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2008年01月31日
第14回SAGアワード:華やかに開催!
先の日曜日「俳優による俳優の為の授賞式」=第14回SAG(全米俳優組合)アワードが、ロサンゼルスのシュライン・オーディトリアムにて開催されました。この地には珍しく、ほぼ1週間続いた悪天候にもかかわらず、多くのスター達が続々と来場。やっぱりアワードはこうでなくちゃ!と思わせてくれる、華やかな式典となりました。
SAGアワードロゴ
それでは、主要部門の結果を。まず、助演男優賞を獲得したのは「ノーカントリー (邦題)」のハビエル・バルデム。GG賞などの各賞に続き、SAGのアクター像も持ち帰ることになりました。スピーチでは、スペイン出身の彼を暖かく迎えてくれたSAG会員と、良いカットばかり選んでくれたという監督のコーエン兄弟に感謝。劇中のピッチリ横分け殺人鬼とはかけ離れた、ノーネクタイのボタン開けというカジュアルなスーツ姿がステキでした。
「アメリカン・ギャングスター」 母親役のルビー・ディー
(C)2007 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
主演女優賞を持ち帰ったのは、こちらも各賞総ナメのジュリー・クリスティー。涙なしでは観られない「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」で健忘症を患う主婦を熱演した彼女は、本作で長編監督デビューを飾ったサラ・ポーリーらに感謝の意を述べました。スピーチの最後に「もし誰かの名前を言い忘れてたら、まだ役に入っちゃっているのかも」と締めくくった彼女。チャーミングな笑顔と、授賞式には珍しいパンツスーツでの登場が印象的でした。
そして、主演男優賞には”There Will Be Blood (原題)”より、技巧派俳優ダニエル・デイ=ルイス。壇上では自らについてではなく、先日急逝したヒース・レジャーへの思いを語りました。特に「ブロークバック・マウンテン (2005)」終盤のトレーラーシーンは「これまで観た中で最も感動的なものだった」と表現。スピーチの最後に「これをヒース・レジャーに捧げたい」とアクター像を掲げると、会場は割れんばかりのスタンディング・オベーションに包まれました。世代は違えど、同じ俳優としての心からの敬意。今回のSAGアワードにおいて、最も胸の熱くなった瞬間でした。
本邦初公開?SAGアワード投票セット
マークシート方式の投票用紙
一方のTV部門では、1999年の初回放送より昨年の第6シーズンでフィナーレを迎え、その最終回が物議を醸した「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア (HBO)」が主演男優賞(ジェームズ・ガンドルフィーニ)・同女優賞(イーディ・ファルコ)・アンサンブルキャスト賞の主要3冠を制覇。また、コメディ部門で主演男優賞を獲得のアレック・ボールドウィン(30 Rock: NBC)、TV映画/ミニシリーズ部門で同賞獲得のケビン・クライン(As You Like It: HBO)、同部門の主演女優賞に輝いたクイーン・ラティファ(Life Support: HBO)は揃って欠席。一部、WGAストを意識してではないかとの憶測を呼んでいます。そして、今年から新設されたスタントアンサンブル賞には、映画部門に「ボーン・アルティメイタム」、TV部門に「24(Fox)」がそれぞれ納得の受賞となりました。
会報誌より、本年度の生涯功労賞チャールズ・ダーニング
全SAG会員の中からランダムに選ばれた約4200名のメンバーによって候補者を選出、現役メンバー約12万人の投票によって決定するSAGアワード。同業者から選ばれる賞とあって、その喜びもひとしおかもしれません。オスカー像にも影響しそうな「アクター像」の行方は、下記のウェブサイトからじっくりとご覧下さい。アカデミー賞まで、残すところ1ヶ月。今回の授賞式のように豪華なスター達の競演が見られるのでしょうか?WGA関連のニュースに注目です。
TEXT BY アベマリコ
2008年01月24日
今年はダーク路線:第80回アカデミー賞候補リスト発表
1月22日早朝、ビバリーヒルズに位置するAMPAS (映画芸術科学アカデミー: Academy of Motion Picture Arts and Sciences) 本部にて、2008年度のアカデミー賞候補が発表されました。アカデミー代表シド・ガニス氏とともに女優キャシー・ベイツがアナウンスしたリストには、一体どの作品&誰の名前が並んでいたのでしょうか?
