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2007年06月28日
今年も大盛況!LAフィルムフェスティバル
街中が水色のポスターで埋め尽くされると、今年も「あの」イベントの季節。そう、ロサンゼルスのビッグイベント「Los Angeles Film Festival」です。この夏の話題作からインディペンデント映画、ドキュメンタリー作品に至る233作品を一挙公開中。気になるラインナップをご紹介していきます。今年で13回目となる本映画祭は6月21日から7月1日まで、11日間の開催予定。昨年からUCLAの本拠地であるウエストウッド・ヴィレッジがホームとなりましたが、その評判も上々。歩いて回ることが出来る各シアターや、広くてアクセスが便利な駐車場、そして多くのショップやレストランに隣接していることが人気の原因のようです。来場者は、アメリカ国内のみならず、世界各国から集められた映像を楽しむことができます。そのバリエーションも、長編・短編・アニメーション・ミュージックビデオなど多岐に渡ります。他にも、ハリウッドの業界人や有名監督らを迎えたパネル・ディスカッション形式のイベントも予定され、10ヶ所以上に用意された各会場は大変な賑わいを見せています。
本年度のフェスティバルで最も注目を集めている一本が、マイケル・ベイ監督&スティーブン・スピルバーグのコンビによる「トランスフォーマー(邦題)」。日本では8月に入ってからの公開となっていますが、全米ではこのLAフィルムフェスティバルがプレミア会場に。6月27日の初上映が待たれます。また、ドン・チードル扮する奇天烈ファッションのDJが見もの、フェスティバルの初日を飾った”Talk to Me (原題)”も話題になっています。一方、サンダンス映画祭でも好評だった、ジョージ・ラトリフ監督による洗練されたサイコ・スリラー”Joshua” (原題)”がいよいよLAに参上。こちらも見逃せません。
そして、最終日の上映が予定されるのは「トレインスポッティング(邦題)」で世界を沸かせたダニー・ボイル監督の最新作「サンシャイン2057(邦題)」。真田広之さんとボイル監督のコラボレーションが話題の本作は、日本ではすでに公開済み。外国映画の公開がやたらと遅れるアメリカでは、本映画祭が初のお披露目ということになります。米国での評価はどうなるでしょうか?
気になる日本からの参加作品は、合田経朗監督による「こま撮りえいが こまねこ(邦題)」。ストップアニメーション技術が集結された本作は、子供からオトナまで楽しめること間違いなし。日本ではもうDVDの発売が予定されているようですが、先日初めて見た筆者は愛くるしいこまちゃんの動きに完全ノックアウト。言語を必要としないキャラクター描写や映像の見せ方に、大興奮させられてしまいました。CG全盛の今日の映画には真似することのできない温かい質感は、全て手作り・手描きにこだわった気の遠くなるような作業のたまものです。本映画祭では、23日と30日の2回上映。こまちゃんやいぬ子ちゃんがどれだけ多くの観客達をシビレさせるのか、こちらも楽しみです。
毎年、映画界に貢献した者に贈られる「スピリット・オブ・インディペンデンス賞」の受賞者に、本年度は「アメリカ映画界の財産」とも呼ばれるクリント・イーストウッド氏が選ばれています。また、長編物語部門・長編ドキュメンタリー部門・短編映画部門では、賞金5万ドルを争うコンペティションが行われます。最優秀賞を受賞するのはどの作品?今後も、新しい動きを追ってご報告していきたいと思います。
TEXT BY アベマリコ
2007年06月21日
日本の巨匠がLAに上陸:Master MIZOGUCHI展
すでに夏を思わせるような快晴続きのロサンゼルス。夏休みに向けて、大作映画が次々と封切られています。海賊が大暴れしたり、12人が13人になったり、数々の続編で賑わっている近頃のBox Office。そんなシリーズものにちょっぴり食傷気味…、かと思われるハリウッド在住の自称映画マニアにとって、かなり喜ばしい朗報が。LA屈指のコレクションを誇る美術館LACMA (Los Angeles County Museum of Art)では、日本が誇る溝口健二監督の回顧展を開催中。「Seven Masterpieces by Kenji Mizoguchi」と銘打たれたこのプログラム、日本のみならず世界を代表する映画監督が遺したMasterpiece=傑作から、選び抜かれた7本を上映しています。会場となったモダンアート美術館
