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2006年09月28日
『ブラック・ダリア』全米でいよいよ公開!
10月14日の日本公開が待たれる『ブラック・ダリア』。本サイトで予告編を見て、首を長くされている映画ファンの方々も多いことと思いますが、ここアメリカでは去る9月15日、一足お先に封切られました。約4年振りとなるブライアン・デ・パルマ監督の最新作は、ロサンゼルスでも公開前から話題沸騰。実際に起きたロサンゼルス最大の未解決ミステリー事件とあって、地元紙Los Angeles Timesでも見開き4面に渡り、当時の新聞記事や掲載写真で特集が組まれたほどの前評判でした。「スカーフェイス」(1983)・「カリートの道」(1993)・「スネーク・アイズ」(1998)などを手掛けた巨匠のカムバックを、多くのファンが今か今かと心待ちにしていた様子。その内容を書きたい気持ちもやまやまですが、いわゆる”Spoiler=ネタバレ”になってしまいそうので、それは見てからのお楽しみにとっておくことにして。今回は、本作のちょっぴり”通”な見どころに迫ってみたいと思います。
映画を観るとき、あなたはどこに注目しますか?誰が監督したのか、どんな俳優達が出ているのか、物語はどんなジャンルなのか…などなど、個人によってそのポイントは千差万別かと思います。映像を学ぶ人々が一般的に強く意識するのが、撮影監督。私達が目の当たりにする映像を、映画監督が頭に描くイメージに限りなく近付けて撮影をするのが彼らの使命です。監督と撮影監督の息が合っていればいるほど、監督の持つイメージがそのまま画面に投影されるということになります。アメリカでは、DP (Director of Photography)やCinematographerなどと呼ばれるこの役職。ハリウッドで映画制作を学ぶ者達にとっては、ディレクターやプロデューサーと並ぶ人気を誇るポジションなのです。
本作の撮影監督はヴィルモス・ジグモンド氏。名前だけではなかなかピンと来ないかもしれませんが、アカデミー賞での最優秀撮影監督賞はもちろん、撮影監督のための組合であるASC (American Society of Cinematographer)では、すでに生涯功労賞を受賞。アメリカ映画界では言わずと知れた存在となっています。数え切れないほどの映画に携わって来た氏ですが、特に「未知との遭遇」(1977)・「ディア・ハンター」(1978)・「マーベリック」(1994)などが、彼の代表作となっています。
1956年にハンガリーからアメリカに移住して来たジグモンド氏は、今年で76歳。言葉も不自由なまま飛び込んだハリウッドで、今も現役で活躍を続ける氏は、いわゆるハリウッドドリームを掴んだひとりと言えるでしょう。彼の映像の特徴は、類稀なる光のセンス。出来るだけ自然光を駆使し、更にははっきりとした色使いとコントラストで映像を引き立たせる、映像の魔術師。「ブラック・ダリア」の中でも、屋内外を問わず絶妙なバランスで人物や風景をとらえており、その映像美は圧巻です。特に本作はフィルム・ノワール調(=Film Noir)で撮影されており、白黒のシーンでは、光に敏感に反応する彼の才能が如何なく発揮されています。その美しさに、場内でため息がもれることもしばしば。映画ひとつに対してもリアクションが大きいアメリカの観客ならではの反応でしょうか。
ご本人はかなり小柄で、どこからあの映像のパワーが出てくるのかと思ってしまいますが、一枚一枚のスチール写真になっても、その繊細さが伝わってくるようなジグモンド氏が映し出す映像美はとにかく必見。映画館に足を運ぶ前に、本サイトの特集やホームページにて是非じっくりとご覧下さい。
TEXT BY アベマリコ
2006年09月22日
大和魂in Hollywood!! “Show Biz Japan! Sneak Peak”
このコラムでも度々ご紹介してきましたが、ロサンゼルスでは毎年あちこちで多数の映画関連イベントが行われています。アカデミー賞やLAフィルムフェスティバルなど世界規模の映画祭に加え、個人や大学などの各団体、学生達によるショーケース等を含めると、その数は「いつもLAのどこかで映画イベントをやっている」と言っても過言では無いほど。そんな中、来る9月28日に我ら日本人が集結する映画祭「Show Biz Japan! Sneak Peak」が、ハリウッドにあるインディペンデント系映画の上映で有名なシアター、”Laemmle’s SUNSET 5”で開催されます。本年度は、選び抜かれた監督達による11作品がエントリー。各々の題材はかなりバラエティーに富んでいます。日本の文化そのものが主題となった作品や、ハリウッドムービーのストーリー・ラインを彷彿とさせるようなサスペンスドラマの数々など、長編・短編を交えて一挙に上映される予定。中には、他の映画祭で入賞した経歴を持つ期待の作品も。「日本人による」というテーマだけにとどまらず、各作品のクオリティーの高さにも注目が集まりそうです。
