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2007年04月26日

実現間近?3D映画の可能性

昨今、観客数の伸び悩みやDVDの猛攻に押され気味の劇場映画。そこに、新たな「活力源」となりそうな計画が、各スタジオで着々と進んでいるようです。それは、3D映画。記憶が定かではありませんが、筆者も昔どこかで「飛び出す映像」を体験したような。一部のテーマパークで楽しむことが出来た、カラーフィルム製のメガネをかけて鑑賞する映像。それが、数段パワーアップして映画館にお目見えする日も近いようです。

大規模な予算を投入して企画が進む3D映画。その新しいテクノロジーは、各映画スタジオのみならず、観客にも新しい映画の可能性をもたらしてくれそうです。ドリームワークス・アニメーション部門の広報によれば、すでに2本の3D映画が2009年に公開予定とのこと。上映に向けて、施設の確保などが急ピッチで進んでいるようです。「仮にチケット代を50%上乗せしたとしても、足を運んでもらえるはず!」と自信を見せる彼らは、低迷気味である現在の映画業界に新風を吹き込もうとしている様子。また一方ではこうした動きに合わせ、映画産業におけるチケットの価格設定があまりに保守的だったという意見もちらほら。映画の内容にかかわらずほぼ一定を保っていた一枚のチケット代に対し、コンテンツやクオリティに合わせてもっと価格が異なっても良いのではないか?との声が上がっています。現在では、IMAXでの上映が通常の価格より少々割高となっていますが、3D映画もそのような形になるであろうとされています。

収益アップ以外にも、3D映画は、昨今はびこる「海賊版」対策にも有効となりそうだとか。新しい映写機の開発に合わせ、そうかんたんには違法コピーが作れないような方式が研究されているようです。家庭ではなく、映画館に足を運んでこそ楽しむことが出来る映画。3D映画のコンセプトには今日を代表する大作映画の監督達、ロバート・ゼメキスやジェームス・キャメロン、スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカスやピーター・ジャクソンらも手放しで歓迎しているとのこと。特にルーカスは、新しい3D映画の実現のあかつきには「スター・ウォーズ」シリーズを3Dで見せたいと張り切っているようです。また、今後出てくる新作のみならず、2006年の大ヒット作「カジノ・ロワイヤル(邦題)」や「ディパーテッド(邦題)」、往年の名作である「ゴッドファーザー(邦題)」シリーズや「アラビアのロレンス(邦題)」なども3D化の候補に挙がっているようです。

映画業界のエグゼクティブ達は、この流れを莫大なビジネスチャンスと捉えている様子。こうした動きが映画の周辺のビジネスにも影響を与えると予想しています。例えば、スタジオとの共同開発として、3D映画専用のサングラスの販売。前出のドリームワークスの広報は、今まで私達が愛用してきた通常のサングラス同様、3D映画を観るためのサングラスを個々人が所有する時代が来るだろうと話しています。それもちょっとスゴイお話ですが、劇場で不特定多数の観客が繰り返して使うものよりも良いかも。よりダイナミックな映像が期待される次世代の3D映画が登場したら、皆さんは「My-3Dサングラス」を手に取りますか?


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 22:11 | トラックバック

2007年04月19日

Virginia Tech. 事件:マスコミから広がる余波

現地時間4月16日午前、ヴァージニア州で起こったVirginia Polytechnic Institute(ヴァージニア工科大)の惨劇。人々に強い衝撃を与えたこの痛ましい事件は、発生直後からテレビやインターネット上で連日情報が飛び交っています。マスコミの報道は日に日に過熱し、その内容は二転三転。様々な憶測がささやかれる今回の事件を、アメリカ3大ネットワーク各社がどのように報道しているのか、またそれを全米の国民がどう受け止めているのかをお伝えしていきます。


