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2006年12月25日

ノミネート発表!64th Golden Globe Awards

めっきり寒くなってきたクリスマス目前のロサンゼルス。日中は晴天続きで過ごしやすい毎日ですが、朝晩はグッと気温が下がり、今年の冷え込みはちょっと珍しいかもしれません。そんな中、先日12月14日に、第64回ゴールデン・グローブ賞の各候補者・作品が発表されました。毎年恒例のこの授賞式は、アカデミー賞の1ヶ月程前に当たる来年1月15日に行われます。ゴールデン・グローブは、HFPA(The Hollywood Foreign Press Association)が主催する映画とTVの一大イベント。来年度のノミネート者の中には日本人の名前が挙がっていたことで、日本国内でも大々的にそのニュースが駆け巡ったことと思います。そこで今回は、その候補者と作品達のレポートと(個人的な)注目作品をじっくりご紹介します。
まず、最優秀映画賞・ドラマ部門に”Babel”(邦題:バベル)、”Bobby”(邦題:ボビー)、”The Departed”(邦題:ディパーテッド)、”Little Children”(原題)、”The Queen”(邦題:クィーン)がノミネート。レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソンらが競演した、「インファナル・アフェア」シリーズのリメイクである「ディパーテッド」は、その俳優陣の豪華さからもアメリカで大ヒットしました。また、役所広司率いる日本人俳優達も出演の「バベル」は、そのパワフルな物語からかなり強い印象を残す秀逸な作品となっています。

ドラマ映画部門の最優秀主演女優賞候補には、”Volver”(仮邦題:ボルヴァー)のペネロペ・クルス、”Notes on a Scandal”(原題)のジュディー・デンチ、”Sherrybaby”(原題)のマギー・ギレンホール、「クイーン」のヘレン・ミレン、”Little Children”のケイト・ウィンスレットが選出されています。ヘレン・ミレンやケイト・ウィンスレットなどの大女優達が肩を並べるノミネートとなりましたが、なかでもペネロペ・クルスの大きな瞳も印象的でした。

ドラマ映画部門・最優秀 主演男優賞に、2作品でノミネートのレオナルド・ディカプリオ(「ディパーテッド」、”Blood Diamond”(原題)、”Venus”(原題)のピーター・オトュール、”The Pursuit of Happyness”(邦題:幸せのちから)のウィル・スミス、”The Last King of Scotland”(原題)のフォレスト・ウィテカーがノミネート。ディカプリオの快挙にも注目が集まりますが、ベテラン勢の名演も甲乙付け難い選出となっています。

最優秀映画賞・コメディー/ミュージカル部門には、”Borat”(原題)、”The Devil Wears Prada”(邦題:プラダを着た悪魔)、”Dreamgirls”(邦題:ドリームガールズ)、”Little Miss Sunshine”(邦題:リトル・ミス・サンシャイン)、”Thank You for Smoking”(邦題:サンキュー・スモーキング)が選ばれました。「ボラット(原題)」の訴えられまくりブラックコメディが物議をかもしていますが、良く見ると他4本も人気作品ばかり。

コメディー/ミュージカル部門・最優秀主演女優賞には、”Running with Scissors”(原題)のアネット・ベニング、「リトル・ミス・サンシャイン」のトニ・コレット、「ドリームガールズ」のビヨンセ・ノウルズ、「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープ、”Miss Potter”(原題)のレニー・ゼルウィガーが候補に。こちらも個性が光る女優達ですが、ベテランのメリル・ストリープが頭ひとつ分程リードの予感です。

コメディー/ミュージカル部門・最優秀主演男優賞では、「ボラット」のサシャ・バロン・コーエン、”Pirates of The Caribbean: Dead Man’s Chest” (邦題:パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト)のジョニー・デップ、「サンキュー・スモーキング」のアーロン・エッカート、”Kinky Boots”(邦題:キンキーブーツ)のキウェテル・イジョフォー、”Stranger Than Fiction”(原題)のウィル・フェレルがノミネート。こちらも名優達が勢ぞろいです。

最優秀外国語映画賞には、”Apocalypto”(邦題:アポカリプト)、”Letters from Iwo Jima”(邦題:硫黄島からの手紙)、”The Lives of Others”(原題)、”Pan’s Labyrinth”(原題)、「ボルヴァー」が選ばれています。ここは、日本人であることを誇りに思えるような作品に仕上がった「硫黄島からの手紙」に是非獲って頂きたいところです。ちなみに同作品は、すでにナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、そしてアメリカ映画協会賞を獲得しています、

最優秀助演映画男優賞には”Hollywoodland”(原題)のベン・アフレック、「ドリームガールズ」のエディ・マーフィー、「ディパーテッド」からジャック・ニコルソンとマーク・ウォルバーグ、「バベル」のブラッド・ピットがノミネート。こちらもベテラン俳優ばかりですが、同じ「ディパーテッド」のニコルソンv.s. ウォルバーグが見ものとなりそう。

