を、皆で祈って差し上げましょう。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 19:39 | トラックバック

2006年08月03日

暗黒時代に突入?ハリウッドの憂鬱

先日の、「カリフォルニアに熱波到来」というニュースを耳にした方々も少なくないはず。連日40℃を越える猛暑の中、ハリウッドっ子達にとって映画館は良い納涼スポットとなっています。そんな夏休みのかき入れシーズン真っ只中の今日この頃ですが、ハリウッドのスタジオ関係者達は、何だか頭を痛めている様子。外からは派手に見えるハリウッドの映画業界は、どうやら「飽和状態」に突入している模様です。数々のシリーズ物、CGアニメや海外リメイクもの等、あらゆるジャンルの作品がひしめく昨今のアメリカ映画。ここでちょっと「最近のハリウッド」を紐解いてみましょう。

ケーブルテレビの台頭、ホームシアターやインターネットの普及により、例年映画館に足を運ぶ人の数は、このところずっと横ばい。 今ハリウッドは曲がり角に差し掛かっています。興行収入自体は上がっているのですが、それはチケットの価格も同時に上がっているから。また、観客の方にも、「$をかけた映画ってスゴイはず!」という思い込みがあり、自然に製作費用合戦が起こってきます。観客数は伸びないのに制作費は膨れ上がるばかり、という矛盾の中、スタジオは利益を上げるためのいくつかの原則を発見しました。それらは、「当たった映画は続編を作れ!」「低予算で作れるアニメは儲かる、おまけに家族連れで来てくれる」「海外でウケた作品や原作は、とりあえず拝借しときましょう」などといったもの。こうした安易な“成功法則”に則って映画が製作されているのがハリウッドにおける今日のトレンドなのです。

そういえば、近頃ハリウッドでささやかれているこんな噂も。最近のスタジオは、若き映画制作者達が持ち込む新しい映画のアイデアには目もくれず、90秒程度の予告編を見せ「ほら、こんなの作ってみてよ」などと要求するのだそうです。ちょっと眉唾だけれど、こういう噂話が生まれるということ自体、ローリスク・ハイリターンを狙うスタジオの「飽和状態」を物語っているのではないでしょうか。製作サイドの「こんな新しい作品が作りたい」よりも、マーケットサイドの「こういうものを作っておけばお金が儲かる」という保守的な映画制作が行われる今日のハリウッド。新しい才能に対する足かせになるのでは?という懸念を抱いてしまいます。

…と、ちょっと暗めのトーンで進んできましたが、そうそうダークなお話ばかりでもありません。前回のアカデミー賞でも見られた傾向は、一見地味ではありましたが、従来のスタジオ映画から独立映画へのシステムの移行を物語る結果でした。そこそこ成功しそうな、いわゆる安全パイ的な映画より、強いメッセージ性を持つ映画が評価され、結果として高収益を招くことになりました。スタジオシステムの枠を超え、観客に伝えたいからその映画を作る、という姿勢が改めて見直されてきていると言えるでしょう。 ハリウッド産業の裏でどんなマネーゲームが繰り広げられていようと、一観客として目の前に映し出される物語は常に「面白く」あって欲しいもの。それがFunnyなのかInterestingなのか、どちらにしても印象深い、どこかで観たな…的な映画ではないものを期待しつつ、この夏は避暑も兼ねて映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。「面白かった!」と絶賛するも、「二度と観るかっ!」とコキ下ろすも、私達のリアクションひとつひとつとチケットの一枚一枚が、今後の映画作りを左右する…と言っても言い過ぎではないでしょう。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 17:45 | トラックバック