アメリカの銃の品評会。大人から子供までが訪れる。
「近代米史最悪」とうたわれることになったこの度の事件は、アメリカの銃社会の現状を改めて世界に露呈するものとなりました。第一報が流れた直後から、本事件を99年にコロラド州で起こったコロンバイン高校銃乱射事件と並行させて報道するマスコミが目立っています。また、その事件を題材にし、賛否両論を巻き起こしたマイケル・ムーア監督の映画「ボウリング・フォー・コロンバイン(2002年:邦題)」の内容を改めて取り上げる記事も。先の事件から8年余りが経った今、更に多くの死傷者を出すこととなった今回の事件。容疑者のような20代の若者でも容易に銃を購入できる環境を重く見て、銃器撤廃の声が上がっています。また一方では、すでに流通している拳銃・ライフルなどの数を考慮すると、そのような動きに果たしてどこまで効果があるのか、疑問視する人々も少なくありません。「銃が人を殺すのではなく、銃を持ったその人間が人を殺すのだ。」インターネット上のフォーラムに、一般の方から書き込まれたひとことがひどく印象に残りました。

そして、この度の事件を起こした容疑者の背景が、更なる論争を巻き起こすことに。幼少期に家族とともに韓国からアメリカへと移住して来た容疑者は、外見は完全なアジア人。このことで、韓国人留学生やコリアン・アメリカンに対する風当たりが強くなるのではないかと危惧されています。2001年に起こった9/11事件が引き合いに出され、当時のアメリカ国内における中東・アラブ系の人々に対する誹謗中傷や傷害事件など、それらに似た現象が起こるのではないかという懸念も。また、コリアン・アメリカンであるジャスティン・リン監督の”Better Luck Tomorrow”(日本未公開:アメリカの高校に通うコリアン・アメリカン達を描いたバイオレンス作品)などの映画にも見られる「アジア人に対するステレオタイプ」を増長させるかのように、容疑者の私生活や人柄を単なる憶測で報道するマスコミも見受けられます。こういった過剰な報道を受け、多人種が生活するアメリカにおいて今回の事件が飛び火しないよう、マイノリティ・コミュニティーや各人種団体は注意・警戒を促しています。

事件の起こった月曜日以来、各TV局は予定していた番組を変更。翌日には、現地で行われた追悼式に密着、特別番組が放送されました。連日のプライムタイム・ニュースは放送時間が延長され、コマーシャルもごく限られた本数のみとなっています。今回の事件に対してCNNは、現場に居合わせた学生が携帯電話で撮ったビデオをホームページに掲載。銃声が収められた映像に、一日で200万件以上ものアクセスが集中しました。また、CBSの通信員がいち早く容疑者の身元を割り出し、一夜開けてのスクープ報道に。そして水曜日には、NBC宛てに容疑者本人から郵便物が届いていたことが判明。それには自らが撮影したと思われる写真やビデオ、犯行予告と声明文が含まれており、FBIに提出した後、ただちに独占公開となりました。このような動きの中、余りに残酷な映像ばかりが流れていることに、子供たちへの影響を懸念する人々も多くいます。悲しみに暮れる人々の感情を煽るかのような報道に合わせ、昨今の映画やビデオゲームに見られる残忍な描写、直視しがたい映像に抗議の声が上がっています。

ところで、ハリウッドでは今回の事件をどのように受け止めているのでしょうか。よく知られていることですが、銃の規制に絶対反対の姿勢をとる団体、ナショナル・ライフル・アソシエイション(NRA)の会長は、古くは「ベン・ハー」から「猿の惑星」まで、歴史的作品に主演した往年のアクション俳優、チャールトン・ヘストン。映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」でマイケル・ムーアにやり込められていたあの人です。この団体は、銃を持つのは米国人の基本的権利、という憲法修正第二条を盾に、銃規に反対を唱え続け、こうした事件が起こるたびに批判を浴びています。会長のヘストン氏への風あたりはハリウッドでも強く、リベラル派の俳優から攻撃されることもしばしば。ただし、銃とアクション、はハリウッドから切り離せないアイテムである事も事実。暴力を助長している、という批判も多いハリウッドとしては、なかなか難しい立場です。

この度のような事件は未然に防ぎづらいものであり、決定的な防御策には未だ辿り着いておらず、また果たして答えがあるのかどうかも見えてはいません。アメリカ国内のみならず、世界中の人々が胸を痛めている今回の銃乱射事件。過剰報道などによって、この事件の余波が新たな事件につながることのないよう願ってやみません。改めて、被害者の方々のご冥福をお祈りします。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 15:57 | トラックバック

2007年04月16日

YouTube: 昨日のブロガーが今日のセレブに?