本年度で、キリ良く第80回目を迎えるアカデミー賞。いつも以上に盛大にいきたいところですが、今なお続くWGAストライキの影響下、式典開催のGoサインは未だ出されていません。AMPASやTV放映権を持つABCは努めて前向きなコメントを発表していますが、突っ込んだ質問には言葉を濁すこともしばしば。授賞式中止に追い込まれたゴールデン・グローブ賞の二の舞になるのでは?という声や、ジョージ・クルーニーらを中心とした一部SAG俳優による「出席ボイコット」の噂もあり、来月の授賞式当日までは油断できない状況となっています。
「つぐない」7部門ノミネート
主演男優賞には、ゴールデン・グローブを持ち帰ったダニエル・デイ=ルイス(”There Will Be Blood”)、「スウィーニー・トッド: フリート街の悪魔の理髪師」よりジョニー・デップ、「フィクサー」からジョージ・クルーニー、「告発のとき」よりトミー・リー・ジョーンズ、そして”Eastern Promises”のヴィゴ・モーテンセンがノミネートされています。行方不明の息子を探す警官を演じたジョーンズ以外、とにかくみんなダークで怖い…。ちょっとお知り合いにはなりたくない、コワモテキャラばかりの選出となりました。
主演女優賞候補には、ゴールデン・グローブ賞獲得のジュリー・クリスティー(”Away from Her”)、「エディット・ピアフ: 愛の賛歌」よりマリオン・コティヤール、”Juno”に主演のエレン・ペイジ、”The Savages”のローラ・リニーと、「エリザベス: ゴールデンエイジ」よりケイト・ブランシェットが選ばれました。ブランシェットは”I’m Not There”で助演女優賞にも候補入りしており、主要部門Wノミネートの行方が気になります。
こちらも見逃せないのが、監督賞。「潜水服は蝶の夢を見る」のジュリアン・シュナーベル、「フィクサー」よりトニー・ギルロイ、ジェイソン・ライトマンは”Juno”から、”There Will Be Blood”のポール・トーマス・アンダーソンと、「ノーカントリー」からジョエル&イーサン・コーエン兄弟が選ばれています。1996年に「ファーゴ」で本部門に候補入りしたジョエル・コーエン以外、全員初ノミネートというから驚き。ベテランと若手が入り混じった混戦となりそうです。
↑会場となるコダックシアター(開催されればの話ですが…)
まだまだ見どころたっぷりのアカデミー賞候補。これまでの各賞レースとカブったり異なったり、なかなか見ごたえのあるラインナップとなっております。詳しい顔ぶれは、下記のリンクよりどうぞ。授賞式開催予定日まで、あと1ヶ月。無事の開催とスター達の出席を祈りつつ、今後の劇場拡大などによる各作品の追い込み、Box Officeの変動にも注目です。
訃報: アカデミー賞候補が発表された22日の午後、2006年に「ブロークバック・マウンテン」でオスカー候補となったヒース・レジャーが若干28歳の若さで他界。ケイト・ブランシェットが助演女優候補入りを果たした”I’m Not There”でも、翳りある存在感が光っていました。先週15日には25歳だったブラッド・レンフロ(「依頼人/1994」「スリーパーズ/1996」)が亡くなるなど悲しい知らせが続いたハリウッドは、将来が期待された若手俳優の死に揺れています。
おふたりのご冥福を心よりお祈りします。
TEXT BY アベマリコ
2008年01月18日
史上最高の盛り下がり!?第65回ゴールデン・グローブ賞
昨年11月の決行より早2ヶ月。長引くWGA(全米脚本家組合: Writers Guild of America)ストライキの影響で、授賞式典の中止が発表されたゴールデン・グローブ賞。華やかなハリウッドスター達は全員が「欠席」、トロフィー授与も無い会見形式へと姿を変え、13日に各受賞者が発表されました。ニュース番組のダイジェストのように矢継ぎ早に発表されていく様子は、文字通り「前代未聞」。良くも悪くも印象深い特番となりました。
