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2006年10月26日
秋の夜長に… 「Chanoma Film Festival 2006」速報
去る10月20日から26日までの1週間、ハリウッドで日本人による映画祭「Chanoma Film Festival 2006」が開催されました。会場となったのは、チャイニーズシアターに程近いサンセット大通り沿いにある”Laemmle’s Sunset 5”。ここは以前のコラムでご紹介した、先の日本映画フェスティバル「Show Biz Japan! Sneak peak」でも使用された映画館。独立・自主制作映画などを中心に上映をする老舗シアターです。ここが毎月送り出す作品の数々は、目の肥えたハリウッドの映画好きも大満足のラインナップ。現在は、本年度のLAフィルムフェスティバルで最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したエイミー・バーグ監督による「Deliver Us From Evil」や、ミュージックビデオでメキメキと頭角を現し、今では日本にも多くのファンを持つミシェル・ゴンドリー監督の最新作「The Science of Sleep」などを上映中。イベント開催中は、これらの作品を観に来た観客もフェスティバルのブースに足を止め、興味深そうに話を聞く人々も目立ちました。外国の映画にも敏感な客層と、上映作品選びに厳しい目を持つ”Laemmle’s Sunset 5”が満を持して開催した「Chanoma Film Festival 2006」、詳しい潜入レポートをお送りします。
今年で第3回目となるCHANOMAフェスティバルは、2003年よりスタート。毎年数千人もの観客動員数を誇る、ロサンゼルス最大のアジア映画祭のひとつとなっています。昨年は一回お休みとなりましたが、今年2006年に装いも新たに復活。ロサンゼルス在住の日本映画ファン達が待ち望んでいたこの映画祭のコンセプトは、日常的な日本人を描いた、子供から大人まで楽しめるハートウォーミングな映画を紹介すること。現代日本の等身大の文化をここロサンゼルスから発信することで、国際的な文化交流を促す目的を持ったフェスティバルとなっています。今年のポスターは芸者・舞妓さんをモチーフに仕上がっていて、かなり目を引きました。そのエキゾチックな雰囲気に、ポスターを持ち帰る観客も多かったようです。
すでにお気付きかもしれませんが、本映画祭の名前は「Chanoma」=「茶の間」です。このユニークなネーミングは、日本特有の「家族像」を象徴しているようです。ちなみに、カメラを「お茶の間」に座っている人の視線に持ってきて映像をとらえ、日本の家族像を世界に紹介した日本人監督をご存知でしょうか?…答えは、日本映画界の至宝、小津安二郎監督。世界中の映画論の本などに先駆者、またお手本として度々登場する巨匠です。彼の“Eye-Level”=「目線の高さ」からの撮影は、今日ではその映像がもたらす客観性と家族団らんのニュアンスを最も強める手法とされ、ひとつのセオリーとして高く評価されています。小津映画でも描かれている、日本独特の「お茶の間」文化をロサンゼルスに住む人々に紹介し、親しみを持ってもらうというのがこのイベントの狙いとなっています。
2006年度は、バラエティーに富んだ11作品が紹介されます。ひとつの劇場を貸し切って、各長編と特別企画としての短編を組み合わせて上映。日本国内ではすでに上映された作品がほとんどなので、もうご覧になっている方々も多いことでしょう。ハリウッドの大作映画も良いけれど、この機会に日本人監督達による作品を、もちろん「お茶の間」で、じっくりと鑑賞するのもオススメです。
<長編作品>
「雪に願うこと」/ “What the Snow Brings” (2005) :根岸吉太郎監督
「雨鱒の川」/ “River of First Love” (2004) :磯村一路監督
「沙羅双樹」/ “SHARA” (2003) :河瀬直美監督
「HINOKIO ヒノキオ」/ “HINOKIO” (2005) :秋山貴彦監督
「深呼吸の必要」/ “Breathe In, Breathe Out” :篠原哲雄監督
「スクール・ウォーズ HERO」/ “School Wars: HERO” (2004) :関本郁夫監督
「ホテル・ハイビスカス」/ “Hotel Hibiscus” (2002):中江裕司監督
「ミラクル・バナナ」/ “Miracle Banana” (2005):錦織良成監督
「らくだ銀座」/ “Rakuda Ginza”(2003) :林弘樹監督
「ストーンエイジ」/ “Stone Age” (2005) :白鳥哲監督
「NAGASAKI・1945 アンゼラスの鐘」/ “NAGASAKI Angelus Bell ・ 1945” (2005):有原誠治監督
<特別企画・短編作品>
Japanese Short Films Vol. 1
「水筒少年」/ “Thermos Boy” :富永舞監督
「Shadow~影」/ “SHADOW”:河瀬直美監督
「いくつもの、ひとりの朝」/ “So Many More Lonely Mornings”:大嶋拓監督
Japanese Short Films Vol. 2
「緋音町怪絵巻」/ “Mystery of Akane -cho”:倉田ケンジ監督
「地球の魅力」”Charm of the Earth”:梶田征則監督
Japanese Short Films Vol. 3
「代々木ブルース最終回・地図とミサイル」/ ”YOYOGI BLUES – the last chapter ”:廣田正輿監督
「僕は一日で駄目になる」/ “ I Will Go Down in One Day”:小沢和史監督
TEXT BY アベマリコ
2006年10月20日
ロサンゼルスのアイコン、グリフィス天文台が再びオープン!