インターネットユーザーの間ではすでに「常識」ともなりつつあるYouTube。個人の動画をポストして、世界中の視聴者とシェアすることが出来るというこのサイトは、大手ソフトウェアメーカー・検索エンジンサイトのGoogleが買収したことでも話題を集めました。アメリカ国内ではとにかく人気で、”YouTubing”(=YouTubeを観る)なんて単語も使われるようになった昨今ですが、何とそこからヒーロー、いやヒロイン?が登場。早くも、テレビ業界からラブコールを受けているそうです。そこで今回は、新聞でも取り上げられるほどの話題となっているその人物をご紹介したいと思います。

ユーザーの間で「時の人」となりつつあるのは、ケンタッキー州在住のウィリアム・スレッド(23)。アパレルメーカー・GAPでマネージャーを勤める傍ら、YouTubeで「ファッション・アドバイザー」として活躍しています。彼が始めた「Ask a Gay Man」(=ゲイに聞け)というタイトルのビデオシリーズが、歴代4位のアクセス数を記録。自身がゲイであることを非常にオープンにし、そしてひたすらファッションについて語るビデオが大人気となっています。

彼がYouTubeの「住人」となったきっかけは、以前に話題となった”lonelygirl 15”という作者のビデオ。それを観て「自分にも出来そう!」と確信したことと、その頃にビデオカメラ付きのiMacをたまたま購入したことも参加に拍車をかけたそうです。昨年9月からビデオのポスティングを開始し、11月にはYouTubeが彼の8作目である「Ask a Gay Man: Denim Edition」をトップページで紹介。彼の存在が口コミで広まり、一気に200万件以上のアクセスが集中。現在では4万5千人の定期視聴者と、更に何百万人もの一般視聴者が彼のビデオに殺到しているとのことです。


クリップ中でももっともホットなブランドとして
       取り上げられたアメリカン・アパレル
「ハイ・ファッションに執着しているワケじゃなくて、ちゃんとした着こなしをして欲しい。他の人が馬鹿みたいに見えると、超ウザイから。」というのが本人の弁。ファッションについての質問をメールで募り、それに答えていくのが基本的な彼のスタイル。「色白の私が黒の服を着る時、何色を合わせれば良いですか?」「オーバーオールを着ている友達に、どうやってやめろと言えばいいですか?」などなど、かなり笑える質問も。ちなみに、彼が許せないのは「ママ・ジーンズ」(ハイウエスト型のジーンズ)や、ペンキ屋さんでもない男性が履くペインターパンツ、太めの女性が履くスキニー・パンツ。逆に、現在Hot(=カッコイイ)だと思うのは、CHANELの黒ネイルとアメリカン・アパレル製の下着、Vネックセーターなどだそうです。

かなりのこだわりが見受けられる横分けのヘアスタイルとベイビー・フェイスを持つスレッドですが、その横柄な態度と、ものすごく辛口なコメントが人気の秘密。若くてキュートなピーコさん、といった感じでしょうか。一見すると、彼のビデオは即興で作ったものにも見えますが、実はかなりの時間をかけているとのこと。多くの視聴者が集まり、ほぼ毎週のペースでビデオの更新をするようになった今では、彼の衣装や編集などのクオリティも追及しているそうです。

そんな彼が、インターネット上から飛び出す日も近いかも?NBCが所有するケーブルTV会社Bravoが、早くも彼にコンタクトを取ったとのこと。すでに本人との契約を済ませ、数回のミーティングを重ねたそうです。NBCの広報曰く「彼には大変興味がある。取材の依頼もかなり多いし、みんな彼と話してみたいらしい。彼の人気は、全国的にスパークしていますね。」公開ダイエット番組「Workout」や一流デザイナーの発掘番組「Top Design」など、数々のリアリティーショーを生み出してきたBravoとあって、現在検討中のスレッドによる番組も話題となりそうです。

実際に彼のビデオを数本観てみましたが、筆者も何度か笑っちゃいました。また「Ask a Gay Man: Closet Edition」で紹介される彼のクローゼットは見もの。ファッション大好きと豪語するだけあって、完璧に色分けされた洋服や整頓された引き出しには驚かされました。YouTubeのホームページにアクセスして「Ask a Gay Man」で検索すると、パロディも含めて300本以上ものビデオが出て来ます。興味のある方は、是非ご覧下さい!