一人でも多くの人々に日本人が作った映画を楽しんでもらう場として、またアメリカで活動する日本人映像クリエイター達に試写の機会を与える場として、昨年から日本人の有志によって発足されたこの映画祭は、今年で第2回目を迎えます。昨年度の本イベントは満員御礼・立ち見続出、第1回目とは思えない程の大盛況でした。観客は日本人ばかりかと思いきや、多くの作品は英語での上映、日本語作品には英語字幕が当てられ、人種を問わずの来場者で賑わっていたのが印象的でした。
昨年のイベント当日に、たまたま筆者の隣に居合わせた白人女性。「日本の最新カルチャー、特にアニメーション分野における今後の動向に興味がある」と話す、キャラクターグッズの輸入販売を手がける女性社長でした。映像関係者のみならず、様々な分野から注目を集めている日本の映像・アニメ・映画事情。アメリカ国内でますます加熱する「日本ブーム」が単なる”ブーム”に終わらず、今後もしっかりと根付いていきそうな予感です。
この”Show Biz Japan! Sneak Peak”の大きな特徴のひとつは、アメリカで映像製作を学ぶ日本人クリエイター達の作品が鑑賞できるということ。彼らは、映画作りのテクニックや”How To”をこの地で学んだうえ、日本とアメリカの各々優れた点を取り入れた感性豊かな映像製作を実現していることでしょう。言わばハイブリッドである彼らの国際的な視点が、在米映像クリエイター達の強みではないでしょうか。同じ日本人として、更には一映画ファンとして、今後もこのイベントが5回・10回と回数を重ねていくことを願って止みません。当日来場される方々の為の詳細、各作品リストと出品者のプロフィールは以下のサイトで閲覧・ダウンロードが可能。次世代の映画制作を担うことになるかもしれない新星たち、今から要チェックです。
Show Biz Japan! Sneak Peak 詳細
TEXT BY アベマリコ
2006年09月14日
みんな大好き!?「IN-N-OUT」
先日、飲酒運転の容疑で警察所に連行された、ヒルトンホテルグループのお騒がせ令嬢、パリス・ヒルトン。夜中にパーティーを抜け出して、ハンバーガーショップ「IN-N-OUT」に行こうとしていた事が判明。釈放後に「超お腹が空いてて、IN-N-OUTのバーガーが食べたかったの」という彼女らしいコメントをしています。車で走り回ってもなかなか遭遇しない「IN-N-OUT」
人気の秘密は、まずシンプルなメニュー。店内の看板には、ダブルチーズバーガー・チーズバーガー・ハンバーガーとフレンチフライ、シェイク3種とセルフサービスのドリンクしか書かれていません。注文を受けてから作る無添加のフレッシュなハンバーガーは、お客さんの細かい注文に出来る限り応えてくれます。ピクルス抜き・ソース増量…などのカスタム・バーガーを作ることも可能。フレンチフライはその場で大きなポテトを機械でカットして揚げるのでとても新鮮です。更に、知る人ぞ知る?シークレット・メニューなるものが存在し、こちらも「オリジナル」が大好きなアメリカ人に絶大な人気を誇っています。
「IN-N-OUT」シークレット・メニューの一部
●アニマルスタイル:お好みのハンバーガーにマスタードを塗って焼いたビーフパティを乗せ、ピクルスとサウザンアイランドソース、グリルされたオニオンを追加。おそらく、人気ナンバーワンメニュー。 プロテインスタイル:お好みのハンバーガーを、バンズで挟むのではなく大きめのレタスで巻いたもの。かなりシンプルな見た目と味。
バーガーは両方ともアニマルスタイル、
手前がアニマルスタイルフライのソース抜きです
●ダブルミート:ダブルチーズバーガーのスライスチーズ抜き。チーズ嫌いのお肉好きにお勧め。
●4×4(フォー・バイ・フォー):ハンバーガーをビーフパティ4枚、スライスチーズ4枚に増量。こちらは、3×3や4×2などとお好きな数で作成可。お誕生日会やパーティーに、20×20などを注文するクレイジーな輩も。ちなみに、最初の数字がビーフパティで、2番目がスライスチーズの数。
●3×ミート:ビーフパティ3枚にスライスチーズ抜きのハンバーガー。こちらも、数字の数はお好みで。
●ナポリタンシェイク:ストロベリー・チョコレート・バニラの各シェイクを軽く混ぜたもの。完全にはブレンドされておらず、3色が渦巻き状になっているお得なシェイク。
スウェルシェイク:お好みのシェイク2種を軽く混ぜたもの。チョコバニラスウェル、ストロベリーバニラスウェルなど、お好みで。こちらも渦巻き(Swirl)状態。
と、何故か今回はハンバーガー特集となってしまいましたが、この「IN-N-OUT」(イナナウ)ロサンゼルスでは一番ウマイハンバーガーとして有名で、セレブのファンも多いのです。食べてみると、確かに○○○ナルドとか○○○○王とかとは比べ物になりません。パリスが夜中に抜け出そうとした気持ちも、食べたことがある人なら良くわかるはず。
更に、このイナナウ、お店がすごく少ないのです。ロサンゼルス周辺でもせいぜい5~6店舗、探してもなかなか見つかりません。これも人気の秘密かもしれませんね。ロサンゼルスにおいでの際は、赤い看板の「IN-N-OUT」を探してみてください。運が良ければハンバーガー好きのブルース・ウィリスがリムジンで乗りつけるのを目撃できるかも?