ハリウッドの3大アイコンといえば、丘にそびえるハリウッドサイン、スターの手形で有名なチャイニーズシアター、あともう一つはなんでしょう? 答えは「グリフィス天文台」。ロサンゼルスの街から見て、ハリウッドサインのやや右側にドーンとそびえる白亜の建物である。丘の上にそびえるグリフィスパーク
ところがこの必見スポット、2002年から今まで改修工事のために閉鎖され、世界中の映画ファンが涙を飲んでいた。
そして2006年11月、グリフィス天文台は閉鎖から約5年を経て再びオープンの運びとなった。オープンに先駆けて行われたプレス発表には、映画ファンコムにもしっかり招待状が届いた。で、早速行って来ましたよ発表会。
庭にはジェームス・ディーンの銅像も
建物の中は世界でもトップクラスの天文博物館。何しろ今回の改装にかかった費用が93億円というから、その充実度はハンパではない。最新の技術を駆使した展示物で宇宙の成り立ちを勉強できる。そして、これまた最新のデジタルプロジェクターを利用したプラネタリウム。天文博物館としては、世界で3本の指に入る設備だそうだ。
アメリカで最も美しい夜景の一つ
ロサンゼルスに来る人は、是非とも訪れてほしい。そこでちょっとご注意を。グリフィス天文台はロサンゼルスに住む人々にとっても行きたいスポットNo.1になっていて、しばらくはものすごい人手が予想されるため、入場はすべて予約制。訪れたい日の最低48時間前に予約が必要だ。予約はインターネットからでも可能。入場料は大人8ドル、子供4ドルと結構安い。折角休暇をとってLAに来たのに入れない、なんて事のないよう、是非前もって予約をとっておこう。
TEXT BY 岩下慶一
2006年10月12日
測定方法を変更・アメリカのTV視聴率が変わる!?
前回のコラムで、9月から始まった新番組をご紹介した矢先の出来事。去る10月9日、40ヶ国以上ものテレビ視聴率を測定する会社「ニールセン (Nielsen) 」(過去に日本国内でも測定を行っていましたが、2000年より撤退。現在日本ではビデオリサーチ社が一手に担っているようです)が、アメリカにおける視聴率測定方法の一部変更を発表しました。テレビ業界を駆け巡ったこのニュース。今後の視聴率をガラリと変えてしまいそうな新ルールの中身に、ちょっと詳しく迫ってみましょう。テレビの視聴率というのは、選ばれた家庭に送信機を取り付け、今どんな番組を見ているかをチェックする事で計測します。ニールセン社では各地域・人種・家族形態などにより、出来るだけ国内での平均値となるよう選んだ世帯にメーターを設置し、その結果を統計学に基づき国内全体のものとして換算し、視聴率を割り出してきました。つまり、その家庭内の一台のテレビで見られた番組のみが集計されていたのです。この方法だと、その家の子供が見ている番組はカウントされません。テレビ局が一番知りたい、若者に人気のある番組についてはわからないという片手落ちになってしまいます。
新しい測定方法では、家族が別の場所に住んでいる場合でも換算対象に入ることになります。 今回、主な対象となるのが学生達。他州の大学や全寮制の学校など、家からはなれた場所に住んでいる子供達の視聴傾向も追うことができます。寮やアパートに住む学生のテレビにもメーターを設置し、より詳しい視聴率を測定します。あたかも同じ家庭にある別の部屋のテレビとして、子供達が見る番組もトラックしていくことになるのです。ちなみに、就職などで他州に渡り自立している子供達は、同じ世帯として換算されないようです。
長年に渡り、特にテレビ業界の重役達は今までの測定方法に強い疑念を抱いていた様子。視聴率とは彼らにとってある意味で「命」です。結果次第で番組の傾向や中身・スケジュールの調整がなされるだけでなく、より詳しい視聴傾向をとらえることによって、人気の時間帯にCMを流したい各スポンサーに適切な広告費用を請求できるようになるのです。先週のコラムでもお伝えしたように、ただでさえ激減している今日のテレビ界におけるスポンサー費用は、重役にとっては$1でも惜しいもの。今回の変更が、いくつかのチャンネルによっては起爆剤となるかもしれません。
今のところ、アメリカで最も視聴率を取っているチャンネルと言われているのがCBS。近年では、”CSI”/ ”CSI: Miami” / ”CSI: New York” などのCSIドラマシリーズが人気を博していますが、主に高い年齢層によるニュース番組やバラエティー・ショーの視聴率で安定しています。ここに若年層の視聴分が加われば、”Lost” / ”Grey’s Anatomy” / ”Desperate Housewives” など、ここのところかなりドラマに強いABCや、”American Idol”が大当たりしたFoxなどが頭角を現してきそう。特に頻繁にテレビをチェックしたり、広告や新商品に敏感なのも学生などの若者達。更にはクチコミをお得意とする世代なので、各チャンネルによる学生達をターゲットにした宣伝競争も過熱していきそうです。