溝口監督の代表作「雨月」のポスター
1930年代に戻って選ばれたのは「祇園の姉妹 (1936) / Sisters of the Gion」と「残菊物語 (1939) / Story of the Late Chrysanthemums」。溝口作品を語るときにはずす事ができない、華やかで活き活きとした女性描写、心温まる人間物語が楽しめる2本となっています。40年代からは「歌麿をめぐる五人の女 (1946) / Utamaro and His Five Women」が登場。こちらも、溝口監督お得意の個性あふれる女性達が描かれます。嫉妬うずまく男女関係が見もの。さすが刃傷沙汰をご自身で経験しただけあって、溝口監督が表現するドロドロとした情交はやたらとリアルです。
そして、最終日に上映が予定されるのは「赤線地帯 (1956) / Street of Shame」。日本のなだたる女優たちが競演する、溝口監督の遺作です。売春防止法というタイムリーなテーマを取り込んだ本作は、当時の世相が色濃く反映された1本。登場する女性それぞれの理想と現実は、50年以上経った今日でも思わず感情移入してしまうこと受け合い。小気味良く展開するストーリーに、パワフルかつ繊細な女性像が描き出されています。
この回顧展は、今月23日まで。往年の名作を大画面で鑑賞できるだけでも感激ですが、今回は新品の35mmフィルムでの上映となっていて、その感動もひとしお。観客を飽きさせない豪快なカメラワーク、細部にまでこだわった舞台装飾、匂い立つような女性の色気、時代物・現代劇を問わず人々に訴えかける人間ドラマ、エレガントかつ大胆なロングテイク…などなど、様々な角度から楽しめる溝口作品。梅雨に入った日本でお過ごしの皆さんも、お家でゆったりと溝口映画の鑑賞会はいかがでしょうか?
TEXT BY アベマリコ
2007年06月14日
もうひとつのアカデミー賞:Student Academy Awards
このところロサンゼルスは連日の快晴。日中は日差しが強く気温もぐんぐん上昇し、一足早い夏の訪れを感じます。そんな中、6月9日にアカデミー賞が華やかに開催されました。「今の季節にアカデミー賞?」と首をひねる方々も多いはず。ですが、これもれっきとしたアカデミー賞。オスカーを催す映画芸術科学アカデミー(AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Science)による学生映画の祭典「第34回学生アカデミー・アワード」です。今年で34回目となるこの式典が始まったのは、1973年。映画界の更なる発展は、まず映画学科で学ぶ生徒のバックアップから!という声がAMPAS会員の間で高まり、学生部門のアカデミー賞開催の運びとなりました。第1回目の授与式は、AMPASの本部に隣接するサミュエル・ゴールドウィン・シアターで豪華に開催。全米屈指と言われる映画上映用のスクリーンと音響設備が整った会場で、本家本元のアカデミー賞さながらにレッドカーペットが敷かれ、受賞者やプレゼンターが一堂に会する一大イベントとなっています。
34年の歴史を持つ学生アカデミー、すでに多くの有名監督を輩出しています。「バック・トゥ・ザ・フューチャー(邦題)」や「フォレスト・ガンプ/一期一会(邦題)」で知られるロバート・ゼメキス監督や、「ドゥ・ザ・ライト・シング(邦題)」や「マルコムX(邦題)」などで黒人映画を世界に広めたスパイク・リー監督、そして「トイ・ストーリー(邦題)」や「カーズ(邦題)」など、大ヒットアニメーションを次々に送り出すジョン・ラセター監督。特に、ラセター監督は「学生アカデミー賞」を2年連続で受賞という快挙を成し遂げています。様々なジャンルにおいて才能を発掘してきた今セレモニーは、映画制作を志す学生達にとっての憧れとなっています。