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 14:44 | トラックバック

2007年04月10日

子供たちが危ない?TVコマーシャルの洗脳効果

近年、アメリカでは子供たちのObesity(=肥満)や小児糖尿病が深刻化しています。校内からファーストフードやお菓子類、炭酸飲料の自動販売機を撤去しようとする動きも見られていますが、それでも数値は上がる一方。確かにロサンゼルスの街中でも、ぽっちゃりした子供たちが多く見られる気が。このような問題は一見、映画・TV業界にとっては無縁のお話にみえますが、新しく発表されたリサーチ結果がメディア全体を震撼させています。「TVコマーシャルなどの映像媒体が、子供たちに過度の情報を与えている。」この統計によって今後、そうしたTVコマーシャルがどんどん減っていき、各テレビ局のCM収入が激減するのではないかという声が挙がっています。70年代からアメリカで全面廃止となったタバコのCMのように、スナックやファーストフードのコマーシャルも見かけなくなっていくのでしょうか?
新しく発表された研究結果によると、アメリカの8歳から12歳の子供が最も多くTVで流れる食品系コマーシャルにさらされており、その数は一日に21本、年間で7600本に及ぶとか。10代は少し減って一日に17本、年間で6000本。2歳から7歳が最も少ないのですが、それでも一日に12本、年間を通して4400本もの「動く」広告を見ているという、驚くべき数字がはじき出されました。ちなみに、ここで換算された「食品系コマーシャル」とは、栄養学の視点からなるべく少な目の摂取が好ましいとされる類のもの。いわゆるファーストフードやスナック、スイーツや炭酸飲料などの高カロリー食品のCMが対象となっています。

この結果は、TV会社13局のコマーシャルをモニターして出された数字。2005年の5月後半から9月前半までに流されたCMの統計です。特に、人気アイドルや有名スポーツ選手、子役達を使っているものなど、キッズやティーンを対象としている高カロリー食品・飲料の宣伝は、2613種類にも上ったそうです。いかに、食品メーカーが若年層を対象にしてCM作りをしているのかがうかがえる数字とも言えるでしょう。

昨年11月には、マクドナルドやコカコーラ、ペプシを始めとする10社の大手食品メーカーが、新しい宣伝方法を検討すると発表。少なくとも彼らのコマーシャルの半数を、子供たちに健康的な食生活を促すものにすると発表したばかりでしたが、効果は未だ現れていない様子。今回発表された新しい統計を受けて、アメリカの映像業界は「もっと決定的な対策を練るべきだ」というプレッシャーにさらされることになりました。先週末には、連邦通信委員会(=FCC:Federal Communications Commission)・TV業界・食品業界の重役達が集まって、初の大型会議が催されました。

主婦層に人気の昼メロドラマやニュースの間には家庭用品のCMが多く流れるように、TV局は番組のターゲットに合わせてCMを選ぶのがもはや常識。キッズ向けの番組の間には、玩具などとともに多くの食品系コマーシャルが見られます。確かに、どの宣伝も美味しそうだったりポップな音楽が耳に残ったり、オトナの筆者でも魅力を感じてしまうことが多々ありますが、もっとピュアで何事にも興味津々な子供たちにしたら、更に購買意欲を掻き立てられるのではないでしょうか。最も多くTVコマーシャルを見るとされた8歳から12歳の子供たちは、ちょうどお小遣いを持ち始める「最も若い消費者」だとする声も。一番の「顧客」が健康面での不安を抱える今、これからTV局や食品メーカーがどのような対策を練っていくのか。先日の会議の結果、そして彼らの今後の動きが注目されそうです。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 14:14 | トラックバック