ニールセン社にとっては、新しいメーターの設置など莫大な資金が必要とされることになりますが、より正確な数値を目指すためには大切な一歩。何世帯ぐらいの増加になるかはまだ未定のようですが、この新しい測定方法には一般的に期待が持たれているようです。視聴者としても、出来る限りリアルな情報が欲しいもの。来年以降のチャンネル・ランキングの変動に注目が集まりそうです。
TEXT BY アベマリコ
2006年10月10日
テレビ業界は火の車?秋の新番組、続々スタート
日中の日差しはまだまだ強いですが、少しずつ秋の訪れを感じるようになってきたロサンゼルス。映画界では、夏休みの大作ラッシュが一段落し、今後は年末にかけてアカデミー賞候補の作品が続々と封切られるシーズンに突入です。映画ファンにとってはちょっと一休み、といった雰囲気の中、アメリカのテレビ界では9月から始まる新番組が次々とスタートを切りました。今秋の新番組の数々はどれを取ってもハイコストで、尋常ではないお金のかけ方は過去に前例が無いほど。1シーズン分の制作費は平均72億円となっており、昨今の大作映画まるまる1本分か、それ以上とも言われています。更に、この秋スタートの14作品のうち半分は、初回の「パイロット版」と呼ばれる第1話だけに平均7億円以上も費やしています。2年前と比べると50%以上の上乗せということに。このようにどんどん加熱しているテレビ番組の制作費ですが、実際はどうやら新番組よりも、”CSI: New York” (CBS) や”ER” (NBC)、”Grey’s Anatomy” (ABC) のような以前からある番組の新シリーズの方が、初回の放送では好成績を収めているようです。
なぜ、今日のテレビ業界では白熱した制作費競争が繰り広げられているのか?その理由のひとつに、大人気ドラマ”Lost” (ABC) の影がちらついている模様。日本でも最近DVDレンタルが開始され、どっぷりとハマっている方々も多いことでしょう。このシリーズ、実は2年前のパイロット版をほとんどハワイで撮影するなど、初回の1話に総額16億円以上もかけていたのです。その効果がどれ程だったかは定かではありませんが、結果として今のような大ヒットに恵まれ、各チャンネルはこぞって「Lost効果」ともいうべき効果を狙っているようです。
更に、アメリカで大人気の”TiVo”やHDD&DVDレコーダーなどの普及により、各番組に対するスポンサーの出資が激減。ゴールデンタイムのCM30秒に2000万円以上も支払うスポンサーとしては、見て欲しいCMが結局カットされてしまうのに、多額の投資をするのはいかがなものかと躊躇しているようです。その結果、スポンサー達は若年層の集客が見込めるインターネット上の宣伝に移行。この風潮は自社の番組宣伝についても同じことで、テレビCMをあまり見てもらえない今日では、雑誌・新聞・ケーブルテレビ・看板・ラジオなどのあらゆるメディア媒体を通し、自腹で宣伝活動をするようになってきているのです。その広告費用は、ABC・CBS・Fox・NBCなど各メジャーチャンネルの平均で、およそ110億円。こちらは、3年前と比べて2倍にも膨れ上がっています。
まるで新作映画の宣伝のように、街の至る所でテレビ番組の看板を見掛けるようになりましたが、公開数週間で分かりやすい結果が出る映画業界とは違い、テレビ番組は数ヶ月も続く長期戦。以前は”Friends” (NBC) のように、徐々に人気に火が付いて利益を上げていく番組が主流とされていましたが、今日では最初の数エピソードが決め手となり、その話題性と集客が重要になってきている模様です。テレビマン達は、なんとか番組を売れないかと頭を抱えている様子。インターネットでのダウンロードやiPodでの視聴など、新しいメディアによる様々な試みもされていますが、その効果はまだまだ神のみぞ知るといったところ。アメリカの熾烈なテレビ番組戦争は、もうしばらく続きそうです。
これが”Ugly Betty”の主人公、ベティー
他の新番組のように、ビッグスター達をキャストしていないこの2作品が健闘しているのは、少し意外かもしれません。もちろん、製作者達は大ヒットを信じて番組をじっくり練り上げてきている訳ですが、当たるか否かはどうやら”Who Knows?” 誰にも分からないようです。今後も、話題となっているテレビ番組をその都度チェックして、どんどん特集していきたいと思います。
TEXT BY アベマリコ