そして最後に、最優秀助演映画女優賞に”Notes on a Scandal”(原題)のケイト・ブランシェット、「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラント、「ドリームガールズ」のジェニファー・ハドソン、そして日本人女優として唯一のノミネートとなった「バベル」の菊池凛子と、同映画からエイドリアーナ・バラザが選ばれています。人気TV番組「アメリカン・アイドル」で惜しくも途中で落選となったハドソンの歌唱力が話題ですが、ここは菊池さんの頭上に輝いて欲しいものです。

と、一気にご紹介して来ましたが、これでもやっと候補の半分弱といったところ。映画部門の大方はカバー出来たと思いますが、まだまだTV部門にも見どころが。筆者のオススメ番組も登場。そこで、来週も引き続きゴールデン・グローブ特集として、ノミネートの状況をレポートしてみたいと思います。全候補者・作品達をいち早くご覧になりたい方は、下記の公式ウェブサイトからどうぞ!

ゴールデン・グローブ賞/全ノミネート


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 20:15 | トラックバック

2006年12月18日

ロサンゼルス近郊で「海外旅行」気分

先日も特集したThanksgiving Day以来、アメリカは年末のホリデイ・シーズンに突入。街中も庭先も、クリスマスのイルミネーションで美しく飾られ、12月らしい装いとなりました。そろそろ来週辺りがピークとなりそうな「仕事納め」の時期にともない、空港は帰省やバケーションに出掛ける人々でパニック状態になりそう。そんな中、Los Angeles Timesが、予想される大混雑を避ける方法「ロサンゼルス郡に残って旅行気分」なる特集を組みました。今までにハリウッドの各スタジオが発見、もしくは作り上げたロケ地のおかげで、ロサンゼルスには、いながらにして外国に来た気分を味わえる観光名所がたくさんあるとか。なかなか面白いこの企画の中から、映画にも登場したいくつかの「国々」をリストアップしてみます。
メキシコ:ハリウッドから20-30分のベニスビーチ沿い。近くの通りやオーシャンフロントの歩道にある建物は、古き良きメキシコの佇まい。(Speedway Ave. Windward Ave. Ocean Front Walk, Venice Beach) オーソン・ウェルズ監督の”Touch of Evil (1957)”(邦題:黒い罠)にて使用。

タヒチ:LA南部、ロングビーチから船で約1時間のカタリナ島にあるリトル・ハーバーは、タヒチを思わせる美しい海岸が続く。(Catalina Island. Little Harbor) 1935年のフランク・ロイド監督”Mutiny on the Bounty”(邦題:戦艦バウンティの叛乱)やマーロン・ブランド主演の”The Young Lions (1958)”(邦題:若き獅子たち)に登場。

スペイン:ハリウッドの北東に位置するサンガブリエルの39号線付近には、スペインを思わせる巨大な橋や建造物が。(San Gabriel Canyon Road, Highway 39) ”Mission: Impossible 2 (2000)”(邦題:ミッション・インポッシブル2/M:I 2)や、”The Fast and The Furious: Tokyo Drift (2006)”(邦題:ワイルドスピード3・東京ドリフト)でのカーチェイスに登場。

ロンドン:先日特集した、ハリウッドにあるグリフィス・パーク内の回転木馬は、ロンドン風のロマンチックな雰囲気。(Hollywood, Griffith Park) クリスチャン・ベールとヒュー・ジャックマンが競演の”The Prestige (2006)”(暫定邦題:プレステージ)や、サラ・ミシェル・ゲラーが出演した人気TVドラマ”Buffy the Vampire Slayer”(邦題:バフィー・恋する十字架(及び)吸血キラー・少女バフィー)にも登場。

ハワイ:同じ「アメリカ国内」ですが、ロングビーチ近郊のサンペドロ、カブリロ・ビーチ近くにあるバスハウスは、ハワイにある建物や庭園の雰囲気が。(San Pedro, Cabrillo Beach Bathhouse) ドリュー・バリモアとアダム・サンドラーが共演した”50 First Dates (2004)”(邦題:50回目のファースト・キス)やジョン・ウー監督の”Face/Off (1997)”(邦題:フェイス/オフ)にて使用。

日本:ロサンゼルス北部のパサデナ・サンマリノにあるハンティントン図書館内には、日本そのものとも言える立派な庭園がある。(Pasadena, San Marino. Huntington Library) ご存知”Memoirs of a Geisha (2005)”(邦題:SAYURI)や、三船敏郎も出演する”Midway (1976)”(邦題:ミッドウェイ)、ジャック・ニコルソン主演のコメディ”Anger Management (2003)” (邦題:N.Y.式ハッピー・セラピー)にも登場。