例年、3時間以上かけて放映されるゴールデン・グローブ賞(以下GG賞)のセレモニーですが、今年は何と1時間番組へと縮小。そんな切羽詰った状況で光ったのが、ワイドショー”Access Hollywood”の看板ホスト、ビリー・ブッシュ(あのジョージ・W・ブッシュのいとこ)とナンシー・オデールの、ゴシップ記事で鍛えられた滑舌でした。彼らのマシンガントークによって次々と発表されていった主要部門を、こちらもどんどんお伝えしていきます。
本年度、GG賞の話題をさらったのは最多7部門にノミネートされた「つぐない(邦題)」。現代エピック・ロマンスの真骨頂、キーラ・ナイトレイ&ジェームズ・マカヴォイのフレッシュな若手コンビによって描かれたドラマの本受賞は2部門に留まりましたが、ひとつはベスト・オブ・ベストともいえる最優秀作品賞ドラマ部門。更に、感傷的なムードを存分に高めたダリオ・マリアネッリが最優秀作曲賞を受賞しています。2006年度アカデミー賞(「プライドと偏見」)では惜しくもオスカーを逃した氏。本年度への期待が高まります。
「つぐない」を含め、今回のGG賞で2つのトロフィーを持ち帰ったのは計4作品。「スウィーニー・トッド:フリート街の悪魔の理髪師」は最優秀作品賞ミュージカル/コメディ部門に加え、劇中で美しい歌声を披露したジョニー・デップが最優秀主演男優賞(同部門)に選ばれました。意外にも、彼にとってGG賞は初めて。過去7回のノミネートを経ての初受賞となりました。
ネオ・ウエスタンとの呼び声が高い「ノーカントリー」は、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟に最優秀脚本賞、最優秀助演男優賞にハビエル・バルデムの2冠。キッチリ前髪オカッパの執拗な暗殺者を演じた彼は、オデール女史に「元ウェイター、警備員とストリッパーだった」と衝撃のトリビアを披露されることに。本来の式典ならあり得ないこの行為…。それにしても、バルデム様はステキ過ぎです。
そして、最優秀監督賞と最優秀外国語作品賞を持ち帰ったのは、ジュリアン・シュナーベル監督「潜水服は蝶の夢を見る」。フランス人ジャーナリストによる自叙伝をもとに構成された本作は、モダン芸術家でもある監督のアーティスティックな表現が満載。痛切なストーリーの中にもダイナミックな色彩と音楽が使われています。
一方、最優秀主演男優賞を受賞したのは”There Will be Blood (原題)”のダニエル・デイ=ルイス。ドラマというよりもむしろ「ホラー」に近い程、人間の内面の恐ろしさを示すパフォーマンスが評価されています。また、同女優賞は”Away from Her”よりジュリー・クリスティー。認知症という難しいテーマのもと、彼女だからこそ見応えがあると評判になった1本です。
今年のちょっとした番狂わせは、人気作品「ヘアスプレー」主演のニッキー・ブロンスキーと”Juno”のエレン・ペイジが無冠に終わったこと。特番では、ニッキーちゃんが家族と自宅にてノミネートを聞きつけるや、コーヒーテーブルを蹴散らして大喜びするクリップも公開されましたが受賞はならず。最優秀主演女優賞ミュージカル/コメディ部門には「エディット・ピアフ:愛の賛歌」より、素晴らしい歌唱力をみせたマリオン・コティヤールに、最優秀助演女優賞は”I’m Not There”でボブ・ディランの「潜在的自我」として男性を演じる新境地を開拓したケイト・ブランシェットに贈られています。
また、昨年度に追加されたてホヤホヤの新カテゴリー「最優秀アニメーション映画賞」には、「カーズ」に引き続きPixar製作の「レミーのおいしいレストラン」。本年度もピクサー旋風が吹き荒れるのでしょうか?