さて、本年度の栄冠に輝いたのは、映画の名門、ニューヨーク大学やコロンビア大学、スタンフォード大学の学生11名。アニメーション・ドキュメンタリー・物語の3部門に分かれており、ゴールド・シルバー・ブロンズメダルがそれぞれ設けられています。ちなみに、賞金は金=5000ドル、銀=3000ドル、銅=2000ドル。また、ゴールドメダルのみが用意される注目のオルタナティブ部門には、ニューヨークのSchool of Visual Artsに在籍するクン・イ・チャンさんの作品、”Fission”が受賞。そして、唯一のアメリカ国外枠である外国部門。計33ヶ国、最終選考に残った49作品の中から栄えある受賞となったのは、ドイツのトーク・コンスタンティン・ハベルンさんによる”Nevermore”でした。
今年のプレゼンターは、「あの頃ペニー・レインと(邦題)」などに出演、現在「サーフズ・アップ(邦題)」が公開中のズーイー・デシャネル。授賞式に出席した学生達は、セレモニーを通して業界のエグゼクティブ達に対面、様々なイベントにも参加しました。今回受賞した学生たちの中から、これからのハリウッドを背負って立つ大監督が登場するかも?年始恒例のアカデミー賞のみならず「もうひとつのオスカー」も要チェックです。
TEXT BY アベマリコ
2007年06月08日
80’s に逆戻り?ハリウッドの「依存症」
ここのところハリウッドを賑わせているゴシップの多くは、どれもアルコールやドラッグがらみ。エンターテイメント業界の光と影でしょうか、プレッシャーの中で生きる人々のアルコールやドラッグへの依存は、いつの時代にも存在しました。しかし、最近のニュースの多さは過剰気味。ここにきて、ハリウッドのある大物のアルコールスキャンダルが大きな波紋を呼んでいます。事の始まりは先月、HBO(アメリカの人気ケーブルTV会社)のエグゼクティブ・チーフであるクリス・アルブレクトが解雇されたというニュースでした。滞在先のラスベガスで、彼のガールフレンドに激しく掴みかかり逮捕されたのですが、事件の原因は長年に渡るアルコール依存症だった事が分かりました。現在、彼はリハビリ施設に入院中。この事件が発端となって、依存症は、表舞台に立つセレブたちみならず、プロデューサーをはじめとするビジネスサイドにまで及ぶことが明らかになりました。
60-70年代のハリウッドに蔓延した、ドラッグ&アルコールの嵐。1969年の「イージー・ライダー(邦題)」の主演3人(ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン)が焚き火を囲むシーンは、本物のマリファナを使用しての撮影だったというのは知る人ぞ知る逸話です。80年代に入ってからは、セレブ専門のリハビリ施設が大流行しました。施設の関係者によれば、エンターテイメント業界からの患者数は「まるで80年代に戻ったよう」なのだとか。また、施設に出たり入ったりを繰り返すのも、エンタテインメント業界関係者の特徴なのだそうです。
更には、アルコールやドラッグに関連した事件を起こしているのが、ティーンに人気のあるタレント達ばかりであることにも懸念が。飲酒運転とスピード違反、免許停止中の運転によってとうとう実刑が言い渡され、現在刑務所で生活中のパリス・ヒルトン。いきなり丸坊主になってのリハビリ入り、退院してからは「口パク」でステージに戻って来たブリトニー・スピアーズ。飲酒・ドラッグの影響下での運転、死傷者を出す大惨事を起こした「プリズン・ブレイク(邦題)」に出演のレイン・ギャリソン。そして、アメリカで飲酒OKとなる21歳にも満たないリンジー・ローハンも、ドラッグとアルコール依存症疑惑で度々ゴシップ誌の表紙を飾っています。憧れであるべきはずの彼らを、親や学校は「反面教師」として教えざるを得ないとのこと。
このコラムを執筆中にも、俳優のトム・サイズモアが保護観察中に麻薬所持で逮捕というニュースが飛び込んで来ました。本当に、今日のハリウッドではアルコールやドラッグによる事件がどんどん増えているように感じられます。一般人には想像しがたいプレッシャーがのしかかる職業なのかもしれませんが、一方ではそういった事件とは無縁のスターもたくさん存在します。いつの時代も子供たちのお手本になるハリウッドであって欲しいものです。
TEXT BY アベマリコ