ハリウッドの「近場にロケ地を作ってしまおう!」という試みは、南カリフォルニアのビーチをフランスの海辺に見立てて撮影した1907年製作の”Monte Cristo”(邦題:モンテ・クリスト伯)から始まったとか。今年2006年に公開された、次期オスカー候補としての呼び声が高い作品達も、実はLA近郊に作り込んだセットで撮影したもの。エディー・マーフィーとビヨンセが共演の”Dreamgirls”(邦題:ドリームガールズ)はデトロイトを、”Little Miss Sunshine”(邦題:リトル・ミス・サンシャイン)ではニュー・メキシコを、そして”Flags of Our Fathers”(邦題:父親達の星条旗)と”Letters From Iwo Jima”(邦題:硫黄島からの手紙)では日本の硫黄島がカリフォルニア州に出現しました。今年の年末年始にロサンゼルス旅行を予定している方々は、是非参考にしてみてはいかがでしょうか。LAの旅プラス新たな「海外旅行」というのも、なかなかステキな思い出になるかもしれません。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 21:53 | トラックバック

2006年12月08日

「海賊版王子」に禁固刑・No more Piracy!

去る12月1日、ロサンゼルスの裁判所で”The Prince of Piracy”(海賊版王子)ことジョニー・レイ・ガスカ被告に、懲役7年の判決が下されました。近年では、映画のみならず映像・楽曲などを含めた著作権・知的財産権の侵害が取り沙汰されています。この事件は映画に対する”Piracy”(海賊版コピー)ですが、実はアメリカ国内で実刑判決が下りたのはこれが初めて。悪質な事件の数々にようやく決着がつきました。そこで今回は、ガスカ被告のこれまでと、海賊版がはびこる今日の現状をレポートしたいと思います。

ガスカ被告は、90年代に窃盗罪や殺人罪で起訴され、服役していたという経歴の持ち主。釈放後、海賊版販売のビジネスで一儲けしようと、ニューヨークからロサンゼルスにやって来ました。その手口はカメラを持って試写会に侵入し、公開前の映画をこっそり隠し撮りするというもの。バッグに高価な撮影機材を忍ばせ、多くの映画試写会に足繁く通っていたということです。こうして撮影した映画のコピーを製作して売りさばき、多い時には1週間に$4000以上、日本円で50万円以上もの収益を得ていました。
彼の行動が明るみに出たのが2002年の9月。” The Core”(邦題:ザ・コア)のプライベート上映会にて御用となり、その後15ヶ月の保護観察処分付きで釈放されるも、翌月には”8 Mile”(同邦題)の試写会に盗撮用ビデオを持ち込んだことが発覚。

更には、2003年の1月に”Anger Management”(邦題:N.Y.式ハッピー・セラピー)の試写会で、最前列でビデオカメラを設置しているガスカ被告の姿が、館内の防犯カメラに捉えられていました。

何度も逮捕されながらも飽きずに違法コピーを製作するガスカを人々はいつのまにやら被告を昔の映画の題名に引っ掛け、「Prince of Pirates(海賊版王子)」と呼ぶようになります。やりたい放題やってきたガスカですが、警察の長期に及ぶ捜査の結果ついに逮捕され、7年の懲役に加え、出所後も3年間の保護観察処分と”Anger Management”(皮肉にも上記の映画タイトルと同じですが、カッとなりやすい・キレやすい人々を対象としたサイコセラピー)への出席が言い渡されています。

そもそも海賊版が世の中に出回り始めたのは、1970年代後半から。テクノロジーの発達と、インターネット上における違法ダウンロード、「ファイル・シェアリング」の誕生によって、その普及率はうなぎのぼり。2004年には、メル・ギブソンが監督した”The Passion of the Christ”(邦題:パッション)の違法コピーが、世界中で数百万枚も発見されます。このような事態を受けて、近年アメリカでは市販DVDや映画館での予告編上映時に、”Anti-Piracy”(反海賊版コピー)キャンペーンのCMを流し、海賊版を買うのをやめよう、というキャンペーンを繰り広げていますが、それでも海賊版は相変わらず街に出回っています。映画スタジオが被る損害は毎年数十億ドルとも言われています。そして何よりも、海賊版コピーを購入・ダウンロードすること自体が違法。作る側だけでなく、買う側も「共犯者」ということを、心に留めておきたいものです。

今日では、試写会当日の深夜にはインターネット上に海賊版が出回り、その後の数日間には皆が競ってクオリティーの高い映像をアップしているのが現状です。しかし、海賊版が映画産業に与える影響は、そのまま映画ファンに跳ね返ってきます。海賊版が与える損失分が各スタジオへ戻れば、更に上質な次回作が期待出来ることになるでしょう。映画ファンとして、今回の事件をきっかけに、海賊版コピーが撲滅されることを願います。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 18:13 | トラックバック