最後にTV部門では”Longford (HBO)”が最優秀ミニシリーズ/TV映画部門を含む3冠、AMCの新シリーズ”Mad Men”が最優秀ドラマ賞を含む2冠を獲得。本年度のテレビ勢は、近年のGG賞らしく「比較的新しい顔ぶれ/作品」にトロフィーが贈られた模様。アメリカンドラマにどっぷり漬かっている方々は、下記のリンクより詳しい結果をご覧下さい。
駆け足で放送された、今年のゴールデン・グローブ賞。1時間番組と言えども多くのスポンサーに配慮して、トータル20分以上がCMに割かれておりました。連ドラよりも短い、正味30分少々の間に19部門も発表する忙しさ…。どうにも不完全燃焼といった感が否めませんが、これから気になるのはアカデミー賞!主催のAMPASは前向きに式典開催を目指している模様、無事に授賞式が拝めることを期待します。今回のドタバタ劇がオスカーの視聴率アップに繋がるか、それともアメリカ国民のテレビ離れが進んでしまうのか。各賞の行方やスター達の饗宴に合わせ、そちらも気になるところです。とにもかくにも、アカデミー賞の開催を心から祈りましょう。
TEXT BY アベマリコ
2008年01月11日
オリバー・ストーン、人質救出に乗り出す
皆様、新年明けましておめでとうございます。ケニアの暴動、パキスタンのブットと、世界を取り巻く不穏な空気は相変わらずですが、今年こそは平和な世界になることを祈りましょう。
元々リベラルな発想が強く、様々な平和運動に貢献してきたハリウッドですが、新年早々人々を驚かせるニュースが飛び込んできました。社会派で知られるオリバー・ストーン監督が、南米コロンビアで人質になっている、ジャーナリストを含む3人の人質の救出作戦にのりだしたというお話。
少々髪は薄くなったが
相変わらずパワフルなストーン監督
この救出作戦、武装したゲリラの前に出て行く事になるわけで、当然ながら非常に大きな危険を伴います。何もそんな危ないことをしなくても、と心配するハリウッド関係者の声をものともせず、12月31日の大晦日、アメリカを出発したストーン監督。現在ベネズエラでゲリラとの交渉を待っているそうです。
ストーン監督といえば、「プラトゥーン(86)」、「7月4日に生まれて(89)」等、社会派作品を撮り続けて来た人。最近では911テロを生生しく描いたドキュメンタリー「ワールド・トレード・センター(06)」を製作しています。イラク戦争についても積極的に発言し、ブッシュ大統領攻撃の尖兵となっています。
単なる口先だけの平和主義者とは一味違うストーン監督、実は若い頃からかなりの行動派。大学を中退していきなり陸軍に入隊、ベトナム戦争に従軍経験し、その時の体験を下に傑作「プラトゥーン」を作ったと言われています。自ら火の中に飛び込んでいく行動力では、この人の右に出る人物は見当たりません。また、商業主義に陥らない映画作りを貫いているという点でもさすが。今回の体験を元にして、南米のゲリラ問題を描いた映画を製作すると発表しています。
多くのハリウッドスターの忠告を無視して飛行機に乗り込んだストーン監督。CNNのインタビュアーの「ゲリラに人質に取られたらどうしますか?」という質問に対し、「俺は一人で10人分くらいの価値があるからね。3人解放するだけで俺を人質にしたら奴ら大儲けさ」と、軽いジョークで答えていましたが、無事の帰還を祈って止みません
TEXT BY 岩下慶一