TEXT BY アベマリコ
2006年09月07日
映画祭再び!LAショートフィルムフェスティバル
残暑厳しいロサンゼルスに、またまたホットな映画祭がお目見え。9月5日から14日までの10日間、本年度で第10回目を迎える「LA International Short Film Festival」が開催中です。このコラムでもお馴染みとなった、ハリウッドの心臓部に位置する大映画館「ArcLight」で行われているこのイベントは、毎年600本以上のショートフィルムを上映、1万人以上の来場者を誇る世界最大級の短編映画ショーケースなのです。このフェスティバルが設ける功労賞、映画界に著しい貢献をした製作者に贈られる「Maverick Film Achievement Awards」。史上3人目となる本年度の受賞者は、脚本家・監督・プロデューサーと多岐に渡って活躍しているポール・ハギス氏が選ばれています。彼の功績はまさに「”Maverick”=異端児」そのもの。脚本を手がけた2本の作品、「Million Dollar Baby」と「Crash」(監督・原作)が、どちらも”最優秀作品賞”となりました。これはオスカー史上初の出来事です。時代のニーズに応えた内容と鋭い視点で、観る者を圧倒するパワーを持った脚本を次々と生み出すハギス氏。本年度のアカデミー賞でも、必ずやその壇上でお目にかかることとなるでしょう。
更に、この映画祭の特徴として、著名な映画制作者達を招いてのパネルディスカッションが上げられます。映画の撮り方や製作の手順に始まり、いかに良い役者を捕まえるかまで、多数の現役プロデューサー・ディレクター・脚本家が独自の経験に基づき、レクチャー形式で講演を行います。現場スタッフの生の声が聞ける絶好のチャンスとなっています。また、各作品の監督や俳優達の舞台挨拶も控えているので、ともに若き映画クリエーター達にとっては即興の映画学校となりそうです。
最優秀賞・最優秀外国作品賞・観客賞などの入賞作品候補は9月12日に発表され、翌13日に一挙上映。同日に各受賞作品が決定し、最終日の14日に全受賞作品の上映が予定されています。今フェスティバルは賞金制ではなく、映画制作の為に必要な機材が贈られます。気になるその中味は、パナビジョンのカメラキットや脚本編集ソフトなどなど。最優秀賞ではおよそ700万円以上に相当する、映画クリエーター達にとっては喉から手が出るほど欲しい豪華商品が待っています。本年度の栄冠は誰の頭上に輝くのでしょうか?
数ある映画祭の中でも、LA ショートフィルムフェスティバルは数少ないアカデミー公認の映画祭。今イベントで入賞した作品が、アカデミー賞の短編部門にノミネートされることも珍しくありません。ここで若き才能が発掘され、今後の映画界を担う製作者達が続々と生まれていくことでしょう。デジタルカメラの低価格化や編集ソフトの充実などにより、映像クリエーター人口はますます増え続けています。ストーリーの長さや内容、カメラの種類や言語に至るまで、決まった制限の無いこのフェスティバルは誰にも門戸が開かれています。映画制作に興味がある方は、来年度の映画祭への出品を考えてみてはいかがでしょうか?未来の大監督が、そこから誕生するかもしれません。
TEXT BY アベマリコ